口腔科学(基礎)系

解剖学第I講座

講座紹介

解剖学は人体の正常構造を理解するために必須の学問です。ここから得られた知識は、生化学や生理学などの関連科目の学習を助け、将来、臨床科目を学ぶ上での基礎となります。

解剖学第Ⅰ講座は肉眼解剖学の講義と実習を担当しており、形態だけにとどまらず、各器官の機能についても系統立てて理解できる授業体系をとり入れています。令和5年度から始まった新カリキュラムでは、解剖学の最初の授業として第1学年後期に「骨」の講義を行います。続いて第2学年前期には「筋」、「内臓」、「神経」「脈管・感覚器」の講義を、後期からは「人体解剖学実習」を実施し、それまでの講義で得た知識を、実際にご遺体を解剖させて頂くことによって自分の目で確認します。一方、現行のカリキュラムは第2学年前期に「運動器」、「内臓」、「神経」、「脈管・感覚器」の講義を、後期は「人体解剖学実習」を配置しています。特に「人体解剖学実習」では、人体の正常構造を学習する他に、ご遺体を通じて命の大切さと確かな倫理観を習得してもらえるように指導を行っています。

解剖学第II講座

講座紹介

当講座は、本学部で1年生後期、2年生前期で主に受講する歯の解剖学、組織・発生学、口腔組織学などの科目を担当しています。これらは我々のからだの構造や成り立ちを顕微鏡レベルで学び、ミクロの形態が示す意味や、機能との関係を理解しようとする学問です。見知らぬ街を訪ねたときにまず地図を手にするように、生命科学を学ぶ誰にとっても、ミクロの形態学は学びの出発点にあり、その後のナビゲーションを約束する羅針盤となります。37兆個ともいわれる我々のからだを構成する細胞も、たったひとつの受精卵から育まれています。生きて、今ここに存在しているという我々、その実体をきちんと観て理解することは、機能、疾病、治療法やその機序の理解を机上のものとせず、医療人として患者さんと向い合うための大前提です。医学の原点に解剖学あり。ミクロの形態の世界は、宇宙や深海を凌駕する今なお広大なフロンティアです。

生理学講座

講座紹介

人体のさまざまな器官は、それぞれ巧に機能しており、それらの働きは驚くほど巧妙にお互いに調節されています。その「生命の理」を探求する学問が生理学であり、全ての臨床歯学の根幹となる重要な学問です。生理学1では、人体を構成する細胞から臓器および個体に至る各レベルの機能(呼吸、循環、消化、吸収、排泄、感覚、内分泌、生殖など)を学修します。生理学2では、歯科医師として知っておかなければならない口腔や顎顔面領域の機能(口腔感覚、味覚、顎運動、咀嚼、嚥下、唾液分泌、吸啜、嘔吐、発音など)を学修します。学問は日々進歩しているため、各専門分野で最先端の歯学研究をされている他大学の先生にも授業をお願いし、できるだけ最新の知識を習得します。実習は、生理学、口腔生理学の中で重要な項目を実際に観察することによって、生体の基本的な機能の理解を深めることを目的に行います。将来、歯科医師として患者さんを実際に治療する場合に、そこで発生している病態を明確に理解できるように、病態生理の基礎的事項も学びます。

生化学講座

講座紹介

私たちの身体は、物質(原子・分子)が互いに作用し合うことによって成り立っています。10μ程度の細胞が集まって組織を作り、さらに器官、そして個体を形成しています。細胞の総数は約60兆個で、これらが連携して初めて生命活動を維持することができます。「生化学」は、この最も基本的な原子-分子間の反応、細胞の成り立ちや情報伝達によってもてなされる物質の流れ(代謝)を理解する学問です。「生化学」を学ぶことは、遺伝情報の流れ(DNA→RNA→タンパク質)や私たちの身体に起こること(病気・疾患)の理解に繋がるもので、「生化学」は基礎医学の基本となる学問です。また「口腔生化学」では、口の中という特殊な環境において、歯・歯周組織がどのように維持され機能しているのか、小さいにもかかわらず、よく分化したこれら特殊な領域を「生化学」で学んだ知識を基に理解するものです。

