推薦図書 by教員

推薦図書 by教員

2023年度 推薦図書

2023年度推薦図書
煮干しの解剖教室
小林眞理子 文 ; 泉田謙 写真 ; こばやしちひろ 絵(仮説社・2010)


推薦者 古地 美佳 専任講師(総合歯科学分野)

お味噌汁のだしをとるのに使う,あの「煮干し」を解剖するための手引書です。生物学や解剖学を学び,毎日繊細な実習をしている皆さんにピッタリだと思い,お勧めします。

自分は最初,煮干しを解剖するなんて簡単だと思い,歯科用ピンセットを持ち出し,本も見ずに,頭,骨,はらわたに分解して満足していました。
そしてこの本を開いて驚きました。脳,視神経,脊髄,胃,精巣,卵巣といった「超」小さい臓器の綺麗な写真が並んでいるのです。探し方や説明も文章で書かれており,薄い本ですが,煮干しの解剖の奥深さを堪能できます。

特殊な道具不要,低コストで始められる煮干しの解剖に挑戦してみてはいかがでしょうか。

以 上
2023年度推薦図書
最高の除脂肪食 : 「食べる」を増やして,絞る!
岡田隆【著】(ポプラ社・2022)


推薦者 酒井 嶺 助教(歯科保存学第Ⅲ講座)

近年,新型コロナウイルス蔓延により,生活スタイルが大きく変化しました。特に運動不足解消という名目で,筋トレやダイエットを始めたという方も多いのではないでしょうか。筋トレが趣味となった学生さんやドクターも多くみられます。また,部活動も再開になり,ここ数年よりも活動レベルが上がった方も多くいらっしゃいます。

そんな中,皆さん(特に一人暮らしを始めた学生さん)はしっかり栄養ある食事がとれているでしょうか。糖質制限ダイエットがトレンドとなったことがありましたが,しっかりとした体づくりにおいて炭水化物,特に日本人であれば白米は最高の食材であることは御存じですか。

本書は,日本体育大学体育学部の教授であり,自身もボディービル選手である岡田隆教授による,正しい食事方法のメソッドが記載されています。

部活だけでなく,5 年生の院内実習では1 日中立って過ごしたい体力も必要です。また,6年生では受験を乗り切る体力,そして脳を動かす唯一のエネルギー源としての【糖質】が非常に大切です。

普通の本に比べると非常に読みやすいものだと思います。本を読むのが苦手で、、、という方は,バスーカ岡田としてYouTube チャンネルも開設しているので覗いてみてはいかがでしょうか。

以 上
2023年度推薦図書
カラー図解 人体誕生―からだはこうして造られる
山科 正平【著】(講談社・2019)

推薦者 湯口 眞紀 助手(解剖学第Ⅱ講座)

1 個の受精卵から人体がつくられていく様は神秘的で誰もが興味を持つ現象だと思いますが,いざ 「発生学」の勉強となると難しいと敬遠してしまう人も多いのではないでしょうか。

本書では神秘的で難解な人体発生を豊富なイラストと平易な言葉で分かりやすく解説しています。

読み物としてもとても面白いですし,これから発生学を学ぶ学生は発生学の入門書として,通読するのも良いと思います。

以 上
Tech × Books plusシリーズ
ディープラーニングを支える技術―「正解」を導くメカニズム「技術基礎」

野原 大輔【著】(技術評論社・2022)

推薦者 中谷 有香 専任講師(薬理学講座)


私は主に痛みに関する研究を行っているが,近年においてはAI 学習を用いた,より客観的な方法で痛み行動を評価することが求められている。

歯学部では基本的に習うことのないAI 学習の初学者として手に取ってみたい
と思ったので,推薦致します。
2023年度推薦図書
こぽこぽ、珈琲―おいしい文藝
湊 かなえ/星野 博美【ほか著】(河出書房新社・2022)

推薦者 近藤 真啓 准教授(法医学講座)

珈琲にまつわる思い出,日常の一コマ,旅先での体験談などが綴られた31 編のアンソロジー。珈琲の淹れ方,味わい方について,熱く語った作品も収められています。

ウィンナーコーヒーを,赤いタコ型のウィンナーソーセージで飾られたコーヒーと思い込んでいたという幼少期の話に始まる星野博美氏のエッセイは,ユーモアと温もりの中に,ちょっぴり哀愁も入り混じっていて魅力的です。
また,知性的な寅彦の文章,エッセイにもドラマが感じられる向田邦子の作品,飄々とした如何にも春樹らしい随想など,錚々たる文筆家の作品が多数収録されているので,それぞれの文調を読み比べてみるのも一興でしょう。

「あ,これ好きだな」と感じた作品があれば,次はその作家の本を手にしてみると良いと思います。本を読みたいけれど,どんな作家が自分に合うのかわからない,と思っている人には,特におすすめの一冊です。

読むときは,悪魔のように黒く,地獄のように熱く淹れた珈琲を忘れずに。

2023年度推薦図書
流浪の月
凪良ゆう(東京創元社・2022)

推薦者 安川 拓也 助教(歯科保存学第Ⅱ講座)

「うちにくる?」
ある雨の日,公園のベンチで座りつくしていた小学生の更紗に,そっと傘を差し出し,そう声をかけてきた大学生の文。
大好きだった両親を亡くし,だんだんと自分の居場所や生きる希望を失っていた更紗にとって,その一言はまさに唯一の光でした。
年齢も性別も全く違う,家族でも恋人でもない2人の奇妙な共同生活が始まりますが,徐々に"誘拐事件"として世間が騒ぎ出し…
これだけを読むと大学生による少女の誘拐事件の話なのかと思われますが,読み手だけに明かされる更紗と文の真実を知ることで,この物語は全く別のストーリーへと変わっていきます。
一つの事件には必ず,被害者と加害者が存在します。SNS が発達し,情報が溢れる現代において,その一面だけに囚われがちですが,当事者たちにしか分からないことが存在し,目に見えているものだけが真実とは限らないということを強く訴えてくる作品です。
ぜひ一度読んでいただき,2人にとっての幸せや救いとは何だったのか,感じていただけると幸いです。

2023年度推薦図書
話を聞かない男、地図が読めない女

アラン・ピーズ, バーバラ・ピーズ【著】藤井留美【訳】(主婦の友社・2016)

推薦者 永井 裕美 (技手1級・看護室)

何故?どうして?
異性の謎の行動に激怒したことはありませんか?
今まで,理解出来なかったことがこの本でなるほど…脳が違うから求めても仕方ないのかと諦め半分,受け入れられるようになりました。
まだ読んだことがない方は是非,一度手に取ってみてください。
2023年度推薦図書
ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉〈下〉
ファインマン,リチャード P.【著】/大貫 昌子【訳】(岩波書店・2000)

推薦者 篠崎 貴弘 専任講師(口腔内科学講座)

僕が高校生の頃,科学の発展に憧れていたときに手にした本です。ファインマンは,朝永振一郎と共に量子電磁力学発展の功績により1965 年ノーベル物理学賞を受賞,その後ロスアラモス研究所でマンハッタン計画に参画した人です。(マンハッタン計画に関しては,日本人として複雑な心境ですが。)

ノーベル賞受賞者,物理学者と聞くとガチガチの理論家,勤勉家と思いきや,数々のユーモア一杯のエピソードが語られ,とても興味深い人物像に引き込まれます。いたずらや少年期のラジオ修理,金庫破り,アリ研究などすべての興味対象が探求心の塊で,自分で検証・確認しないと信じられない所など,本物の研究者気質です。一方,それは発達障害かなと思えるエピソードも多々あります。
教育者としての面では,『学生たちを「教える」ということが,僕の生命をつないでくれるものだと思っている。誰かが僕に,授業をしないでいいという安楽な地位をわざわざ作り出してくれたとしても,僕は絶対にそんなものをありがたく受けようとは思わない。絶対に!』という言葉から研究者としてだけでなく,熱意ある教育者としての一面もあり,我々大学人として興味深く読めます。

2022年度 推薦図書

2022年度推薦図書
運動脳(新版・一流の頭脳)
アンデシュ・ハンセン著 : 御舩由美子訳(サンマーク出版・2022)

推薦者 小泉  寛恭 専任教員(理工学)

朗報です。机にかじりついて平常試験,定期試験,統合演習の勉強をしている学生たち,学位論文をまとめている院生たち,そして最近物忘れが気になる我が歯学部の教職員さまにこの本を推薦したいと思います。この本には,適度な運動を行うことにより,ストレスを軽減し,集中力を取り戻し,うつから脱却し,記憶力を高めるなどのエビデンスが記載されております。ありがたいことに歳をとっても,運動により大脳の海馬の萎縮を予防することが可能であるとの記載もありました。是非皆さんに読んでいただきたい一冊です。
2022年度推薦図書
明治乙女物語
滝沢 志郎(文藝春秋・2019)


推薦者 鈴石 雅子 専任教員(歯科衛生専門学校衛生士学科)

時は明治21 年。東京・御茶ノ水の高等師範学校で学ぶ夏と咲は,森有礼主催の舞踏会で起こった爆弾騒ぎに巻き込まれます。
時代の流れを孕んで事件が発展していく中で,2 人は女性が学ぶことが当たり前でない時代を改めて考えさせられます。
真面目で無愛想な夏ですがルームメイトの咲には心を開き,成績優秀・容姿端麗な咲もまた,夏には意外な一面を見せます。
時代背景は女性にとって逆風であっても,2 人が歩んでいく様は力強く,時に「くすっ」と笑える青春そのものです。
現代の御茶ノ水で学ぶ皆さんに是非タイムスリップした気持ちで読んでほしいと思います。
2022年度推薦図書 
「原因」と「結果」の法則
ジェームズ・アレン著 ; 坂本貢一訳(サンマーク出版・2003)

推薦者 小森谷 康司 助教(歯科保存学第Ⅰ講座)
 
この本は私が本学部1 年生であった2004 年に神保町の三省堂書店で購入しました。それ以来,自分自身の自己啓発のバイブルとして,1 年に1 度は読み返すようにしています。

自己啓発本である本書は1902 年に書かれたものですが,世界中で今もなお,売れ続けているという驚異的なロングセラー書です。また,本書は現代の成功哲学の祖として有名なデル・カーネギー,ナポレオン・ヒルやナイチンゲールなどに大きな影響を与えたといわれています。変化が激しい時代の中で,状況に翻弄されず生きていくのに必要な視点を養うために,読んでみてはいかがでしょうか。

自分自身は学生時代に本書を読んで考え方が根本的に変わりました。非常に薄く,シンプルな書籍ですが,内容はとても深いです。本書を読むことで「自分こそが自分の人生の創り手である」ということを再確認し,あなたの「思い」とは何かを考えてみてはいかがでしょうか。
「思い」が人格や健康,環境そして人生を作っていきます。興味がある方は是非ご一読ください。
2022年度推薦図書
ちいさいおうち
ヴァージニア・リー・バートン(岩波書店・2001)

推薦者 山口 洋子 専任講師(生化学講座)
 
