口腔健康科学分野

この分野は、社会医学の一分野である社会歯科学を含み、研究成果を国民の健康の保持増進に適切に反映させることを目標としています。従来の基礎、臨床と異なる領域、あるいは境界領域の分野を多く含んでいます。
感染症免疫学
分野紹介
- 研究内容
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ヒトの口腔には、700種を超える細菌が生息しています。さらに、EBウイルスなどのヘルペスウイルスやインフルエンザウイルス、HIV等多くのウイルスの感染、および潜伏の場ともなっていることが明らかとなり、口腔における細菌とウイルスとの共感染が注目されています。最近では、新型コロナウイルスの口腔への感染や唾液を使用したCOVID-19の検査が注目されています。しかし、感染症の発症と進展における共感染機構の解明は、国際的にもあまり進んでいません。
歯周病をはじめとする口腔感染症と全身疾患との関連性が明らかとなる中、当講座では、「宿主-寄生体相互作用」研究に加え、「細菌-ウイルス相互作用」および「細菌-細菌相互作用」という新たな視点から、口腔細菌がウイルス感染症や難治性全身疾患に及ぼす影響について、分子生物学的研究や動物モデル研究、および臨床研究を進めています。最近では、歯周疾患の発症そのものにおいても、微生物間相互作用が重要な役割を担うことを解明しつつあります。さらに、研究成果を臨床に還元すべく、口腔ケア剤の開発を含めた新たな感染症予防策の構築や疫学調査などを通じて医科歯科連携の推進にも力を入れています。
微生物間および微生物と宿主との多彩なクロストークの解明が、歯学と医学に跨るトランスレーショナルリサーチとして科学の発展に貢献するのみならず、Evidence-based Medicineの実践にも寄与すると考え、国内外の多くの研究室と共同研究も進めています。
- 主な研究テーマ
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- 「細菌-ウイルスの微生物間相互作用」、及び「宿主-寄生体相互作用」による歯周疾患をはじめとする病気の発症と進行機序の解明
- 口腔疾患および加齢を誘因とする全身疾患(肺炎、COVID-19、COPD、インフルエンザ、EBVウイルス感染症、がん等)の発症機序の解明
- 疾患発症における潜伏感染ウイルス(EBVやHIV等)の再活性化機序の解明
- 高齢者および周術期における全身疾患予防法としての新規口腔ケア法の開発と臨床応用
口腔衛生学/衛生学
分野紹介

衛生学講座では、口腔保健が全身の健康の保持・増進にも深く関わることを示す一連の研究を進めている。
近年、歯周病が糖尿病などの生活習慣病と関連性があることが報告され、口腔内状態と全身の健康とが密接に関連しているエビデンスが明らかにされつつある。当講座では、(公財) ライオン歯科衛生研究所との共同の疫学(横断・短期コホート)研究において、歯周病とメタボリックシンドローム指標 (肥満、高血圧、脂質異常、高血糖) との間には疫学レベルで密接な関連性があり (J Pub Health Den, 2009)、歯周病に罹患すると将来メタボの発症リスクが高くなることを報告した (J Periodontol, 2010)。J Periodontolに掲載された疫学論文は、米国歯周病学会と欧州歯周病学会で高く評価され、当該論文の共著者全員が、それぞれClinical Research Award (2011) およびThe 4th Sunstar World Perio Research Award (2012) を受賞した。現在、疫学(長期コホート・介入)研究、動物モデル研究および細胞・分子生物学研究の3方向から、歯周病とメタボとの関連性を解明する研究を行っている。
歯科法医学/法医学
分野紹介

身元不明の死体(生体)は誰か、犯罪現場等に遺留された分泌物・排泄物の由来等、法医学における個人識別作業は多岐にわたる。
裁判で重要な証拠資料として採用されているDNA多型分析については、歯髄、歯石および唾液斑を試料とし、目的とする遺伝子領域をPCR増幅して性別判定を含む個人識別を行うとともに、歯髄および歯石DNA多型のデータベース作成作業を続けている。また当講座で考案した歯、口蓋および頭蓋の計測値を利用した統計的手法による性別判定法や、数量化理論を応用した歯の咬耗および処置状態からの年齢推定法は法医鑑識の実務で成果を挙げている。さらに証拠保全の立場からデジタルX線やX線CT画像を利用して歯髄腔の狭窄程度を非破壊的に画像計測し年齢を推定する方法についても研究を行っている。刑事・民事の鑑定依頼もあり、本学を始めとする数大学の医学部法医学教室での法医解剖における口腔内検査などにも協力している。
歯科放射線学
分野紹介