病理学講座

講座紹介

病理学講座では研究、診断、教育の3つの目標を掲げております。研究においては機能水の生物学的機能や口腔癌の増殖・メカニズムとその制御機構といった基礎的研究をはじめ、臨床に還元できる研究を多くの臨床系大学院生たちと行っています。病理学の範囲は基礎医学から臨床医学までを網羅しており、いずれも高いレベルを要求されます。当講座ではその意味でも、臨床応用を重視し新たな診断法、治療法開発につながる研究を目標としています。

次に診断ですが、臨床医学としての病理学は病理診断であり、常に患者さんのことを考えながら迅速で正確な病理診断を行い、臨床医の様々な疑問に答えられるように努めています。また、教室員や大学院生には日夜診断業務に参加してもらうと同時に医学部での研修などを通じて将来的な口腔病理専門医の資格取得を目指してもらっています。
そして教育です。病理学は基礎医学でありながら、臨床医学の性質も併せ持つ学問です。形態や細胞機能の変化を捕らえ、病変の成り立ち、病態、予後など病気の全体像の理解できる講義、実習を展開していきます。特に、近年の国家試験やCBTなどでは病理組織像を読み解く力が強く要求されるようになっていますが、当講座では学生さんがいつでも顕微鏡標本を観察できるような体制を整えています。こうした教育を通じてより多くの学生に病理学に興味を持ってもらえるように心がけています。

当講座では、研究や病理診断に興味のある大学院生を熱烈募集中です。医学部、歯学部はもとより、様々なバックグラウンドをお持ちの方々に当講座を訪ねていただき、一緒に仕事ができることを希望しています。
堅苦しさの無いざっくばらんな雰囲気で、楽しく仕事ができる環境づくりを目指しています。

感染症免疫学講座

講座紹介

研究内容

ヒトの口腔には、700種を超える細菌が生息しています。さらに、EBウイルスなどのヘルペスウイルスやインフルエンザウイルス、HIV等多くのウイルスの感染、および潜伏の場ともなっていることが明らかとなり、口腔における細菌とウイルスとの共感染が注目されています。最近では、新型コロナウイルスの口腔への感染や唾液を使用したCOVID-19の検査が注目されています。しかし、感染症の発症と進展における共感染機構の解明は、国際的にもあまり進んでいません。

歯周病をはじめとする口腔感染症と全身疾患との関連性が明らかとなる中、当講座では、「宿主-寄生体相互作用」研究に加え,「細菌-ウイルス相互作用」および「細菌-細菌相互作用」という新たな視点から、口腔細菌がウイルス感染症や難治性全身疾患に及ぼす影響について、分子生物学的研究や動物モデル研究、および臨床研究を進めています。最近では、歯周疾患の発症そのものにおいても、微生物間相互作用が重要な役割を担うことを解明しつつあります。さらに、研究成果を臨床に還元すべく、口腔ケア剤の開発を含めた新たな感染症予防策の構築や疫学調査などを通じて医科歯科連携の推進にも力を入れています。

微生物間および微生物と宿主との多彩なクロストークの解明が、歯学と医学に跨るトランスレーショナルリサーチとして科学の発展に貢献するのみならず、Evidence-based Medicineの実践にも寄与すると考え、国内外の多くの研究室と共同研究も進めています。

主な研究テーマ
  1. 「細菌-ウイルスの微生物間相互作用」、及び「宿主-寄生体相互作用」による歯周疾患をはじめとする病気の発症と進行機序の解明
  2. 口腔疾患および加齢を誘因とする全身疾患(肺炎、COVID-19、COPD、インフルエンザ、EBVウイルス感染症、がん等)の発症機序の解明
  3. 疾患発症における潜伏感染ウイルス(EBVやHIV等)の再活性化機序の解明
  4. 高齢者および周術期における全身疾患予防法としての新規口腔ケア法の開発と臨床応用