私の大好きな1 冊です。
気持ちが落ち込んだとき,心が疲れたとき,この本を読むと“じわっ~”と心が暖かくなります。
この本は,今から90 年以上も前に作者が次男のために書いた物語です。日本での初版本は1954 年,すでに70 年ちかく日本でも愛され続けています。
お話はもちろんの事,絵の構図も細部にわたって丁寧に描かれており,優しく美しい色彩,絵を見ているだけでも優しい気持ちになれるそんな1冊です。
私たちが忘れてはいけないものを思い出させてくれる,そして自然の尊さや便利になることで実は大切なものが失われてることに気が付かせてくれる,そんな作品です。ちいさい頃,読んだことがある人も多いかもしれませんが,大人になってから読むとまた違う“気付き“があるかも?です。
2022年度推薦図書 
世界は分けてもわからない
福岡伸一(講談社・2009)

推 薦 者 山口 洋子 専任講師(生化学講座)

福岡博士の本というと「生物と無生物の間」「動的平衡」がとても有名ですが,私は「世界は分けてもわからない」を是非,皆さんに手に取っていただきたいと思いました。

10 年以上前になりますが,福岡博士の講演を聴く機会があり,その時にイタリア人画家ヴィトーレ・カルパッチョが画いた絵のお話をされていました。
それは,もともと1枚の絵が,強欲な画商によって半分に切り分けられて「ラグーンでの狩」と「二人の貴婦人」の別々の絵として違う美術館に展示されたというお話です(ちなみに今も別々の美術館に展示されているそうです)。
この 2 枚が長い年月を経て偶然同じ美術館に展示された際,切り分けられた 1 枚の絵であることが判明。私は写真で観ただけですが,1 枚の絵として眺めているときと別の絵として眺めているときでは,同じ絵でも全く異なる印象を受けました。このことに衝撃を受け,目で見えているものだけをみる危うさ,とても怖いと感じました。

この本の中では,カルパチョの絵の話もそうですが,「目からウロコ」的な話が満載です。章ごとに違うテーマでまったく違う話みたいに感じるのですが,読み終わるとちゃんと繋がっている。今,見えているものは,ほんの一部で,マウリッツ・エッシャーの不思議絵が既成概念を壊して成立しているように,今まで見てきたものや考え方だけがすべてではないということを改めて教えさせられます。

福岡博士は著名な分子生物学者ですが,研究をすればするほど,どんどん小さな小さなものが対象となり,奥へ奥へ入り込んでしまうことに疑問を感じ「切り取られた一部分を見ても何もわからない」とのお考えに至り,文系の学者に転向したそうです。
この概念,なんでも同じだと思います。例えば,大学での勉強も,一見,教科間で繋がりかないように思える内容でも実はすべて繋がっています。そのことにどれだけ気が付けるかによって,学習効率が大きく変化,成績向上にも役立つのではないでしょうか。
福岡ワールド,なかなか興味深く,引き込まれること間違いなしです。
2022年度推薦図書
人生が変わる紙片づけ! お金が貯まる!時間も増える! 
石阪 京子(ダイヤモンド社・2022)
 
推薦者 山崎 さとみ (技手1級・歯科衛生室)
 
この本は「紙」に特化した片付け本です。
いろいろな「紙」についてどうして保存する必要があるのか,なぜ処分してよいのか詳しく書かれていて,読み終わると「やってみたい」と思える本です。
片付けるために用意するものや手順に関しても詳しく書かれているので「やってみたい」けどやり方がわからないということもありません。
私のような家の中にどんどん紙が溜まっていってしまう人におすすめします。
2022年度推薦図書
小説の惑星 オーシャンラズベリー篇
小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇

伊坂幸太郎編(筑摩書房・2021)

推薦者     神尾 宜昌 准教授(感染症免疫学講座)

読書家というわけでもない私は,乱読するわけもなく,好きな作家の本ばかり読んでいる。最近は,高校時代に読んでいた本を読み返しており,好きな作家の本ばかり読むことに拍車がかかっている。

そんな私が年末に帰省した際,近所の本屋でたまたま2冊の本を手に取った。その2冊とは,「小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇」「小説の惑星 オーシャンラズベリー篇」だ。

この本は作家の伊坂幸太郎さんが,面白い小説だ!と選んだ様々な作家の短編作品を集めたものである。どの小説も,読み終えた後に清涼感がある(伊坂さんがそういうった作品ばかり集めてくれている)。中にはそうではない作品も少しだけ混じっているが,それはそれでとても面白い。

私が今まで読んだことのない作家の作品がたくさん収録されており,この本に出会わなければ,私はおそらく死ぬまでその作家達の小説を読むことはなかっただろう。今後,この本に収録された作家の作品を本屋へ買いに行くことになりそうだ。
2022年度推薦図書  
ニューヨーク・ニューヨーク  
羅川真里茂 著(白泉社・2003)


推薦者   玉川 崇皓 助教(口腔外科学第Ⅱ講座)

自分が誰かに本を薦めた経験がないため,今回どのような本が良いかと考えました。真面目な内容の本はプライベートでは好きでは無いので,それ以外のジャンルであまり知られていないような,かつみんなに読んでもらいたい本としてこの「ニューヨーク・ニューヨーク」を薦めたいと思います。

僕はもともと保育士になりたかったのもあって,小学生の時にこの本の著者の別の作品である「赤ちゃんと僕」というアニメを見たことをきっかけにどハマりし,同著者の別の作品も事前情報なしに読み漁っていたのですがその中でこの「ニューヨーク・ニューヨーク」を読んで衝撃を受けたことを今でも覚えいます。

というのもざっくりとこの本の内容を説明すると,「同性愛者たちの人生」が描かれているのです。現在,「LGBTQ+」という言葉はみなさんも一度は目にした,耳にしたことはあると思います。多様性の時代,男性や女性という性別では一括りにできないため最近は性別を選ぶ欄にも「その他」などの言葉が選べるようになってきたり,同性婚が認められてきたり,様々な著名人たちがカミングアウトしても周囲から受け入れられてくるようになりました。
僕が若い頃にはそのような認識があまり浸透しておらず,友達や親など周囲に言い出せずに悩みを抱えたまま生活している人たちも少なからずいたと思います。そんな中,何の知識も持たずに「ニューヨーク・ニューヨーク」を読んだ玉川少年は衝撃を受けました。
「手に取る本を間違えてしまった・・・」と思いながら「でも,せっかく買った本だから読むだけ読んでみよう」と勿体無い精神で読み始めましたが,羅川先生の漫画は読みやすく一気に内容に引き込まれ,気づいたら最終話まで読み終えていました。

話の内容はゲイとして生きる主人公2 人の日々の葛藤,両親にそのことを告白し,その後両親や周りからの反応を通じて当時の同性愛者への社会における立場がどうであったかなどを知ることができます。単なるBL とかではなく,内容は至って深刻かつ当時読み終えた感想は「世の中には色んな人がいて,それが普通なんだな」ということでした。
そのおかげか,学生時代のバイト仲間にもLGB TQ+の友達もいましたが何の抵抗もなく仲良くすることができましたし,大好きなバンドであるQUEEN のボーカルのフレディ・マーキュリーがゲイであっても別に何も思わなかったですし,それが当たり前ということが認められてきた時代になっただけなんだと思います。

「自分と違う」という自分と他者との心の壁がみんな少なからずあることは当たり前のことだとは思いますが,そこに優劣を設けてしまうとももうその人とは近づくことはできません。「多様性を認める」というのは一概に難しいかもしれませんが,この「ニューヨーク・ニューヨーク」を一読したら案外簡単に受け入れられるんじゃないかと思います。
ダラダラと稚拙な文となってしまいましたが,興味が湧いた方はぜひ手に取って最後まで読んでみてください。

2022年度推薦図書  
はたらく細胞 ウイルス&細菌図鑑
講談社【編集】はたらく細菌制作委員会【監修】
(講談社・2021)

推薦者:由井 美紀先生(技手1級・看護室)

細胞擬人化マンガ『はたらく細菌』の図鑑です。
感染症についてすっきりわかりやすくまとまっています。
小中学生向きとなっていますが,自分で学ぶにも患者さん への説明や指導するにも役立ちそうな一冊です。               

2022年度推薦図書
愛なき世界
三浦しをん【著】(中央公論新社・2018)


推薦者 酒井 真悠 助教(摂食機能療法学講座)

映画やアニメになった『舟を編む』の著者としても有名な三浦しをんさんの作品で,書店のポップでは恋愛小説のような見出しが多いですが,理系の大学院生やそこで研究する人々の日常をメインとして描かれた物語です。

植物学を専門にする大学院生たちの日常生活や研究内容が詳細に書かれ,大学院生や教員はもちろん,学生も共感できる部分が多い作品となっています。

研究は時には失敗もありますが,日々の積み重ねにより結果が得られることを改めて感じました。勉強や研究に行き詰まったり,一息入れたいとされている方は一度手に取ってみてはいかがでしょうか。

 

2022年度推薦図書
闇の脳科学―「完全な人間」をつくる
ローン・フランク【著】/赤根洋子【訳】
(文藝春秋・2020)


推薦者 大橋 一徳 助教(薬理学講座)

読者の気を惹こうとして逆に手に取る人の幅を狭めてしまった感のある表題だが,原題は「The pleasure shock: rise of deep brain stimulation and its forgotten inventor」(快楽刺激:脳深部刺激療法の台頭と忘れられた開発者)であり,内容はSFではなく実在する脳深部刺激療法(DBS)の原型に関するものである。

脳における情報処理は電気信号として行われているが,外部から信号に介入出来れば原理上,脳機能を操作することが可能となる。DBSはそれを実現する技術の一つであり,今日,パーキンソン病の保険適用可能な治療法として認知されているのみならず,治療困難な精神疾患の新しい治療法として最近特に注目を浴びるようなっている。しかし,開発された当時ではその先端性ゆえに周囲からの理解を得ることが難しかった。実際、脳を電気刺激することで,同性愛者を異性愛に転向させる逸話が冒頭で紹介されているが,この「ヒトの精神に介入する」部分のみが世間に誇張され次第に開発者であるロバート・ヒースは迫害されていく。

余談だが,ヒースのDBS開発から半世紀以上経った現在、経頭蓋磁気刺激(TMS)やオプトジェネティクスといった新たな脳操作法が開発され,脳機能操作の臨床応用は多くの人々に期待されるようになっている。また,神経科学では脳機能を人為的に操作することは当たり前のよう行われている。

2021年度 推薦図書

2021年度推薦図書
認知症世界の歩き方 : 認知症のある人の頭の中をのぞいてみたら?
筧祐介【著】(ライツ社・2021)

推薦者 本田 順一 助教(歯科補綴学第Ⅲ講座)

認知症は,脳の病気や障害など様々な原因により,認知機能が低下し,日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。高齢社会の日本においては,2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予想され,自分自身や身近な人が発症するかもしれない病です。この本は,「病」を見て,「症状」に対処する医学的知識を得るのではなく,「人」を見て認知症を知ることに着目して作られています。新しいアプローチで作られた本を,ぜひ,手に取って読んでみてください。

2021年度推薦図書
「第二の不可能」を追え! :理論物理学者,ありえない物質を求めてカムチャツカへ
ポール・J・スタインハート 【著】 斉藤隆央【訳】(みすず書房・2020)

