推薦図書 by教員

2022年度

2022年度 推薦図書

運動脳(新版・一流の頭脳)

アンデシュ・ハンセン著 : 御舩由美子訳(サンマーク出版・2022)

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推薦者 小泉 寛恭 専任教員(理工学)

朗報です。机にかじりついて平常試験,定期試験,統合演習の勉強をしている学生たち,学位論文をまとめている院生たち,そして最近物忘れが気になる我が歯学部の教職員さまにこの本を推薦したいと思います。この本には,適度な運動を行うことにより,ストレスを軽減し,集中力を取り戻し,うつから脱却し,記憶力を高めるなどのエビデンスが記載されております。ありがたいことに歳をとっても,運動により大脳の海馬の萎縮を予防することが可能であるとの記載もありました。是非皆さんに読んでいただきたい一冊です。

2022年度 推薦図書

明治乙女物語

滝沢 志郎(文藝春秋・2019)

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推薦者 鈴石 雅子 専任教員(歯科衛生専門学校衛生士学科)

時は明治21 年。東京・御茶ノ水の高等師範学校で学ぶ夏と咲は,森有礼主催の舞踏会で起こった爆弾騒ぎに巻き込まれます。
時代の流れを孕んで事件が発展していく中で,2 人は女性が学ぶことが当たり前でない時代を改めて考えさせられます。
真面目で無愛想な夏ですがルームメイトの咲には心を開き,成績優秀・容姿端麗な咲もまた,夏には意外な一面を見せます。
時代背景は女性にとって逆風であっても,2 人が歩んでいく様は力強く,時に「くすっ」と笑える青春そのものです。
現代の御茶ノ水で学ぶ皆さんに是非タイムスリップした気持ちで読んでほしいと思います。

2022年度 推薦図書

「原因」と「結果」の法則

ジェームズ・アレン著 ; 坂本貢一訳(サンマーク出版・2003)

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推薦者 小森谷 康司 助教(歯科保存学第Ⅰ講座)

この本は私が本学部1 年生であった2004 年に神保町の三省堂書店で購入しました。それ以来,自分自身の自己啓発のバイブルとして,1 年に1 度は読み返すようにしています。

自己啓発本である本書は1902 年に書かれたものですが,世界中で今もなお,売れ続けているという驚異的なロングセラー書です。また,本書は現代の成功哲学の祖として有名なデル・カーネギー,ナポレオン・ヒルやナイチンゲールなどに大きな影響を与えたといわれています。変化が激しい時代の中で,状況に翻弄されず生きていくのに必要な視点を養うために,読んでみてはいかがでしょうか。

自分自身は学生時代に本書を読んで考え方が根本的に変わりました。非常に薄く,シンプルな書籍ですが,内容はとても深いです。本書を読むことで「自分こそが自分の人生の創り手である」ということを再確認し,あなたの「思い」とは何かを考えてみてはいかがでしょうか。
「思い」が人格や健康,環境そして人生を作っていきます。興味がある方は是非ご一読ください。

2022年度 推薦図書

ちいさいおうち

ヴァージニア・リー・バートン(岩波書店・2001)

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推薦者 山口 洋子 専任講師(生化学講座)

私の大好きな1 冊です。
気持ちが落ち込んだとき,心が疲れたとき,この本を読むと“じわっ~”と心が暖かくなります。
この本は,今から90 年以上も前に作者が次男のために書いた物語です。日本での初版本は1954 年,すでに70 年ちかく日本でも愛され続けています。
お話はもちろんの事,絵の構図も細部にわたって丁寧に描かれており,優しく美しい色彩,絵を見ているだけでも優しい気持ちになれるそんな1冊です。
私たちが忘れてはいけないものを思い出させてくれる,そして自然の尊さや便利になることで実は大切なものが失われてることに気が付かせてくれる,そんな作品です。ちいさい頃,読んだことがある人も多いかもしれませんが,大人になってから読むとまた違う“気付き“があるかも?です。

2022年度 推薦図書

世界は分けてもわからない

福岡伸一(講談社・2009)

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推薦者 山口 洋子 専任講師(生化学講座)

福岡博士の本というと「生物と無生物の間」「動的平衡」がとても有名ですが,私は「世界は分けてもわからない」を是非,皆さんに手に取っていただきたいと思いました。

10 年以上前になりますが,福岡博士の講演を聴く機会があり,その時にイタリア人画家ヴィトーレ・カルパッチョが画いた絵のお話をされていました。
それは,もともと1枚の絵が,強欲な画商によって半分に切り分けられて「ラグーンでの狩」と「二人の貴婦人」の別々の絵として違う美術館に展示されたというお話です(ちなみに今も別々の美術館に展示されているそうです)。
この 2 枚が長い年月を経て偶然同じ美術館に展示された際,切り分けられた 1 枚の絵であることが判明。私は写真で観ただけですが,1 枚の絵として眺めているときと別の絵として眺めているときでは,同じ絵でも全く異なる印象を受けました。このことに衝撃を受け,目で見えているものだけをみる危うさ,とても怖いと感じました。

