推薦図書 by教員

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2023年度 推薦図書

2023年度 推薦図書

特別展 生命大躍進 脊椎動物のたどった道

/NHK,NHKプロモーション 2015

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推薦者 白井 宏尚(図書館事務課長)

今回ご紹介するのは,2015 年7 月7 日から10 月4 日まで,国立科学博物館で開催されたのを皮切りに,日本全国5 カ所で開催された特別展「生命大躍進 脊椎動物のたどった道」の図録です。生命大躍進についてはNHKでも特集番組を放映しており,展示会には行っていなくても,TVや配信等でご覧になったという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

こういった展示会などの図録,あるいはイベントのパンフレット等には,「価格が高い割には内容が薄い」という経験をすることも実際には多くあり,最初から図録やパンフレットの購入を敬遠する方もいらっしゃるでしょう。この図録は2300 円(税込)と安くはないものの,224 ページの中に写真や復元CG等が満載で,非常に中身が充実している図録であると思います。

いわゆる人気者である恐竜も含まれてはいるものの,この展示会,そして図録の見どころは,カンブリア爆発と呼ばれる古生代に生物の多様性が一気に花開き,その多くが絶滅していった時代,そして恐竜の大繁栄の途中で誕生し,恐竜が絶滅していく中で繁栄し始めた原初の哺乳類,そして現生人類に至るまでに誕生し消えていった今でも謎の多い各種の原人類など,どちらかというとあまり日の光の当たりにくい者達に焦点を当て,詳細に,それでいて分かり易く解説しています。
特に中生代に繁栄した恐竜より前の時代,古生代の化石は,数センチにも満たないような,岩盤に刻まれた傷跡にしか見えないのようなものが多いのですが,展示会ではそういったものも海外の博物館や,個人の収蔵物を借りた希少な実物が,最新の研究成果とともに展示されていました。

こういった企画展の図録は,在庫があるものは後日でも発行元から入手可能なものもあるのですが,生命大躍進の図録は残念ながら在庫がなく,欲しい場合は中古等で入手するしかありません。今回は,中古品を見つけたので少々使用感はありますが図書館に献本しました。ご興味のある方は手に取ってみてください。

国立科学博物館をはじめ,東京には多くの博物館や美術館があり,それぞれが工夫を凝らした企画展を多く開催しています。大体は映画1 本観るのと同じくらいの料金で観ることができますので,ぜひ直接見に行ってみて,もし気に入ったなら図録やパンフレットを手に取ってみると意外な良書に出会えるかもしれません。

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いちばんおいしい家カレーをつくる

/水野仁輔著(プレジデント社・2017)

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推薦者 柴崎 翔 助教(歯科保存学第Ⅰ講座)

一度その香りを嗅ぐと食欲が支配されてしまう,みんなが大好きなカレー。お店で食べるカレーももちろんおいしいですが,やっぱり家のカレーが一番。この本を読めばもっとおいしい家カレーが作れちゃいます。

ただし,この本はただのレシピ本ではありません。よくあるレシピ本というは材料がどのくらいで,どういう順番で調理して,何分間炒める煮込む,というものが多いと思います。しかし,特に火入れの時間などに関しては,各家庭のコンロの火力や使用する調理器具によって異なるものであり,なかなかレシピ通りの料理を作るというのは難しいものです。その点,この本では調理過程でどうなったら次へ進んで良いかというのが明確に記載されているので,料理の基本にもつながるものがあります。特にカレー作りにおいては,煮込み料理ではなく炒め料理であるという認識の転換が必要であり,序盤の炒め作業が非常に重要です。玉ねぎ炒めでの火力のコントロール,コツ,どういう色になったらOK か,水分飛ばしの目安のカレーロードとは何なのか,などが分かりやすく説明されています。そういった内容ですのでレシピは3 つしか載っていません。

1 つ目はいわゆる欧風カレー。一般的に家庭で作るような,肉と野菜を煮込んでルゥを溶かして作る,なじみの深いトロっとしたカレーです。その家庭的なカレーのコクとうま味を1 ランクグレードアップさせることができます。
2 つ目はスパイスを使った香り高く刺激的なインドカレー・スパイスカレーです。一度は誰しもルーを使わずにスパイスだけでカレーを作ってみたいと思ったとがあると思います。ただ作ってみたいと思ったところでそもそもどうすればいいかわからない,スパイスの種類がありすぎてどれを使えばいいかわからない,作ってはみたもののどこか味気ない,などと悩むのは誰もが通る道です。そんな苦い思い出もこの基本のチキンカレーを作れば払拭することができます。
3 つ目は,欧風カレーのコクとうま味,スパイスカレーの刺激的な香り,その両方のいいとこどりをした究極のカレー,その名も「ファイナルカレー」です。どんなカレーかは読んでみてからのお楽しみ。