推薦者 鈴木 秀則 助教(基礎自然科学分野(物理学))

理論物理学者である著者ポール・スタインハートが主人公の,準結晶という200年来の結晶学の常識を破る「ありえない」物質をめぐるノンフィクション。難しそうに感じるかもしれないが,物理学が苦手な方でもきっと楽しめるだろう。なぜならメインは物理学の話ではないから。《はじめに》から引用すれば,“ほぼ30年に及ぶ「探偵物語」”である。

タイトルとなっている「第二の不可能(the second kind of impossible)」は,著者の師であるリチャード・ファインマンが発する言葉「ありえない!(impossible!)」に相当する。この「ありえない」は1+1=3や永久機関を作るというような全く論外で不可能という意味ではなく、“おお! ふつうは正しいとは思えない意外なことだ。よく知る価値があるぞ!”という意味で,最大級の賛辞なのだ。

物語は「ありえない」物質に導かれ,ひとつの鉱物サンプルの正体を探る推理小説のような展開を経て,カムチャツカの原野を舞台とする冒険譚へと至る。歴史的な発見がなされるまでの紆余曲折を,カムチャツカでカラシニコフを撃って命中させた理論物理学者が綴った,本当に「ありえない」一冊。

2021年度推薦図書
少女地獄
夢野久作 【著】 (角川文庫・1976 発表は1936年)


推薦者 小林 理美 助手(基礎自然科学分野(生物学))

“読んだら気が狂う”。その文言に惹かれて手に取った本『ドグラ・マグラ』。何度チャレンジしても読み終えられためしがなく(なんなら下巻にすらいかない),私はいまだに正気のままだ。

『ドグラ・マグラ』の作者,夢野久作はクセの強い作家らしいということだけは分かったので,まずは作者に慣れようと,夢野久作の中でも読みやすそうな作品を探した。そこで選んだのが同書『少女地獄』だ。

『少女地獄』は 3 つの短編小説「何んでも無い」「殺人リレー」「火星の女」からなる短編集。それぞれの物語は独立していて,短いのでスピード感を持って読むことができる。どの物語でも共通して女性が死ぬことがテーマになっており,それぞれの女性が何を想って死んだのか、そこを中心に物語が展開されていく。
女性の美醜が詰め込まれた不思議な魅力のある本である。読み終わったら, 時間を置いて,是非また読んで頂きたい。一度目は気が付かなかったことが見えてくるかもしれない。

2021年度推薦図書
鷲は舞い降りた
ジャック・ヒギンズ【著】 菊池光【訳】( 早川書房・1997 )

推薦者 石井 亮 助教(歯科保存学第I講座)

第二次世界大戦終戦間際。1943 年頃。ヒトラーの密命をおびて、ドイツ軍落下傘部隊による英国本土でのチャーチル誘拐,という暴挙とも言える作戦が計画される。歴戦の勇士シュタイナ中佐率いるドイツ落下傘部隊の精鋭はイギリス兵になりすまし着々と計画を進行させていくが…

作者ジャック・ヒギンズが,関係者の口述・資料を元に書き起こした作品です。しかし、皆さんご存知のように史実にチャーチル誘拐の事実はありません。実際にこのような計画があったのか否か。どこまでが史実で、どこからがフィクションなのか。この作品を通して、そんな思いを巡らせてみてください。

抗いきれない立場であろうとも、自分の意思に信念を持って行動することこそが
人間の最も優れた価値であることを教えてくれる1冊です。

2020年度 推薦図書

2020年度推薦図書
心に響くコミュニケーション ペップトーク
岩崎由純【著】日本ラーニングシステム【監修】(中央経済社・2010)

推薦者 篠塚 啓二 助教(口腔外科学第Ⅰ講座)

スポーツの試合前に力を引き出すツールとして生まれたスピーチ「ペップトーク(pep 励ます talk 訓話)」は、アメリカでは誰かを励ます・元気づけるために日常的に使われています。そして今、ビジネスにおいての最先端のコミュニケーション術として活用されています。

この本は,コミュニケーションの阻害要因をわかりやすく解説し,ペップトークがビジネスでどのように活用できるかを具体的に述べています。また,自分を元気づける「セルフペップトーク」についても書かれており,モチベーションを高め,目標を達成するのに有効な方法のひとつです。ビジネス分野に留まらず,ネガティブな自分を打開したい方,周りの人とのコミュニケーションに困っている方にも読んでみてほしい一冊です。また,このペップトークは組織の活性化・モチベーションアップにきっと役立ちます。

2020年度推薦図書
この世にたやすい仕事はない
津村記久子【著】(日本経済新聞出版・2015)

推薦者 角田 由美 技手(1級)(歯科衛生室)

数年前に書店でタイトルにひかれて,この本を手に取りました。仕事に悩んでいる人へ「仕事の意義を感じ取る事」を考えることをアドバイスすることが多いかもしれません。

この本は,いわゆるお仕事小説ですが,そのような堅苦しい内容ではなく,不思議な世界観に誘われ,読み終わった時には爽快な気分になる事をお約束します。

『どんな選択の先にも,はたからは分からない難しさがあり,楽しさがある』作者のメッセージです。

2020年度推薦図書
はははのはなし
加古里子【著】(福音館書店・1972)

推薦者 市川 裕美 専任教員(歯科技工専門学校)

子供の時に通っていた歯科医院に置いてあった絵本です。
歯科について難しく考えてしまいますが、この絵本を読むと純粋に楽しく読むことが出来ます。
短時間で気分転換になる一冊です。

2020年度推薦図書
人工知能は人間を超えるか : ディープラーニングの先にあるもの

松尾豊【著】(KADOKAWA・2015)

推薦者 上原 任 専任講師(医療人間学講座)

昨今,AIということばをしばしば耳にします。人工知能(artificialintelligence)の事だとは分かっていても「AIを使ったシステムが開発された」とか,「AI搭載の新製品が発売された」とか,「AIに仕事を奪われる」とか聞くと本当か?と思ってしまいます。

本書の著者は2017年~2019年にNHK(Eテレ)で放送された最新のAIを紹介する番組の解説者・司会者でありながら,第一線のAI研究者でもあり,番組では非常にわかりやすい説明をしていたのが印象的であったので手に取ってみました。
現在は第3次AIブームなのだそうで,第3章までは残念な結果に終わった過去2回のブームの話。第4章からが本領発揮の最新のAI解説が始まる。3回目のブームはコンピューターの性能向上だけで実現したものではなく,計算方法が進化したことによるものらしい。キーワードは、機械学習・ニューラルネットワーク・ディープラーニング・誤差逆伝播あたりだろう。

今のAIが近い将来,何ができるようになるのか(当分は人間にしかできない仕事は何か),もしかしたら「生き残り」がかかっているので,読んでみてはいかがでしょうか。

2020年度推薦図書
異邦人
アルベール・カミュ(新潮文庫.1963)

推薦者 鈴木 裕介 助教(歯科保存学第Ⅱ講座)

アルベール・カミュはフランスの小説家で,今回紹介する「異邦人」はその代表作です。この作者の特徴は,疫病や戦争,社会を描き,不条理を哲学したと言われます。複雑にも思えるテーマですが,カミュの前職が新聞記者であることの影響か事実を簡潔に述べるのは読みやすく意図されているように思います。

本作では,主人公ムルソーが不条理に対し乗り越えるのではなく留まることの危うさが淡々と描かれています。ムルソーに起こる様々な出来事を「人」の視点でとらえる書きぶりはカミュの他の著書にも共通する,不条理とは人が理性を保っているから対面するものであるといった表現であろうか。

もう何度も読んでいる至極の一冊です。興味ある方は是非手に取ってみてください。
冒頭1行目の有名なセリフから引き込まれる方も多いはず。

 

2020年度推薦図書
黒い玉
トーマス・オーウェン著(東京創元社出版.2006)


推薦者 角田 麻里子 助教(病理学講座)

7月に入りましたが、じめじめとした時に蒸し暑い日々が続いています。日本では昔からこの暑い日々を過ごす中,様々な方法を用いて “涼”を得ようとしていました。そのうちの1つが怖い話・怪談話ではないでしょうか。

今回ご紹介するのは,ベルギーの作家であるトーマス・オーウェンの『黒い玉』という幻想短編集です。ベルギーの作家はあまり馴染みがない方も多いかと思いますが,トーマス・オーウェンはベルギー幻想派四天王などと称されている作家です。

この『黒い玉』は,14編からなる短編集であり,どの物語をとっても不気味で陰鬱で不思議な話ばかりです。表題作の黒い玉は、主人公のネッテスハイムと黒い玉とのホテルの一室でやり取りが繰り広げられていきますが,やがて恐ろしい結末へと進んでいきます。

私がこの作家の魅力として感じるところは、物語の「非現実さ」と疑似体験をさせられているかのような表現力だと思います。夏目漱石の『夢十夜』に近いような印象も受けました。また、文庫版の装丁にはオディロン・ルドンの版画も使用されており,物語により一層モノクロで不気味な世界を添えています。 蒸し暑い夜に不思議で不気味な体験をされてみたい方は一読されてはいかがでしょうか。

 

2020年度推薦図書
俺か、俺以外か。 ローランドという生き方
ROLAND著(KADOKAWA.2019)


推薦者 古川明彦 助教(口腔外科学第Ⅱ講座)

どんな世界においても業績をあげ、有名になるにはそれなりの信念や行動力が必要です。

この本は考え方ひとつでこんなにストイックになるのかと思わせられるような一冊。
名言の中に深い意味が込められています。

自信がない時、落ち込んだ時、ポジティブにさせるようなヒントがあるはずです。気分転換に読んでモチベーションをあげてみては?!