この本の中では,カルパチョの絵の話もそうですが,「目からウロコ」的な話が満載です。章ごとに違うテーマでまったく違う話みたいに感じるのですが,読み終わるとちゃんと繋がっている。今,見えているものは,ほんの一部で,マウリッツ・エッシャーの不思議絵が既成概念を壊して成立しているように,今まで見てきたものや考え方だけがすべてではないということを改めて教えさせられます。

福岡博士は著名な分子生物学者ですが,研究をすればするほど,どんどん小さな小さなものが対象となり,奥へ奥へ入り込んでしまうことに疑問を感じ「切り取られた一部分を見ても何もわからない」とのお考えに至り,文系の学者に転向したそうです。
この概念,なんでも同じだと思います。例えば,大学での勉強も,一見,教科間で繋がりかないように思える内容でも実はすべて繋がっています。そのことにどれだけ気が付けるかによって,学習効率が大きく変化,成績向上にも役立つのではないでしょうか。
福岡ワールド,なかなか興味深く,引き込まれること間違いなしです。

2022年度 推薦図書

人生が変わる紙片づけ! お金が貯まる!時間も増える!

石阪 京子(ダイヤモンド社・2022)

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推薦者 山崎 さとみ (技手1級・歯科衛生室)

この本は「紙」に特化した片付け本です。
いろいろな「紙」についてどうして保存する必要があるのか,なぜ処分してよいのか詳しく書かれていて,読み終わると「やってみたい」と思える本です。
片付けるために用意するものや手順に関しても詳しく書かれているので「やってみたい」けどやり方がわからないということもありません。
私のような家の中にどんどん紙が溜まっていってしまう人におすすめします。

2022年度 推薦図書

小説の惑星 オーシャンラズベリー篇 /
小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇

伊坂幸太郎編(筑摩書房・2021)

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推薦者 神尾 宜昌 准教授(感染症免疫学講座)

読書家というわけでもない私は,乱読するわけもなく,好きな作家の本ばかり読んでいる。最近は,高校時代に読んでいた本を読み返しており,好きな作家の本ばかり読むことに拍車がかかっている。

そんな私が年末に帰省した際,近所の本屋でたまたま2冊の本を手に取った。その2冊とは,「小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇」「小説の惑星 オーシャンラズベリー篇」だ。

この本は作家の伊坂幸太郎さんが,面白い小説だ!と選んだ様々な作家の短編作品を集めたものである。どの小説も,読み終えた後に清涼感がある(伊坂さんがそういうった作品ばかり集めてくれている)。中にはそうではない作品も少しだけ混じっているが,それはそれでとても面白い。

私が今まで読んだことのない作家の作品がたくさん収録されており,この本に出会わなければ,私はおそらく死ぬまでその作家達の小説を読むことはなかっただろう。今後,この本に収録された作家の作品を本屋へ買いに行くことになりそうだ。

漫画は棚番号11Bに配架しています

2022年度 推薦図書

ニューヨーク・ニューヨーク

羅川真里茂 著(白泉社・2003)

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推薦者 玉川 崇皓 助教(口腔外科学第Ⅱ講座)

自分が誰かに本を薦めた経験がないため,今回どのような本が良いかと考えました。真面目な内容の本はプライベートでは好きでは無いので,それ以外のジャンルであまり知られていないような,かつみんなに読んでもらいたい本としてこの「ニューヨーク・ニューヨーク」を薦めたいと思います。

僕はもともと保育士になりたかったのもあって,小学生の時にこの本の著者の別の作品である「赤ちゃんと僕」というアニメを見たことをきっかけにどハマりし,同著者の別の作品も事前情報なしに読み漁っていたのですがその中でこの「ニューヨーク・ニューヨーク」を読んで衝撃を受けたことを今でも覚えいます。