薬理学講座

講座紹介

薬理学の講義では、歯科治療において処方する薬物のみならず、全身のあらゆる疾患に用いられる薬物について詳しく学びます。「クスリ」は使い方を誤ると「毒」にもなります。薬物作用の理解には、生理学や生化学などの基礎知識に加えて、クスリが作用するメカニズム、つまり「理 (ことわり)」をしっかりと理解しなければなりません。そこで、受容体や細胞周期など基礎的な生体メカニズムに踏み込んで理解してもらうように努めます。薬理学の講義ではカタカナ名の薬物や色々な作用点・作用様式があり、覚えることも多岐にわたります。クスリがどのようなメカニズムで作用するのか、そしていかに巧妙な仕組みによって患者さんの苦痛を和らげるのかを、感動をもって理解できるような講義・実習を目指しています。また、希望者には、薬理学講座で行っている研究に触れることができる機会を設けています。研究に興味のある人は、是非、薬理学講座の扉をたたいてみて下さい。

歯科理工学講座

講座紹介

歯科理工学って、どんな学問?

歯科医療では、診査・診断から治療の終了までさまざまな歯科材料(生体材料を含む)や器械・器具を必要とします。したがって、良質な歯科医療を実現するためには、材料・器械の特性の解明とその使用法の確立が必要で、さらに、新しい材料・器械と技術の開発が望まれます。それらのニーズにこたえる学問が歯科理工学です。

学習内容は…

歯科理工学の学習は、第2学年後期に歯科理工学Ⅰ、第3学年前期に歯科理工学Ⅱとして、講義と実習が行われます。これまでに学んだ物理学、化学および生物学の知識を基に、歯科臨床で使用される材料・器械の特性とその使用法を修得し、臨床での材料・器械の選択と使用における礎とすることが要求されます。

こんな研究をしています

研究の主なテーマをあげると、チタン合金の歯科応用、歯科材料の接合と複合化、歯科鋳造とレーザー溶接、印象材の消毒・滅菌による寸法精度への影響などで、いずれも歯科臨床と深く結びついています。詳細は、大学院の講座紹介(歯科理工学)をご覧下さい。

衛生学講座

講座紹介

「衛生学」とは生命を衛(まもる)ための知識や技術の体系を修得する学問であり、その学ぶべき範囲が広大なため、当講座では複数学年にわたり「衛生学」関連の講義や実習を開講しています。具体的には、第2学年では健康を維持増進するために必要な栄養と休養についての基礎知識を学ぶ「健康と栄養・休養の基礎理論」を、第3学年ではう蝕の発生要因に関する種々の基礎的知識や最新のう蝕予防法について学ぶ「ベーシックカリオロジー」、将来地域保健行政の一部に参画するために必要な公衆衛生と生活環境の基礎的事項を学ぶ「公衆衛生学」、口腔疾患の病因に対する理解を深め個人および集団の口腔機能増進のための保健指導および予防処置を修得する「口腔衛生学」、地域保健における歯科健康診査の方法と疫学指標を応用した調査の方法を修得する「衛生学実習」を、また、第6学年では地域における歯科保健活動の実施に必要な基本的方法および口腔保健に関する行政のしくみを修得する「地域保健学」を開講しています。

法医学講座

講座紹介

サスペンスドラマなどでよく登場する法医学は、法に関する医学的事項を広く研究または応用する学問です。その一部門である"歯科法医学"が脚光を浴びたのは、日航機墜落事故(1985年)で、歯科所見により犠牲者の約40%の身元が判明しました。歯科学的知識は個人識別(性別、年齢、職業、出生地の推定など)に有効です。当講座では法医学、歯科法医学、医事法学に関する講義や一部、実習も取り入れています。また歯の咬耗(すり減り具合)状態から年齢推定する方法、口腔領域の各種計測値から性判を判定する方法、身元不明死体の口腔内所見と歯科カルテやX線写真など該当者の生前所見とを照合する際の一致不一致の精度、さらには血液、唾液やその斑痕、歯(歯髄、象牙質、歯石)を試料とするDNA型検出などの研究を行なうとともに、鑑識業務や遺骨鑑定など広く社会に貢献しています。