 

2020年度推薦図書
華岡青洲の妻
有吉佐和子著(新潮社.1967)

推薦者  山崎洋介准教授(解剖学第Ⅱ講座)

ひとさまに薦められた本を読むというのが好きでないので、自分から誰かに本を薦めるというのも気がのらない。実のところは、駄文悪文しか書けず、オォこれは面白そうだ、読んでみたい、と思わせるような気の利いた作文が到底出来ないという引け目もあるわけです。しかし、私は人が好いので、お引き受けして、なんとか書いてみたいと思います。

とはいえ、ここ最近読んだ本は、専門学術書、蒐集した展覧会の図録、澁澤龍彦訳のマルキ・ド・サド、古典ギリシア語の入門書など、どうにも推薦しがたいものばかりです。そこで、しばらく前にどこかの古本市でみつけた「華岡青洲の妻」(有吉佐和子著、新潮社)について書こうと思います。当時のベストセラーですから、先輩諸兄は何を今更というかもしれませんが、ヤングな私は、今般初めて読みました。函にかかった帯もきれいに残っていて、状態がよさそうです。手にとって函の中身をみてみると、茶の控えめな光沢あるクロス装、小ぶりで綺麗な本です。表紙には、つい見逃してしまいそうなごく浅いエンボスの題がある、品のある装丁です。奥付をみてみると、昭和42年刊の初版第2刷とある。2百円というベリーナイスなプライスタグをみるや、脊髄反射的に手中に収め、その他見繕った紙魚が湧きそうな本とともにレジへ運びます。当然、しばらくは積読だけだったのですが、あるとき、バス移動のおでかけのお供として白羽の矢がたち、金属活字でシャープに刷られた本文に、ひさびさに新鮮な空気が接触しました。

乳癌の手術を通仙散による全身麻酔下で行うという偉業を成し遂げた青州の医術の話、ではなく、題名からも分かる通り、それに献身した妻と母のストーリーです。美談や清純な話は虫が好かないけれども、冒頭のピュアな感覚をもった展開は、紀州弁のセリフと相まって、情景を掻き立てられ、意に反して惹き込まれてしまいます。途中から、嫁姑の争いだと気づいて、たびたび映画や舞台の題材となるわけに納得しました。我が家の嫁姑関係は、平穏無事に見えますが、やはり内心はどうであるかは知りえません。くわばらくわばら。この両者の関係は、時代に関わらず、難しいものであるのでしょう。淋病患者の膿を自らに接種して実験したジョン・ハンターや、ピロリ菌を自ら飲み込んだバリー・マーシャルのような気迫の医学発見譚に通じるところあり、エンターテイメントとしてもおすすめできる1冊です。歯学部図書館のOPAC検索結果によれば、文庫版第69刷(新潮文庫、2010)というのが所蔵されているようです。なんだか気に入って、市川雷蔵主演の映画のDVDまで手に入れましたが、幼子をまじえた家族団欒での視聴に最適な映画に非ず、まだ観れずに居るところです。

 

2019年度 推薦図書

2019年度推薦図書
天国でまた会おう 上・下
ピエール・ルメートル著(早川書房.2015)


推薦者   藤原 恭子 准教授(解剖学第Ⅰ講座)

この小説は第一次大戦後のフランスを舞台にしたお話です。終戦直前の戦場で,兵士のアルベールは上官プラデルが自身の利益のために味方の兵士を殺したことに気付きます。口封じのため上官に生き埋めにされかけたアルベールは仲間の兵士エドゥアールに救出されますが,この時エドゥアールは下顎部が吹き飛ぶような大怪我を負ってしまいました。

プラデルの魔の手から逃れて復員し,パリで暮らし始めた二人ですが生活は困窮し,やがて二人はエドゥアールの画才を利用した大掛かりな詐欺を企てます。一方,戦中卑怯だったプラデルは戦後もやはり卑怯者で,戦没者埋葬事業を請け負う会社を設立したものの,不正の限りをつくして富を築いていきます。この二つの物語が絡み合い,手に汗握る展開を繰り広げますが,プラデルには因果応報な最期が待っていますので安心してください。

このお話の魅力は,これらの主人公達の物語に加え,脇役達の人物像や心情が生き生きと描かれていることです。登場人物一人一人に作者の深い愛情を感じ,クスリと笑いたくなる描写も沢山あります。特に,作者の思い入れを強く感じるのが,プラデルの不正を暴くのに大きな役割を果たす役人のメルランです。有能だけど無愛想で常に不機嫌な初老の男メルランは,あらゆる部署をたらい回しにされており,昇進とは無縁,いつも薄汚れた服を着ていて,それになんか臭い。

そんな全然魅力のない人物造形のメルランは,戦後の世の中の混乱には無関心で日々淡々と仕事をこなしていますが,埋葬事業の現場のあまりの惨状に衝撃を受け,急に芽生えた正義感からプラデルの悪事を冷徹に追求しはじめるのでした。でも変人なだけあって,その追求の様子も個性的で,プラデルに大金で買収されたかと思ったら妙に分厚い報告書を政府に提出していて,なんとその報告書には買収で受け取った紙幣が一枚一枚全て貼られていたり。

このメルランの姿には,作者が根底に持つ人間の良心というものへの信頼が感じられて,それが読後感の良さの源となっているように思います。比較的馴染みの少ない時代背景のお話ではありますが,これらの個性豊かな登場人物達に牽引されて進んでいく本作品は一気読み確実ですので,興味がありましたら是非手に取ってみてください。

 

2019年度推薦図書
どこでも誰とでも働ける
―12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール

尾原 和啓著(ダイヤモンド社.2018)

推薦者  瀧本正行 助教(歯科保存学第Ⅰ講座)

12回の転職をした著者が、自分の人材価値を上げるポイントを解説したものです。どこでも誰とでも働けるようになるためには、馴染めないことを言い訳にしてはならない!!相手に直接的な見返りを求めず、ギブ&テイクではなくどんどん自分の知識や経験をギブする!!それがコツだと著者は述べています。

 

多種多様な人と上手に接していくことが求められるこの世界では重要なことではないでしょうか?仕事に対して前向きな姿勢になれる1冊だと思います。

 

2019年度推薦図書
炭素はすごい なぜ炭素は「元素の王様」といわれるのか
斎藤勝裕著(サイエンス・アイ新書.2019)


推薦者  平場 晴斗 助教(歯科補綴学第Ⅲ講座)

この本は,様々な分野における炭素について,その歴史などを踏まえて化学的な内容をわかりやすく紹介しています。
炭素(C)を含むものと聞いて何が思い浮かぶでしょうか。
ダイヤモンドや鉛筆の芯だけではありません。
様々な元素との組み合わせでその種類は多岐にわたります。
ノーベル賞の賞金の原資となったダイナマイトや,解熱鎮痛剤のアスピリン,
覚せい剤や毒物などもそうです。
日常的に摂取するカフェインやアルコール,調味料,家具や小物などに使われるプラスチック,衣類に使われるナイロンは人類が作るまでこの世に無かったものです。
もちろん私たちが使う歯科材料のほとんどがそうです。
私たちは,思っている以上に炭素に囲まれた生活をしています。
雑学を知る感覚で,化学に触れる機会になる1冊だと思います。

 

2019年度推薦図書
路傍の石
山本 有三 著(偕成社. 2002)


推薦者  岡田 明子 准教授(口腔診断学)

「路傍の石」は私の大好きな本の一つで,小学生の時に何回も何回も読んだ覚えがあります。主人公の吾一は,学年で首位の成績で皆が憧れるリーダー的存在でしたが,家計が貧しいために街一番の呉服商に奉公に出されます。

その呉服商は,劣等生で一番臆病者であった吾一の友人の親が営んでおり,その友人に見下される,辛い奉公生活が始まります。吾一は勉強がしたくても学校に行けず,友人はお金の力だけで学校に行きますが,勉強が嫌いなので全く勉強しません。その頃の私は「学校に行けるだけでも恵まれているんだ」と思った覚えがあります。吾一はその状況にもめげず自力で勉強を続けますが,頼りの母がなくなり上京します。

そこでも様々な苦労をしながらも周囲の大人に支えられ,夢を捨てずに前向きに人生を歩んでいき,自ら出版事業をおこすたくましい青年に成長します。東京での生活が行き詰ったときに「人間はな,人生というトイシで,ごしごしこすられなくちゃ,光るようにはならないんだ」と励まされます。

このお話には,疲れた生活を励ましてくれるような金言が多く含まれています。
もしまだ読んだことのない方がおられましたら,是非是非,お時間のある時に読んでいただきたい小説です。

実はこの「路傍の石」は昭和12年に新聞小説として連載を開始されましたが,検閲により内容の変更を迫られ,作者の山本有三は信念を曲げることを断固として拒み,連載の中止を選んだので未完のままです。その信念が伝わるのか,多くの人に愛され,戦後,何度も映画化された名作とされています。

2019年度推薦図書
マンガで分かる心療内科シリーズ
ゆうきゆう【著】(少年画報社・2010)
①マンガで分かる心療内科 1
②マンガで分かる心療内科 アドラー心理学編
③マンガで分かる心療内科 依存症編


推薦者 佐藤 光保 助教(摂食機能療法学)

①マンガで分かる心療内科 1
心療内科ってどんな科?うつってどんな病気?などがゆるーく学べるギャグ多めの漫画です。アニメ化もされています。

②マンガで分かる心療内科 アドラー心理学編
アドラー先生いわく「トラウマなんて存在しない!」。
トラウマの原因(過去の嫌な出来事など)を考えても大して意味はありません。
それよりも大切なのは「これからどうするか」、すなわち進む方向であり「目的」なのです。
「どうして上手くいかないのか」ではなく「どうしたら上手くいくのか」と考え方を変えてみましょう。大切なのは本当にやりたい「目的」を見つめ直すことなのです。
嫌なことがあった人はぜひ読んでみてください。

③マンガで分かる心療内科 依存症編
知っていますか?同じ勉強時間の学生でも、それ以外に通信アプリを使う時間が増えると成績が下がるという研究があることを。
ネットやゲームなどをしている時は前頭前野への血流が下がり1時間は麻痺したような状態になるそうです。
その繰り返しにより脳が疲労してしまいます。
じゃあ、どうすればいいの!?この漫画を読んで解決策を勉強しましょう。

2019年度推薦図書
仕事が早く終わる人、いつまでも終わらない人の習慣
吉田幸弘【著】(あさ出版・2019)


推薦者 西尾 健介 助教(補綴 Ⅰ)

普段、無駄なことをしていませんか?
やりたいことがあっても時間がないと思うことはありませんか?

この本を読むことは、自分の取り組みについて見直せるいい機会になります。
是非ご一読ください。

2019年度推薦図書
高校生のための批評入門
梅田卓夫ほか【編】(筑摩書房・2012)

推薦者 村山 良介 助教(法医学)

僕はこの本の帯が好きで、グッとくる。
どんな人間にも批評の精神はある。批評を「する」のではなく、それは確かに「在る」。孤高を保ち、低い声で内面を語る51編のアンソロジー。
これだけでももうお腹いっぱいなのだが、さらに、内容はとんでもない。
大名著51編の一節が、心に突き刺さる。
涙で脱水症になってしまうから、高校生くらい体力のある年代に勧めないと危ないのだろう。
冒頭に「この本をつかう人みなさんへ」とあり、つまりこれは読み物ではないのだ。
この衝撃を、ぜひ大学生の感受性を以って。

2019年度推薦図書
学びを結果に変えるアウトプット大全
樺沢紫苑【著】(サンクチュアリ出版・2018年)

推薦者 雨宮俊彦 助教(歯科麻酔学)

勉強しているのに成績が伸び悩んでいる学生へ贈る
「学びを結果に変える アウトプット大全」
やり方が変わればあなたは変わる
考え方が変わればあなたは変わる
一度、読んでみてください。

2019年度推薦図書
苦しかったときの話をしようか
ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」

森岡毅【著】(ダイヤモンド社・2019)


推薦者 中谷 有香 助教(薬理学)

この本はUSJを再建した森岡毅氏が就活に悩む娘に向けて書いたメッセージだそうです。
伝えたいことが山ほどあるのに、つい熱くなってしまいケンカのようになってしまう…、そんなループをなんとかする為に書き貯めた娘への手紙が編集者の目に留まり出版されました。
前半のキャリア構築の戦略的なノウハウから一転、後半にある本のタイトルとなっている「苦しかったときの話をしようか」という章では,筆者が今までのキャリアで苦しかった時期のエピソードが包み隠さず描かれています。
一見華やかなキャリアを選んでいる筆者にも、その裏には人間味溢れる職場での苦労があり、時に心が折れそうになりながらも自分を信じて奮闘する姿が描かれています。
読み終わった後には、自分のキャリアについて考えると同時に失敗を恐れずに「挑戦」することに感化される一冊です。

2018年度 推薦図書

2018年度推薦図書
なぜ人と人は支え合うのか 「障害」から考える
渡辺一史【著】(筑摩書房・2018)


推薦者 佐藤 紀子 准教授(健康科学分野)

「障害者は,スポーツなんてしなくていいんじゃないですか?」
本学部で授業を担当し始めた年,学生に言われた言葉だ。
障害者は日々の生活をするのでさえ大変なのに,スポーツをするなんて,もっと大変だ,と感じたのだろうか?
人の手を煩わせてまでスポーツをする必要はない,と考えたのだろうか?
私はまだ,その発言の背景にあるものを本人に聞けていない。

皆さんは,「障害」や「障害者」について考えたことがあるだろうか?
そもそも,障害者と健常者のラインはどこにあるのだろうか?
目に見える障害がなくても,社会に適応できない面を抱えている人はたくさんいるだろう。全ての人が適切な支援を受けながら,学業や仕事に従事でき,その人の能力を生かして活躍できる社会を作っていかなくてはならない。
誰もが必要な時に,手を差しのべ合って生きていけるような社会の実現には,何が必要なのだろうか?