著者の水野仁輔先生は他にも多くのカレーレシピ本を出版されており,この本を基本として調理すれば,多くの種類のカレーをレシピ通りに作ることができます。カレー作りにつまずいた人も,これからカレー作りに挑戦する人にも最初の1 冊にお勧めの本です。
ぜひご賞味あれ。

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東大病院発医療スタッフのための中国語会話

/東京大学医学部附属病院中国語マニュアル出版プロジェクトチーム著(ベレ出版・2023)

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推薦者 伊藤 寿典 助教(小児歯科学講座)

当病院においても紹介患者の中で,コミュニケーションが難しいという理由で紹介されるケースが増えてきています。
特に小児歯科の現場では,保護者とのコミュニケーションだけでなく,日本語理解が困難である患児に対して治療への理解や協力を得るために本人の理解可能な言語での声かけが重要となります。
今ではいたるところで中国語を母国語とする人が増えてきており,歯科診療の現場でも円滑な治療が進められるようスタッフが簡単な挨拶や表現を知っておくことが大切です。
医科病院の現場で生まれた本になりますが,簡単にまとめられた内容となっているのでドクターだけでなく学生にもお薦めです。

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煮干しの解剖教室

小林眞理子 文 ; 泉田謙 写真 ; こばやしちひろ 絵(仮説社・2010)

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推薦者 古地 美佳 専任講師(総合歯科学分野)

お味噌汁のだしをとるのに使う,あの「煮干し」を解剖するための手引書です。生物学や解剖学を学び,毎日繊細な実習をしている皆さんにピッタリだと思い,お勧めします。

自分は最初,煮干しを解剖するなんて簡単だと思い,歯科用ピンセットを持ち出し,本も見ずに,頭,骨,はらわたに分解して満足していました。
そしてこの本を開いて驚きました。脳,視神経,脊髄,胃,精巣,卵巣といった「超」小さい臓器の綺麗な写真が並んでいるのです。探し方や説明も文章で書かれており,薄い本ですが,煮干しの解剖の奥深さを堪能できます。

特殊な道具不要,低コストで始められる煮干しの解剖に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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最高の除脂肪食 : 「食べる」を増やして,絞る!

岡田隆【著】(ポプラ社・2022)

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推薦者 酒井 嶺 助教(歯科保存学第Ⅲ講座)

近年,新型コロナウイルス蔓延により,生活スタイルが大きく変化しました。特に運動不足解消という名目で,筋トレやダイエットを始めたという方も多いのではないでしょうか。筋トレが趣味となった学生さんやドクターも多くみられます。また,部活動も再開になり,ここ数年よりも活動レベルが上がった方も多くいらっしゃいます。

そんな中,皆さん(特に一人暮らしを始めた学生さん)はしっかり栄養ある食事がとれているでしょうか。糖質制限ダイエットがトレンドとなったことがありましたが,しっかりとした体づくりにおいて炭水化物,特に日本人であれば白米は最高の食材であることは御存じですか。

本書は,日本体育大学体育学部の教授であり,自身もボディービル選手である岡田隆教授による,正しい食事方法のメソッドが記載されています。

部活だけでなく,5 年生の院内実習では1 日中立って過ごしたい体力も必要です。また,6年生では受験を乗り切る体力,そして脳を動かす唯一のエネルギー源としての【糖質】が非常に大切です。

普通の本に比べると非常に読みやすいものだと思います。本を読むのが苦手で、、、という方は,バスーカ岡田としてYouTube チャンネルも開設しているので覗いてみてはいかがでしょうか。

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カラー図解 人体誕生―からだはこうして造られる

山科 正平【著】(講談社・2019)

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推薦者 湯口 眞紀 助手(解剖学第Ⅱ講座)

1 個の受精卵から人体がつくられていく様は神秘的で誰もが興味を持つ現象だと思いますが,いざ 「発生学」の勉強となると難しいと敬遠してしまう人も多いのではないでしょうか。

本書では神秘的で難解な人体発生を豊富なイラストと平易な言葉で分かりやすく解説しています。

読み物としてもとても面白いですし,これから発生学を学ぶ学生は発生学の入門書として,通読するのも良いと思います。

2023年度 推薦図書

Tech × Books plusシリーズ
ディープラーニングを支える技術―「正解」を導くメカニズム「技術基礎」

岡野原 大輔【著】(技術評論社・2022)

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推薦者 中谷 有香 専任講師(薬理学講座)