- 一世紀の歩みが証明する歯科医学への革新的貢献
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当講座は1924(大正13)年の開設以来、100年を超える歴史を誇る、国内で最も伝統ある歯科放射線学講座です。大学院の歯科放射線学プログラムとしても、世界で最も早くに開設された歴史を持ちます。この一世紀にわたる歩みの中で、私たちは常に歯科放射線学・画像診断学のフロンティアを切り拓き、特に医療機器開発の分野において歯科界へ革新的な影響を与え続けてきました。
過去にはパノラマX線撮影装置、歯科用X線TVシステム、デジタルパノラマX線撮影システムなどの礎を築き、近年では世界初となる歯科用コーンビームCTの開発・商品化という偉業を達成。さらに、独自のin vivo micro-CTは小動物実験のパラダイムを塗り替え、広く生命科学分野の発展を支えています。
- 未来の歯科医療を創造する、多角的な最先端イノベーション
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大学院では、これまでに培った開発力と膨大な臨床データを基盤に、時代のニーズを捉えた多岐にわたる研究テーマを展開しています。
- 次世代撮影の研究・開発: 新たな機器の創生や既存機器の新たな技術応用を模索し、歯科における画像診断インフラを整備します。
- 臨床画像診断: 専門的な見地から顎顔面疾患の精緻な病態解明を行います。
- 画像検査モダリティの治療応用(IVR): 超音波断層装置やCBCTを用い、インプラント治療や顎関節症治療等の安全性向上を目的とした画像支援治療の臨床応用を進めます。
- 医療DX・遠隔画像診断: 最先端の画像情報システムや遠隔画像診断ネットワークの構築の基礎的研究を行います。
大学院生は、これら基礎・臨床・デジタルが融合した多彩なフィールドから、自身の興味に合わせた先進的研究を自ら選択し、深く探求することができます。
- 国内外で評価される研究環境
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当講座が輩出してきた多彩な研究成果は、国内の「日本歯科放射線学会」はもちろん、世界最高峰の「国際顎顔面放射線学会(IADMFR)」をはじめ、アジア、欧州、米国などの主要な歯科、顎顔面分野の放射線学会のいずれかにおいて、大学院生を中心に毎年継続して研究発表を行っています。
臨床研究者を育てる世界最古のプログラム、脈々と受け継がれるフロンティア・スピリット、そしてグローバルに活躍できるステージ。これらが揃った環境で、次世代の歯科放射線学を担う研究者・指導者としての第一歩を、私たちと共に踏み出してみませんか。
小児歯科学
分野紹介

乳幼児期からの口腔機能の健全な発達は、生涯にわたる健康の維持にとって極めて重要です。小児期の口腔にみられる疾患として齲蝕がまず挙げられますが、仮に齲蝕を完全に克服できたとしてもそれだけでは正常な口腔機能の営みが保証されたことにはなりません。咀嚼や嚥下には舌の運動、口腔周囲筋の活動、顎運動がうまく協調することが必須ですが、健常者では当たり前といっていいこのような運動が、発達に障害のある小児ではうまくいきません。
大学院での小児歯科学研究では、障害児にみられる咀嚼・嚥下機能障害の病態の把握と治療法の開発を目的として、主として疾患モデル動物について分子生物学的手法、電気生理学的手法などのさまざまな実験方法を用いて研究に取り組みます。また頭蓋・顎顔面ならびに歯の発生・発育についても、エピゲノム解析を含め、それらに異常を引き起こす原因遺伝子の機能解析によるアプローチをおこなって疾患の克服を目指します。
口腔内科学
分野紹介

歯科医学は、従来主として急性の疾患を対象としてきた。しかし、実際には、慢性疾患、特に慢性疼痛に悩んでいる患者は多く、この慢性痛のメカニズムやそれに対する治療法は明らかでない。当講座では、これら難治性疾患の原因の解明および治療法の確立を目標に研究を行っている。
口腔は三叉神経、舌咽神経、自律神経を始め様々な神経に支配され、咬筋、側頭筋、咀嚼筋、表情筋など多くの筋から構成されている。これらに起因する難治性の疼痛や機能障害が多く報告されている。しかし、未だ原因の特定が困難であり、治療法も確立されていない分野も多い。
- 研究テーマ
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- 口腔顔面領域における疼痛異常発症の中枢神経機構の解明
- 鼓索神経障害モデルにおける疼痛伝達機構の影響
- 機能的MRIによる舌痛症患者における疼痛反応の中枢性神経活動の解明
- 神経障害疼痛における炎症性細胞の影響
- 心理社会的因子と免疫系・内分泌系・自律神経系機能の関連
- 難治性口腔痛発症の神経機構解明
- 延髄領域における片頭痛に随伴する光過敏症発症に対する神経およびグリアの役割
- 顔面神経麻痺における口腔機能評価
- 中枢神経系における顔面領域の疼痛発生機構のメカニズム
- 研究内容
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これら研究は、生理学教室、日本大学総合科学研究所、日本大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科、日本大学医学部放射線学講座と共同で行っている。
摂食機能療法学
分野紹介

摂食機能療法学講座では、「食べたいと思うものを最期まで口から楽しく食べる」という人間にとって最も基本的な営みの一つの実現を究極の目標とし、診療・教育・研究に取り組んでいます。本講座は、摂食嚥下リハビリテーションの診療・教育を担う歯学部講座として全国でもいち早く2004年に開設され、外来診療に加え、訪問診療、日本大学病院や歯学部付属歯科病院の各診療科との密接な連携を通じて、多様な患者への包括的な診療を実践しています。
研究面では、超高齢社会において増加する「食べられない状態が続くこと(=イートロス)」に着目し、その結果として生じる低栄養やカヘキシアの診断・予防・治療の体系化を目指し、「食べる」を科学する研究を推進しています。
また、本分野が対象とする課題は高齢者のみならず、口腔機能の発達に課題を抱える小児まで幅広く及びます。オーラルフレイル、口腔機能低下症、口腔機能発達不全症などを含め、ライフステージを通じた口腔・摂食機能の維持・向上を目指した教育・研究・臨床を展開しています。
本講座では、『「食べる」を通じて各領域の結節点となり、医学的歯学を実践する』ことを理念に掲げています。基礎研究から臨床研究まで幅広い研究手法を習得するとともに、多職種連携や医療と市民(市民)・市場(産業)・市政(行政)をつなぐ「医市連携(いしれんけい)」を推進し、さらに口腔緩和医療や終末期歯科医療など新たな学問領域の開拓にも挑戦しています。「食べる」を支えることを通じて人々の健康と生活の質の向上に貢献し、次世代の歯科医療を担う人材の育成を目指しています。