なぜ人と人は支え合うのか?「障害」から考えてみませんか?
こんな夜更けにバナナかよ」も,ぜひ!

2018年度新着図書
ミッション: 元スターバックスCEOが教える働く理由
岩田松雄【著】(アスコム・2012年)

推薦者 蓮池聡 助教(歯科保存学Ⅲ)

本書はその題名のとおり「働く理由」について、元スターバックスCEOの岩田松雄が書いた本です。
スターバックスとザ・ボディショップでの実例をあげながら、働くことにおけるミッションの重要性を説いてゆきます。
「ミッションは自分で見出し、考えてこそ価値がある。」
「経験を重ね、成長していく過程でミッションを進化させていけばいい。」
といったメッセージが読者に投げかけられます。

私たち歯科医療従事者は「働く」ということについて深く考えることがないまま、卒業と同時に臨床業務にあたります。働く意義を「最善の治療を患者に提供すること」などと一括りにまとめてしまえば単純です。
しかしながら、人生は長く、様々なことを経験するはずです。患者も自分も家族も同僚も幸せに暮らすには、もう少し「働く意義」を掘り下げてみる必要があるのではないでしょうか。
“自分の存在理由を問い直し、自分なりのミッション・ステートメントを具体化する。”
この本はそのような探求のヒントになると思います。
2018年度推薦図書
今どきの若いモンは
吉谷光平著(講談社.2018年)

推薦者 竹内義真 助教(総合歯科学)

この本は漫画ではありますが 社会で生き抜く為のヒントを教えてくれる作品です。
以下の項目のうち1つでも興味を持った人または悩んでいる人にお勧めです。一度ぜひ読んでみてください。
  1. 上司から同僚へのコミュニケーション法
  2. 上司が若者から学ぶ姿勢
  3. 言葉の使い方 (悪い例:「これだからゆとり世代ってやつぁ」)
  4. 上司からの声かけ(部下を育てるのも先輩上司の仕事)
  5. 部下の叱り方(場所や言葉の選び方)
  6. 体調管理とフォロー
  7. 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)
  8. 良い職場の条件は、仲間(人)によるもの
  9. 飲み会とパワハラ、セクハラ
  10. 飲みにケーションで得るもの
  11. 成功体験を得るために(失敗を糧にして前進すること)
2018年度推薦図書
炭水化物が人類を滅ぼす【最終解答編】 植物vs.ヒトの全人類史
夏井睦【著】(光文社・2017年)


推薦者 渡辺孝康 助教(基礎自然科学分野:化学)

米、パン、麺類、調味料、菓子、醸造酒など、日頃の食生活から切っても切れない炭水化物が実は人類の健康を害する存在ではないか、というテーマを科学的に説明した一冊。

化学を懸命に勉強している学生さんたちにはまだまだ無縁でも、健康に関する関心は年齢を重ねるにつれて高くなってきます。かく言う私には糖質制限などとてもできる気はしないのですが、本の序盤では化学、中盤では生物学に関する話題が出てきて、最後のほうでは歯科の話題も少し書かれており、多角的に考察されています。

ただ、歯周病原細菌の研究に携わる身からすると、糖質制限で歯周病が発症しなくなるとの主張には首肯しかねるところがあるように、一つ一つの記述がどんな根拠に基づいているのか、批判的に読み進めると理解がより深まると思います。この本の前編にあたる本や、昨年度既にコメント付きで推薦されている同著者の別テーマの本などと読み比べるのもいいかもしれません。

なお、炭水化物が人類を滅ぼすという絶望的な命題とは対象的に、同じ光文社新書の別著者の本によれば、ケトン体が人類を救ってくれるというのがせめてもの救いでしょうか。
ケトン体が人類を救う : 糖質制限でなぜ健康になるのかも所蔵があります
2018年度推薦図書
おもしろい ! 進化のふしぎ 続ざんねんないきもの事典
おもしろい ! 進化のふしぎ 続々ざんねんないきもの事典

今泉忠明【監修】下間文恵, 徳永明子, かわむらふゆみ【絵】(高橋書店・2017,2018年)

推薦者 尾崎愛美 助教(衛生学)

この本は, 動物学者の今泉忠明さんによる動物のちょっと残念な生態を面白可笑しく取り上げています。

皆さん, 一角の角が実は前歯なのはご存知ですか。
私は角だと思っていたのですが, 角ではなく左側前歯が 3m くらい長くのびてしまったものだそうです。しかも, 口を閉じるために, 上唇を突き破っており, なんとも痛そうです。この歯はオス特有のもので, オスは繁殖期になると, 歯を振り上げてメスに求愛します。そしてメスは, どっちの歯が長いかで相手を選ぶそうです。つまり, 一角の世界では, 巨大歯であること, なおかつ出っ歯なほどモテまくるそうです。

この他にも, 「ワニが口を開く力は, おじいちゃんの握力に負ける」, 「カメムシは自分のニオイがキツ過ぎて気絶する」など思わずクスッと笑ってしまう動物の残念な雑学が満載です。

勉強や研究の合間に読むと良い気分転換になると思います。また, 動物園や水族館に行く前に読むとより動物が愛らしく感じられると思います。ぜひ一度手にとってみて下さい。

◆シリーズ第1弾おもしろい ! 進化のふしぎ ざんねんないきもの事典も蔵書があります。
 
2018年度推薦図書
終戦のローレライ
福井晴敏【著】(講談社・2002)

推薦者 篠田 雅路 准教授(生理学)

太平洋戦争末期の1945年夏。日本軍は劣勢を極めるも降伏という選択肢を持てず、日本は滅亡の淵に瀕していた。
特殊兵装PsMB-1、通称[ローレライ・システム]を持つ特殊潜水艦「伊507」は、ひとりの男の壮大な陰謀に巻き込まれていくとも知らず、呉軍港を極秘に出港する。
『日本民族の滅亡を回避し、この国にあるべき終戦の形をもたらす』ために。
文章からは凄まじい臨場感や緊迫感が伝わり、あたかも自分も乗組員ではないかと錯覚を覚える。大本営や帝国海軍の主義・主張に対する不条理や矛盾を理解しつつも、諦観の念を持って戦い抜いた男達の姿は敬服せずにはいられない。太平洋戦争で亡くなった英霊たちは、同じ思いをしながらも命を賭して国、家族を守ってくれたんだろう。

架空ミニタリー小説の域を超えて、この時代に亡くなった人々の価値観、そして期せずして生き残った人々の苦悩が見事に描写されています。戦争という題材を通して今後の日本の、世界の在り方について考えさせられる一冊です。
2018年度推薦図書
わたしを離さないで
カズオ・イシグロ【著】土屋政雄【訳】 (早川書房・2008)


推薦者 田邉 奈津子 先生(生化学)

このお話は、主人公たちが幼少期に育てられる施設での話と、その後青年になりその施設を出て自立したあとの話の2部で構成されています。

話の中盤でようやくこの小説がSFである事を知るくらい、事実を語っているかのように抑制的かつ客観的な文章です。一方で主人公たちの感情がわかりやすいのは筆者の圧倒的な文章の表現力と構成力によるものだと思われます。

科学の進歩と生命倫理を問う作品で、読んだ後、近い未来に同じことが起こるかもしれないと思って,すこし怖い気持ちになるかもしれません。

科学や医学を学ぶ学生に是非読んでもらいたい名著です。
2018年度推薦図書
嫌われる勇気 : 自己啓発の源流「アドラー」の教え
岸見一郎, 古賀史健【著】(ダイアモンド社・2013)

推薦者 石山 美紗 先生(小児歯科学)

この本はアルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を「青年と哲人の対話篇」という物語形式を用いてまとめた1冊です。アドラー心理学は「どうすれば人は幸せに生きることができるか」という哲学的な問いに、きわめてシンプルかつ具体的な「答え」を提示します。

対人関係に悩むことはありませんか?劣等感を感じることはないですか?
この本にはあらゆる悩みを一気に解消する方法が書いてあります。
自らの生について、出来ることは「自分の信じる最善の道を選ぶこと」それだけです。と記しています。

自分の生き方を貫くとは?自分の人生とは?
1冊の本が、ときに心の支えとなり、励みになり人生を大きく変えることもあります。この本を読んで人生を少しシンプルに考えてみてはいかがでしょうか。
2018年度推薦図書
チーム
堂場瞬一【著】(実業之日本社・2010)


推薦者 福井 怜 先生(病理)

いろんなドラマが生まれる年始恒例の箱根駅伝。
箱根駅伝出場を逃した大学の中から、予選会を好タイムで走った選手で結成される「学連選抜」。あの“公務員ランナー”川内優輝さんも、かつて、この学連選抜のメンバーとして、箱根駅伝を走りきりました。
学連選抜は本戦校以外から精鋭を集めた最高のチームなのか、それとも本戦校が持つような連帯感のない寄せ集めチームなのか。究極のチームスポーツといわれる駅伝で、学連選抜メンバーは何のために襷を繋ぐのか。

4連覇した青山学院大学など本戦校が注目される昨今、学連選抜チームの選手たちの苦悩や葛藤と激走を描いたスポーツ小説です。
箱根駅伝好きの人に限らず、爽快に読んでもらえるストーリーになっています。クラブや大学、会社など組織の中で生きていく私たちにとって、チームのまとめ方など社会で生き抜くにあたって役立つことが見つかる一冊です。

2017 年度推薦図書

2017年度推薦図書
名著講義
藤原正彦【著】(文藝春秋・2009年)

推薦者 辻本 暁正 先生(保存Ⅰ)

本書は、数学者の藤原正彦教授がお茶の水女子大学で十数年にわたり行っていた 「読書ゼミ」の内容である。編集者が録音して講義記録として一冊の本にまとめた。
この「読書ゼミ」の講義内容は、毎週藤原教授が指定した一冊の文庫を学生が読み、翌週にレポートを提出、そして授業に臨んでディスカッションを行うというものである。
学生が読書をしてディスカッションを行うというだけでも本についての理解が深まるが、そこに藤原教授が質問をすることで、学生の考えがより深まる。