というのもざっくりとこの本の内容を説明すると,「同性愛者たちの人生」が描かれているのです。現在,「LGBTQ+」という言葉はみなさんも一度は目にした,耳にしたことはあると思います。多様性の時代,男性や女性という性別では一括りにできないため最近は性別を選ぶ欄にも「その他」などの言葉が選べるようになってきたり,同性婚が認められてきたり,様々な著名人たちがカミングアウトしても周囲から受け入れられてくるようになりました。
僕が若い頃にはそのような認識があまり浸透しておらず,友達や親など周囲に言い出せずに悩みを抱えたまま生活している人たちも少なからずいたと思います。そんな中,何の知識も持たずに「ニューヨーク・ニューヨーク」を読んだ玉川少年は衝撃を受けました。
「手に取る本を間違えてしまった・・・」と思いながら「でも,せっかく買った本だから読むだけ読んでみよう」と勿体無い精神で読み始めましたが,羅川先生の漫画は読みやすく一気に内容に引き込まれ,気づいたら最終話まで読み終えていました。

話の内容はゲイとして生きる主人公2 人の日々の葛藤,両親にそのことを告白し,その後両親や周りからの反応を通じて当時の同性愛者への社会における立場がどうであったかなどを知ることができます。単なるBL とかではなく,内容は至って深刻かつ当時読み終えた感想は「世の中には色んな人がいて,それが普通なんだな」ということでした。
そのおかげか,学生時代のバイト仲間にもLGB TQ+の友達もいましたが何の抵抗もなく仲良くすることができましたし,大好きなバンドであるQUEEN のボーカルのフレディ・マーキュリーがゲイであっても別に何も思わなかったですし,それが当たり前ということが認められてきた時代になっただけなんだと思います。

「自分と違う」という自分と他者との心の壁がみんな少なからずあることは当たり前のことだとは思いますが,そこに優劣を設けてしまうとももうその人とは近づくことはできません。「多様性を認める」というのは一概に難しいかもしれませんが,この「ニューヨーク・ニューヨーク」を一読したら案外簡単に受け入れられるんじゃないかと思います。
ダラダラと稚拙な文となってしまいましたが,興味が湧いた方はぜひ手に取って最後まで読んでみてください。

2022年度 推薦図書

はたらく細胞 ウイルス&細菌図鑑

講談社【編集】はたらく細菌制作委員会【監修】 (講談社・2021)

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推薦者 由井 美紀先生(技手1級・看護室)

細胞擬人化マンガ『はたらく細菌』の図鑑です。
感染症についてすっきりわかりやすくまとまっています。
小中学生向きとなっていますが,自分で学ぶにも患者さん への説明や指導するにも役立ちそうな一冊です。

2022年度 推薦図書

愛なき世界

三浦しをん【著】(中央公論新社・2018)

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推薦者 酒井 真悠 助教(摂食機能療法学講座)

映画やアニメになった『舟を編む』の著者としても有名な三浦しをんさんの作品で,書店のポップでは恋愛小説のような見出しが多いですが,理系の大学院生やそこで研究する人々の日常をメインとして描かれた物語です。

植物学を専門にする大学院生たちの日常生活や研究内容が詳細に書かれ,大学院生や教員はもちろん,学生も共感できる部分が多い作品となっています。

研究は時には失敗もありますが,日々の積み重ねにより結果が得られることを改めて感じました。勉強や研究に行き詰まったり,一息入れたいとされている方は一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

2022年度 推薦図書

闇の脳科学―「完全な人間」をつくる

ローン・フランク【著】/赤根洋子【訳】 (文藝春秋・2020)

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推薦者 大橋 一徳 助教(薬理学講座)

読者の気を惹こうとして逆に手に取る人の幅を狭めてしまった感のある表題だが,原題は「The pleasure shock: rise of deep brain stimulation and its forgotten inventor」(快楽刺激:脳深部刺激療法の台頭と忘れられた開発者)であり,内容はSFではなく実在する脳深部刺激療法(DBS)の原型に関するものである。

脳における情報処理は電気信号として行われているが,外部から信号に介入出来れば原理上,脳機能を操作することが可能となる。DBSはそれを実現する技術の一つであり,今日,パーキンソン病の保険適用可能な治療法として認知されているのみならず,治療困難な精神疾患の新しい治療法として最近特に注目を浴びるようなっている。しかし,開発された当時ではその先端性ゆえに周囲からの理解を得ることが難しかった。実際、脳を電気刺激することで,同性愛者を異性愛に転向させる逸話が冒頭で紹介されているが,この「ヒトの精神に介入する」部分のみが世間に誇張され次第に開発者であるロバート・ヒースは迫害されていく。

余談だが,ヒースのDBS開発から半世紀以上経った現在、経頭蓋磁気刺激(TMS)やオプトジェネティクスといった新たな脳操作法が開発され,脳機能操作の臨床応用は多くの人々に期待されるようになっている。また,神経科学では脳機能を人為的に操作することは当たり前のよう行われている。