私は主に痛みに関する研究を行っているが,近年においてはAI 学習を用いた,より客観的な方法で痛み行動を評価することが求められている。

歯学部では基本的に習うことのないAI 学習の初学者として手に取ってみたいと思ったので,推薦致します。

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こぽこぽ、珈琲―おいしい文藝

湊 かなえ/星野 博美【ほか著】(河出書房新社・2022)

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推薦者 近藤 真啓 准教授(法医学講座)

珈琲にまつわる思い出,日常の一コマ,旅先での体験談などが綴られた31 編のアンソロジー。珈琲の淹れ方,味わい方について,熱く語った作品も収められています。

ウィンナーコーヒーを,赤いタコ型のウィンナーソーセージで飾られたコーヒーと思い込んでいたという幼少期の話に始まる星野博美氏のエッセイは,ユーモアと温もりの中に,ちょっぴり哀愁も入り混じっていて魅力的です。
また,知性的な寅彦の文章,エッセイにもドラマが感じられる向田邦子の作品,飄々とした如何にも春樹らしい随想など,錚々たる文筆家の作品が多数収録されているので,それぞれの文調を読み比べてみるのも一興でしょう。

「あ,これ好きだな」と感じた作品があれば,次はその作家の本を手にしてみると良いと思います。本を読みたいけれど,どんな作家が自分に合うのかわからない,と思っている人には,特におすすめの一冊です。

読むときは,悪魔のように黒く,地獄のように熱く淹れた珈琲を忘れずに。

2023年度 推薦図書

流浪の月

凪良ゆう(東京創元社・2022)

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推薦者 安川 拓也 助教(歯科保存学第Ⅱ講座)

「うちにくる?」
ある雨の日,公園のベンチで座りつくしていた小学生の更紗に,そっと傘を差し出し,そう声をかけてきた大学生の文。

大好きだった両親を亡くし,だんだんと自分の居場所や生きる希望を失っていた更紗にとって,その一言はまさに唯一の光でした。
年齢も性別も全く違う,家族でも恋人でもない2人の奇妙な共同生活が始まりますが,徐々に”誘拐事件”として世間が騒ぎ出し…

これだけを読むと大学生による少女の誘拐事件の話なのかと思われますが,読み手だけに明かされる更紗と文の真実を知ることで,この物語は全く別のストーリーへと変わっていきます。

一つの事件には必ず,被害者と加害者が存在します。SNS が発達し,情報が溢れる現代において,その一面だけに囚われがちですが,当事者たちにしか分からないことが存在し,目に見えているものだけが真実とは限らないということを強く訴えてくる作品です。

ぜひ一度読んでいただき,2人にとっての幸せや救いとは何だったのか,感じていただけると幸いです。

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話を聞かない男、地図が読めない女

アラン・ピーズ, バーバラ・ピーズ【著】藤井留美【訳】(主婦の友社・2016)

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推薦者 永井 裕美 (技手1級・看護室)

何故?どうして?
異性の謎の行動に激怒したことはありませんか?
今まで,理解出来なかったことがこの本でなるほど…脳が違うから求めても仕方ないのかと諦め半分,受け入れられるようになりました。
まだ読んだことがない方は是非,一度手に取ってみてください。

2023年度 推薦図書

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉〈下〉

ファインマン,リチャード P.【著】/大貫 昌子【訳】(岩波書店・2000)

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推薦者 篠崎 貴弘 専任講師(口腔内科学講座)

僕が高校生の頃,科学の発展に憧れていたときに手にした本です。ファインマンは,朝永振一郎と共に量子電磁力学発展の功績により1965 年ノーベル物理学賞を受賞,その後ロスアラモス研究所でマンハッタン計画に参画した人です。(マンハッタン計画に関しては,日本人として複雑な心境ですが。)

ノーベル賞受賞者,物理学者と聞くとガチガチの理論家,勤勉家と思いきや,数々のユーモア一杯のエピソードが語られ,とても興味深い人物像に引き込まれます。いたずらや少年期のラジオ修理,金庫破り,アリ研究などすべての興味対象が探求心の塊で,自分で検証・確認しないと信じられない所など,本物の研究者気質です。一方,それは発達障害かなと思えるエピソードも多々あります。

教育者としての面では,『学生たちを「教える」ということが,僕の生命をつないでくれるものだと思っている。誰かが僕に,授業をしないでいいという安楽な地位をわざわざ作り出してくれたとしても,僕は絶対にそんなものをありがたく受けようとは思わない。絶対に!』という言葉から研究者としてだけでなく,熱意ある教育者としての一面もあり,我々大学人として興味深く読めます。