藤原教授と学生とのやり取りを中心に、それぞれの授業で取り上げられた本について様々な考え方が述べられており,自分の学生の時にこのような授業はあればと、とてもうらやましくも感じた。

以下の11冊がこのゼミで取り上げられた作品で、明治から昭和前期までに書かれた「名著」である。
・新渡戸稲造 「武士道」 (歯学部所蔵あり)
・内村鑑三 「余は如何にして基督教徒となりし乎」
・福沢諭吉 「学問のすゝめ」(青空文庫http://www.aozora.gr.jp/cards/000296/card47061.html
・日本戦没学生記念会編 「きけ わだつみのこえ」
・渡辺京二 「逝きし世の面影」
・山川菊英 「武家の女性」
・内村鑑三 「代表的日本人」
・無着成恭 「山びこ学校」
・宮本常一 「忘れられた日本人」 (電子ブックで読めます)
・キャサリンサンソム 「東京に暮らす」
・福沢諭吉 「福翁自伝」 (歯学部所蔵あり/青空文庫http://www.aozora.gr.jp/cards/000296/card1864.html

本書の中で藤原正彦という人物を通して,11冊の「名著」と出会い,これらの書かれた背景を理解した読書のすゝめとなればと思う。

2017年度推薦図書
君たちはどう生きるか
吉野源三郎【著】(マガジンハウス・2017)


推薦者 横瀬 勝美 先生(化学)

日々是好日
毎日、楽しいことがないかなぁ?
いいことがないかなぁ?なんて思って日々を送っていませんか?
悩んだりイライラしたりしている自分にほんの少しだけ心が安らぐ瞬間が訪れるかもしれません。

君たちはどう生きるか
1930年代に書かれた本です。漫画ではみなさんが知っていますが、、、、。
主人公である中学生の「コペル君」が様々なエピソードから感じた事と、彼の「叔父さん」が発する、思春期の少年に刺激を与える問いかけが、とても清々しさに溢れている。

広い年代で感じ方は違うと思いますが、いたわる心、過ちを悔やむ心、時代が変わっても、不変のメッセージがちりばめられている。
日々の勉強がどう世の中の役に立っているのか、自分で考え抜くことの大切さといった、学問に対する姿勢についても、気づきを起こさせてくれることでしょう。

2017年度推薦図書
動物翻訳家 : 心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー

片野ゆか【著】(集英社・2015)

推薦者 佐藤 恵 先生(生物学)

映画のメイキングやドラマのNG集など,物事の出来上がる様子や舞台裏を知りたい人は少なくないと思います。この「動物翻訳家」は,動物の声をヒト語として翻訳する(?)動物園飼育員の話であるとともに,動物の飼育展示の作り方でもあります。

展示の構想,意見の調整,予算折衝など内部での働きかけのほかに,種の保存,希少動物の保護保全,動物の福祉などクリアしなければならない条件は山ほどあります。もちろん,来園者や市民の要望も満たさねばなりません。
その過程が,登場する飼育者だけでなく動物園内外の専門家にもきちんと取材されたうえで書かれています。情景の描写も生き生きとしていて,とても映像的でドキュメンタリーフィルムを見ている錯覚にとらわれます。

この本を読んだ後で動物園を訪れてください。きっと今まで見えていなかったものが見えてこれまでより楽しめると思います。

2017年度推薦図書
ジョコビッチの生まれ変わる食事 : あなたの人生を激変させる14日間プログラム
ノバク・ジョコビッチ【著】 タカ大丸【訳】( 三五館・2015)


推薦者 髙山忠裕(保存Ⅲ)

現在の男子テニス界を牽引しているプレーヤー「ノバク・ジョコビッチ」。

彼は,情勢不安定なセルビア出身である。実家はピザ屋であり,幼少期から母親の作るピザが好物であった。そんな彼が「グルテン不耐症」と診断され,自身の食事を見直すこととなる。
それ以降,今までテニスの戦績がいまひとつであり,試合中も集中力が持続しない状態から一変し,グランドスラムを幾度と制覇する世界のトッププレーヤーに上り詰め活躍するに至っている。

また,「オープンマインド」すなわち,外部からの情報や他人の意見に耳を傾けることができる心のゆとりが大切であると語っている。
私たちの食生活を見つめ直すきっかけになるだけでなく,もしかするとあなたの人生を大きく好転させる一冊になるかもしれません。

2017年度推薦図書
傷はぜったい消毒するな : 生態系としての皮膚の科学
夏井睦【著】 (光文社・2009)


推薦者 大橋晶子(解剖Ⅰ)


傷は先ずは消毒する。というこれまでの常識を覆す内容です。

なぜ消毒してはいけないのか?なぜ「湿潤療法」がよいのか?が,皮膚の構造とその働きから論理的に説明されています。また,著者が形成外科医であることから,「湿潤療法」が実臨床においてなかなか普及しない原因なども検証しています。

かさぶたを作らせない絆創膏を使うと「傷跡が残らず早く治る」という実感が皆さんにもあると思いますが,この本を読むとその理由がよく分かります。

私も本書を読んで以降は,生活の中での創傷・熱傷は湿潤療法としています。本書は実生活で役に立つだけでなく,皮膚という最も身近な臓器の驚くべき能力について改めて考えさせる一冊です。

 

2017年度推薦図書
人体失敗の進化史
遠藤秀紀【著】 (2006・光文社)


推薦者 大橋昌子(解剖Ⅰ)

本書は,動物解剖学者が様々な動物の遺体を解剖し,それらを形態学的に比較しながらヒトの進化の過程を捉えたものです。ナメクジウオからヒトへの進化の歴史,形態学的な変遷が私たちの身体に刻まれていることが興味深く語られています。

これまでと違った角度から解剖学に触れられるので,解剖学が苦手な人にも得意な人にも是非読んでいただきたい一冊です。

 

2017年度推薦図書
Life Shift (ライフシフト) : 100年時代の人生戦略

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット【著】 池村千秋【訳】(2016・東京経済新報社)

推薦者 関啓介(総合診療科)

人生100年!教育→勤労→引退の時代は終わりゆく

長寿社会のトップランナーである日本では、近い将来100歳以上の人口は6万1千人を越すと言われている。私が子供の頃と比べ、現在は100歳以上のお年寄りの存在は珍しくない。
2007年生まれ、すなわち現在10歳の約半数は107歳まで生きるであろうという衝撃的なデータがある。これも高齢化のメカニズムが検証されるにつれ、納得のいく分析であることに気づく。

われわれは今まさに100年の人生を意識した社会に生きている。本書は従来のライフパターンからの脱却がテーマとなっている。

教育→勤労→引退という人生の3ステージを考えると、100年人生時代においては、引退以降の時間が長くなる。この時期を幸せに過ごすためには様々な意識の変革が必要である。
必ずしも学生=20代ではない。50代や60代でも学生として新しいことを学ぶチャンスはある。

本書の「エクスプローラー(探検者)」、「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」、「ポートフォリオ・ワーカー」という様々なステージを経験するマルチステージの人生というとらえ方も興味深い。
長く生産的な人生を送るには、経済的な資産に加え、家族や友人、健康といった無形資産の形成も重要視されている。終身雇用制度がまだ根強い日本社会では、このようなライフ・シフトという考え方を実践に移すにはハードルが高いかもしれない。しかし今私たち歯科医師なりのライフ・シフトを模索して、今後の人生を点検してみよう。

 

 

2017年度推薦図書
みんな大好きな食品添加物
安部司【著】(2005・東洋経済新報社)

推薦者 宮嵜洋一(数理情報学)

ふだん何気なく口にする食品  その製造過程の真実(!)

書店に行っても、自分の狭い読書傾向では立ち寄るコーナーが限られている。その点、図書館は本来の目的で探しに行った分野以外の本でも、目にとまることがある。そこが、図書館のいいところでもある。この本は、山奥にある田舎の図書館でふと目にとまった本だ。

著者は元々、食品業者へ食品添加物を勧めていたセールスマンであった。ダメになった食材も著者の手にかかれば、あっという間に見た目もおいしそうな食品へと変身してしまう。しかも、安上がりとくれば、食品業者が食の安全よりも著者の手法になびくのも仕方がない。利益優先で食品添加物のセールスに邁進していた著者に、転機となる大事件が起こる。題して、ミートボール事件。本書の最大の山場でもあり、大いに笑える。この事件の後、著者は全く反対の立場の活動家となり、食品添加物の有害性について世の中に訴えるようになった。

推薦者は本書を読んだ後、食品の添加物表示を注意深く読むようになったし、出されたお弁当でも、食べ残すようになったおかずがいくつかある。本書を推薦するに当たって、amazonで調べたところレビューが300件を超えており、大反響の本であることがわかる。本書を所蔵していた田舎の図書館の選定眼に驚くばかりである。

2017年度推薦図書
科学的に元気になる方法集めました
堀田秀吾【著】(2017・文響社)


推薦者 小泉寛恭(歯科補綴学Ⅲ)

「元気ですか?」の問いかけに,

元気ですと返せる人は何人いるでしょうか?
そんなにはいないと,私見ですが思います。 

我々歯学部の教職員および学生は,さまざまなストレス過多の状態にあります。今回,歯学部の皆様の生産性,幸福度を向上するために,この本を推薦いたします。
この本は,科学的根拠(エビデンス)に基づいた元気になる方法,全38項目を挙げております。全部読まなくても,いまの自分にあった項目を読んで参考にすればよろしいかと思います。わたくしの好きな項目は,「やけ酒をしてはいけない」,「威張ってはいけない!」,「香りでストレスを減少させる」の3つです。

読後,ストレスが減少し,パフォーマンスが向上していることを祈ります。

 

2017年度推薦図書
自閉症の僕が跳びはねる理由

東田直樹
【著】(エスコアール出版部・2007)


推薦者 佐藤紀子(健康科学)
 

他者を知ろう  /  多様性について考えよう 

社会にはいろいろな人がいます。赤ちゃん、子どもから高齢者。男性、女性、そのどちらでもない人。障害のある人、ない人…。

普段の学生生活だけでは、多様性を認識する機会が少ないかもしれません。

しかしながら、本学部を卒業し歯科医師となった時に、皆さんは多様な人々の個々のニーズに配慮していくことが必要となります。

そのようなことを踏まえると、学生の皆さんには専門分野の学修にとどまらず、幅広い知識を学び、他者について考えてみてほしいと思います。

歯学部図書館には、障害や障害のある人への配慮について学べる書籍が揃っています。ぜひ一度手に取ってみてください。様々な立場や価値観があることに気付くことで、皆さんの人生もきっと豊かになるはずです。

まずは、東田直樹さんの「自閉症の僕が跳びはねる理由~会話のできない中学生がつづる内なる心~」を読んでみてはいかがでしょうか。

2016年度 推薦図書

2016年度推薦図書
顎関節症診療ハンドブック
日本大学歯学部歯科放射線学講座 本田和也 他3名【編】
日本大学歯学部の先生方【著】
(メディア・2018)


推薦者 荒木正夫(歯科放射線学講座)
 

顎関節症を克服するための診査と診断のために

近年、顎関節部に疼痛を持って歯科医院に来院する患者さんが多くみられます。

患者さんにとって歯や口腔顔面部の疼痛ほど不快なものはありません。

歯科臨床で今学んでいる学生さん、顎関節症の専門医ではない研修医や歯科医師の方々、これから一般歯科医院で働く方にとって、幅広く図解入りで簡素化したこの『顎関節症診療ハンドブック』の活用によって、顎関節症へのアプロ-チが、あなたにとって1つの治療方針に役立つこととなるかも知れません。

また、これから顎関節症の治療を行う前に治療に悩まないためにも、是非とも、この本を手元に置いて活用していただければと思います。

2016年度推薦図書
歯科医師のための産業保健入門 第7版
日本歯科医師会【監修】(口腔保健協会・2016)


推薦者 田中秀樹(衛生学講座)

 

地域保健において、産業保健の分野は

つかみどころがない・・・

と感じる人もいるのではないでしょうか。

産業保健は、対象となる人の年令・職種が幅広く、この分野における歯科の法的な立ち位置も複雑です。また、疑問点を専門書で調べようとしても、多くの本は行政や医科からの視点で書かれており、歯科にかかわる記載が充分でないことも勉強を困難にする原因の1つかと思います。

本書は、歯科医師国家試験に必要な知識が十分に網羅されていることは勿論、産業保健と歯科医師のかかわりについて、法律や実務だけでなく、「産業歯科医の成立」に至った歴史的な背景まで丁寧に解説した本です。それゆえ、歯科医師として産業保健に関わるようになってからも、この分野の勉強に悩んだら開いてみる価値のある本だと思います。

2016年度推薦図書
長生きは「唾液」で決まる!
:「口」ストレッチで全身が健康になる

日本大学歯学部摂食機能療法学講座 教授 植田 耕一郎【著】
(講談社・2014)


推薦者 佐藤光保(摂食機能療法学講座)

 

長生きの秘訣が何かしっていますか。

・・・実は「唾液」なんです。

口の健康を保つためには、歯ごたえのあるものを食べているか、歯磨きの習慣があるかは、とくに大きく騒ぎ立てるような問題ではなく、唾液をしっかり出すことこそが重要なんです。

長年歯科医師として「摂食機能」という観点から患者さんを診てきた当講座の教授 植田耕一郎先生ならではの切り口で唾液が持つ力、唾液が全身に及ぼす影響などを分かりやすく解説されています。また、健康を保つために実際に唾液をだすためのトレーニング「口ストレッチ」を紹介している一冊になります。

この本は歯科医師向けよりも一般の方向けに書かれている本ですが、我々歯科医師が読んでも唾液と健康の関係など面白く勉強することができます。家族に飲み込みの障害(摂食嚥下障害)を持っている方や高齢者の健康に興味がある方はもちろんのこと、学生にも是非読んでもらいたいと思います。

2016年度推薦図書
図書館「超」活用術 最高の「知的空間」で、本物の思考力を身につける
奥野宣之【著】 (朝日新聞出版・2016)

推薦者 堀米 拓哉(図書館事務課)

【国内史上最高の図書館解説本 一度でいいからめくってみよう!】

図書館の使い方に関する本はいろいろと出ているのですが、この本は決定版といえる内容を持っています。

利用者の視点から、最新の図書館事情を交えつつ、なぜ図書館は使えるのか、役に立つのかをわかりやすく解説しています。

図書館の資料は探しにくいとよく言われるのですが、ちょっとした決まり事(図書館の特徴)を知れば、自在に資料探しができるようになります。

検索と足を使った探索を組み合わせれば、資料を探し出すだけでなく、発想力も生まれ、疑問を整理することができることがよく分かります。

著者はフリーのジャーナリストで、図書館司書の資格も持っており、「本当に必要だから」図書館を使うということが明解に書かれています。

2016年度推薦図書
基本から学ぶラテン語

河島思朗【著】(ナツメ社・2016)

推薦者 佐藤 恵(生物)

解剖学や生物学で使用される言葉の中にはラテン語由来のものが少なくありません。
特に「学名」は世界共通の正式な生物の名称で,ラテン語で表記をし(ヒトHomo sapiensはラテン語で賢い人) ,固有名詞が使われる場合もラテン語の語尾変化を受けます(キタメダカOryzias sakaizumiiは研究に貢献した酒泉満先生への献名)。
小学生のころに夢中で覚えた恐竜の名前も実は学名をカタカナ表記したものです。
いわゆる微生物の名称も例外ではありません.生物の名称は第1学年後期の「遺伝学」でも詳しく取り上げます。
学生が専門用語や学名を学ぶ際に,また,教員が授業する際に良い参考になると考え本書を推薦いたしました。

 

2016年度推薦図書
公衆衛生がみえる 2016-2017
医療情報科学研究所【編】(Medic Media・2016)

推薦者 伊澤光(法医学) 

歯科医師国家試験の合格率は、全国平均65%と厳しい状況が続いており、勉強に焦りを感じている人も多いことでしょう。

勉強のコツは、教科ごとに独立して勉強するだけでなく、蜘蛛が巣を張る際に小さな虫を捕るために網目を小さくするかのごとく他の教科の知識と連結させ、頭の中の網目を小さくすることです。

この本は、法医学、衛生学、医療人間科学分野等をうまく連結し近年の法改正や公衆衛生を、イラストを含めながら分かりやすくまとめています。

部活の帰りに疲れた体でも、眺めているだけで勉強になるこの一冊をぜひ手に取ってみてはいかがですか?

2015 年度推薦図書

2015年度推薦図書
線虫の研究とノーベル賞への道
 : 1ミリの虫の研究がなぜ3度ノーベル賞を受賞したか

大島靖美【著】(裳華房・2015)

推薦者 佐藤恵(生物学) 

センチュウはわずか1mm程度の地味な生物ですが、ゲノムだけでなく、発生の際の細胞の分化や生活史などが徹底的に解析されているために、優れたモデル生物として様々な研究に用いられています。

最近も、センチュウの嗅覚の研究から、尿でがん患者を識別するという研究が報告されました。

本書では、センチュウの種小名のとおりエレガントな研究を詳細に、しかし分かりやすく記載されています。遺伝子の発現調節などの理解に必要な基本事項にも紙面を割いているので、授業で学修した事項とそのアドバンスを含めて読み進めることができるでしょう。

本書には残念なことがひとつあります。手に取った印象がいかにも教科書的であることです。この小さな生物をめぐる大きなドラマを多くの方に楽しんでもらいたいと思います。

2015年のノーベル医学・生理学賞は「寄生虫による感染症治療薬の発見」に対して屠呦呦(トウ・ヨウヨウ氏)、大村智博士、William Campbell博士が受賞されました。大村博士の発見した「エバーメクチン」が抗線虫活性物質として線虫が引き起す病気の治療薬として世界中の人々や動物を救ったことに与えられたものです。つまり、線虫は4度目のノーベル賞の対象となったわけです。

2015年度推薦図書
キリンの斑論争と寺田寅彦
松下貢【編】(岩波書店・2014)

推薦者 磯川桂太郎(解剖Ⅱ)
 

医学と歯学が一元か二元かという論争があったことは,本学部創設者の佐藤運雄先生を語るときに必ず取り上げられるエピソードです。進化論,量子力学などをはじめ,科学の世界では実に様々な論争があります。

本書は,約80年前,岩波書店の「科学」の誌面で展開されたキリンの斑(まだら)模様の成因についての論争を採録・検証し,また,4名の現代の識者による解釈を加えています。誌面論争は,随筆家としても知られる物理学者・寺田寅彦の門下の平田森三による問題提起で始まり,物理と生物の学者6名から延べ7件の寄稿があり,半年後,寺田論文がこれらを結んでいます。

本書での今日的解釈の筆者には,魚類の模様がTuring理論に従うことを証明した(Nature, 1995)ことで知られる近藤滋博士の名もあります。近藤先生は,本年5月TV放映の「所さんの目がテン第1274回・生き物『模様』の科学」にも出演されています。

2015年度推薦図書
遺伝子図鑑
国立遺伝学研究所「遺伝子図鑑」編集委員会【編】悠書館・2013)

推薦者 酒井 秀嗣(生物学)

遺伝学研究所に関係した80人を超える研究者が、歴史的研究から最新のトピックまで、108の項目について分かり易く解説している。それらの項目は遺伝学のみに留まらず、生物学のいろいろな関連した分野に及んでいる。しかも本書は図鑑である。ひとつの項目は綺麗な図表をふんだんに使って、見開き2ページに読み易くまとめられている。

講義で習った後に読むと、さらに理解が深まる。もちろん、単なる読み物としても楽しい。実は、講義のネタ本にもと考えている。ネタバレになるので読んで欲しくない気持ちもある。それほどオススメ。

2015年度推薦図書
アイスクリームで味わう、”関係”の統計学

向後千春、富永敦子【著】(技術評論社・2009)

推薦者 宮崎 洋一(数理情報)

統計学も2変数のデータを対象としたものになると、適用範囲がぐんと広くなりより実用的になります。それを支える数学も、多変数の微積分や、行列・固有値などを扱う線形代数など幅広くなり、難しくなってきます。しかし、統計学ではそれを支える数学の理解よりも、統計的な解釈を正しく行うほうが重要です。その点、本書では必要とする数学の知識を中学レベルのものに抑え、相関関係、回帰分析、因子分析を中心とした多変量の統計手法をやさしく説明しています。

データ分析のために計算すべき公式は、数学的な証明を与える代わりに、その公式の持つ意味や背景を豊富な図により説明されており、直感的な理解が深まるようになっています。この分野の書物を一通り学んだことのある人でも、本書に目を通せば得るものがあるはずです。

本書は、1変数のデータを対象とした前著「統計学がわかる ハンバーガーショップでむりなく学ぶ、やさしく楽しい統計学」を理解した人が次に取り組むべき本であるとも考えられ、工夫された説明のおかげで、軽快に読み進めることができます。それでも、多変数の統計学を扱っているため、それなりに頭脳をフル回転させる場面にも出くわすことでしょう。

しかし、心配には及びません。なぜなら、所々に散りばめられている(オヤジ)ギャグが、ヒートアップした頭を休めてくれるから。それに、扱っている題材もアイスクリームなので。本書をマスターした暁には、どんなレベルに到達できるか。それを本書のギャグに見習って述べるならば、「誰よりも統計学をアイス」頭脳が出来上がっていることでしょう。

2014 年度推薦図書

2014年度推薦図書
ハンバーガーショップでむりなく学ぶ、やさしく楽しい統計学

向後千春、富永敦子【著】(技術評論社・2007)

推薦者 宮崎 洋一(数理情報)

 統計学では、得られたデータをもとに計算を行って、そのデータからわかる事柄を解釈します。私見では統計において計算(統計処理)の締める割合は、十分の三だと思われます(その理由はこの文章の最後で述べます)。

 コンピュータが発達した現在では、込み入った計算はコンピュータに任せれば済みますが、残りの十分の七に当たる統計的な解釈の部分では、統計学の正しい理解が必要になります。

 本書では、ハンバーガー・ショップでアルバイトをしている大学生のエミの視点を通して、統計学の基本的な考え方が身につくように説明が工夫されています。エミは、売上データや街頭でのアンケート調査のデータを統計処理をすることによって、競合店がひしめく中で厳しい経営を余儀なくされる店長を経営戦略の面で助けていきます。クライマックスは、味付けと食感の組合せを工夫して新商品をヒットさせるくだりです。

 統計学の数学的な基礎をしっかり理解するには、大学レベルの微積分が必要になりますが、統計学を実用に役立てるためには、数学的根拠よりはむしろ数式のもつ統計的な意味合いを理解することが重要です。

 本書では難しい数学を持ち出すことなく、中学レベルの数学を用いて統計的な考え方や概念をやさしく説明しています。本書を読了すれば、「統計学は実用的でおいしい!」ということがきっと実感できるでしょう。

 最後に、冒頭で述べた計算の締める割合に関してですが、計算と統計をそれぞれK3と10Kと書いてみれば、その理由は自明となります。

2014年度推薦図書
法医学者が見た再審無罪の真相

押田茂実【著】(祥伝社・2014)

推薦者 小室 歳信(法医学)

足利事件、布川事件、東電OL殺人事件の再審無罪が相次ぎ、また袴田事件も再審開始決定となった今、警察・検察の捜査、鑑定の精度、裁判の信憑性が問われています。

人権擁護の観点から冤罪は決してあってはなりません。これらの事件の再鑑定に深く関わった法医学者が事件の真相を解き明かした渾身の一冊。真実を知りたい方は、是非、どうぞ。

2014年度推薦図書
骨が語る:スケルトン探偵の報告書

鈴木隆雄【著】(大修館書店・2000)

推薦者 内藤 昌子(解剖Ⅰ)

この本は、一つの骨の形態から何がわかるのか、性別、年齢、死因、そして古人骨からみえてくる進化の過程や当時の文化や生活様式など、様々な視点で教えてくれる本です。

特に、著者の鈴木隆雄先生のご専門は古病理学・骨の老化と疫学ということもあり、加齢に伴う骨病変のメカニズムなど骨の病気についてとても分かりやすく解説されています。

学部学生から大学院生にぜひお勧めしたい一冊です。

2014年度推薦図書
老化の生物学:その分子メカニズムから寿命延長まで

石井直明、丸山直記【編】(化学同人・2014)

推薦者 内藤 昌子(解剖Ⅰ)

人間や動物には自己修復能力を持つにもかかわらず、なぜ加齢による衰えから免れることができないのか?
老化という現象はいったいどのようなものか?また老化を回避し、永遠の命を手に入れる方法はないのか?

寿命という生命の根幹的な問題を科学的な視点で解き、『老化』について考えさせてくれる本がこの本です。

 

2014年度推薦図書
マウス・ラット実験ノート:はじめての取り扱い,
飼育法から投与,
解剖, 分子生物学的手法まで
中釜斉、北田一博、庫本高志【編】(羊土社・2009<改訂版:2023>)

推薦者 小林 真之(薬理学)

動物実験の初心者が基礎的な取り扱い方法を学ぶのに良い本です。

指導者や先輩から耳学問で学ぶこと,ラボマニュアルで学ぶことは勿論大切ですが,異なった視点を持った研究者から基礎知識やノウハウを教えてもらえれば,実験を合理的かつ合法的(?)に進める上でとても役立ちます。

さっと目を通すだけでも,「あっそうなんだ」と思える点が見つかるでしょう。

2014年度推薦図書
はじめの一歩のイラスト薬理学

石井邦雄【著】(羊土社・2013)

推薦者 小林 真之(薬理学)

薬理学は,薬物名が覚えきれないくらい出てくる上に,作用機序や生物物理学的な知識まで理解する必要があるので,正直取っつきにくい教科の一つでしょう。

本書は,従来の教科書とは異なりカラフルなイラストを多用して初歩的な事項を分かりやすく説明してくれています。

予習したり、講義した内容が複雑で分からなかった点を整理するのに役立つ本です。

2014年度推薦図書
医学的介入の研究デザインと統計:

ランダム化/非ランダム化研究から傾向スコア、操作変数法まで
ミッチェル H. カッツ【著】木原雅子, 木原正博【訳】(メディカル・サイエンス・インターナショナル・2013

推薦者 清水 典佳(矯正学)

昨今の歯科医療は、Evidence based medicineを視野に入れた治療が行われています。

本書は特に研究デザイン、統計学的手法、ランダム化研究と非ランダム化研究をカバーしつつ系統的に記載している研究ベースの書籍です。

臨床研究の大きな潮流としてその実用的な理解のために参考にされてはいかがでしょう。

2014年度推薦図書
必携! 矯正装置 簡便な矯正装置で最大の治療効果を得るために

遠藤敏哉著(クインテッセンス出版・2014)

推薦者 清水 典佳(矯正学)

本書は、不正咬合の早期に用いる歯科矯正装置が記されており、教科書では分かりにくかった装置なども図で数多く見ることができます。

歯科矯正学の臨床で使用する装置の理解と整理に役立つ書籍と思います。

副題の治療効果については見解が分かれるため、教科書の補足としての利用を勧めます。

2014年度推薦図書
新しいNi-Ti製ファイルの歯内療法:
Single patient use時代の到来

須田英明【監修(クインテッセンス出版・2014)


推薦者 林誠(保存Ⅱ)

歯内療法における機器・材料の開発は目覚ましく,その一つが彎曲根管に有効なニッケルチタン製ロータリーファイルです。

近年の歯科医師国家試験でも本ファイルに関する問題は毎年出題され,歯学部学生にとって必須な知識となっています。

この本は,歯科医師や歯学部学生が最近登場したニッケルチタン製ファイルの特性を豊富な臨床例を見ながら理解することができ,理論のみならず術式も学べるため,ぜひ一読してもらいたいと思います。

2014年度推薦図書
New Principles in Developmental Processes
Hisato Kondoh, Atsushi Kuroiwa editors(Springer・2014)


推薦者 磯川桂太郎(解剖Ⅱ)

いま生きている生物はどれもこれも、その祖先が太古の地球上に生じてから一度も途絶えることなく、受け継がれてきた「いのち」を持っています。都度生じる「いのち」が生物として形づくられる過程は、生物の長い歴史の集大成です。この本は、そのメカニズム解明に挑んでいる邦人若手研究者らの最新知見を記しています。教科書にはまだ載っていない最先端トピックスが扱われています。電子版もリリースされていますが、まずは図書館でどうぞ。

2014年度推薦図書
細胞紳士録:カラー版

藤田恒夫、牛木辰男 【著】(岩波書店・2004)

推薦者 磯川桂太郎(解剖Ⅱ)

生命の基本単位は細胞だと学んだと思います。それは細胞が私たちのからだのパーツだという意味ではありません。私たちと同じように「いのち」が宿っているということなのです。そんな細胞たち、私たちのからだに棲む彼らの「顔」がみえてくる本です。電顕像、イラスト、解説文が細胞ごとに実に小気味よくまとめられています。読めば興味が湧きあがり、学ぶことが楽しくなること請け合いの本です。是非、ご一読を。

2014年度推薦図書
ザ・ペリオドントロジー 第2版
和泉雄一 他 【編著】(永末書店・2014<第4版:2023>)

推薦者 佐藤 秀一(保存Ⅲ)

歯周病に関する知見は日進月歩です。そのため,歯科医師や歯学部学生は時勢に対応した知識が必要です。この書は学生にとって教科書として,また,最新の知識を整理するための適切な書であると思います。学生諸君はぜひ目を通してみてください。
2014年度推薦図書
ペリオドンタルメディスンに基づいた抗菌療法の臨床
三辺正人、吉野敏明、田中真喜【編】(医学情報社・2014)

推薦者 佐藤 秀一(保存Ⅲ)

「歯周病の原因はプラークである」歯科医師ならば誰もが知っている知識です。しかし,最近の研究から歯周病はプラークだけが原因ではなく,全身のさまざまな要因が深く関連していることが解明されてきています。したがって,歯周治療はこれまでの原因除去だけではなく,薬を用いた内科的治療が注目されてきています。その理論と具体的な治療法を記載した最新の知見であり,歯科医師や学生にとって非常に参考となる書となると思います。
2014年度推薦図書
医療情報システム入門 新訂版
保健医療福祉情報システム工業会【編】(社会保険研究所・2014)

推薦者 本田 和也(放射線)

この本は,医療情報システムの第一線を担う専門分野担当者が,最新の現状分析と将来展望を示した医療情報システムへの入門書です。医療情報システムの全体像から「基幹システム」,「部門システム」,「課題と展望」とを述べています。とくにプライバシーとセキュリティ,地域医療連携情報システムなどは細かく記載されています。これからはレセプト電算処理・オンライン化と本格的なIT時代が歯科業界にもやってきます。是非一度お読みください。
 
2014年度推薦図書
はじめましょう 摂食・嚥下障害のVF検査:CD-ROM付き
神部芳則、勝又明敏【編著】(学建書院・2014)

推薦者 本田 和也(放射線

この本は解剖学的な基本事項から,検査の具体的な手技,模擬食品の選び方,読影の要点,実際の症例,偶発症,スタッフの役割までをわかりやすくまとめたVF検査のマニュアル書です。
歯科医師,歯科衛生士,看護師など,それぞれの分野で活躍している著者らが,より具体的ですぐに臨床で応用できるように解説しています。また,口腔ケアも記載されています。さらに,綺麗な動画もついています。VF検査に興味がある方,是非一度お読みください。
2014年度推薦図書
保健生態学 第2版 
(最新歯科衛生士教本;歯・口腔の健康と予防に関わる人間と社会の仕組み;1 )

可児徳子ほか【著】(医歯薬出版・2014<第3版:2019>)

歯科衛生士講座 高齢者歯科学 第2版(歯科衛生士講座)
森戸光彦【編集主幹】(永末書店・2014<第3版:2017>)

推薦者 川戸 貴行(口腔衛生学)

衛生学・保健学は、例えば生化学や解剖学などの他の学問に比べると、名称からその内容を推し量るのが難しいのではないでしょうか。

歯科衛生士の教本である「保健生態学」に付されているサブタイトルは、将来、歯科医療に携わる者が、衛生学・保健学を通じて学修すべき内容をとてもシンプルに表しており、また本書を開くと、本学問が、人々の健康に関係するあらゆることを対象にしているのが理解できると思います。

もう1つの推薦図書である「高齢者歯科学」では、加齢に伴う全身・口腔機能の変化や疾病、口腔衛生管理の重要性、および高齢者をとりまく社会状況などが幅広く触れられており、また、これらは衛生学・保健学で学ぶ項目でもあります。

歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士を目指す皆さんが、「衛生学・保健学ってどんな学問?」と興味を持った時、また本領域を学ぶことに困難を感じた時に、是非、手に取って頂きたいです。
2014年度推薦図書
シェーグレン症候群の診断と治療マニュアル 改訂第2版
日本シェーグレン症候群学会【編】(診断と治療社・2014<改訂第3版:2018>)

推薦者 清水 治(口腔外科)

シェーグレン症候群を理解するためのバイブル的存在であった初版から5年経過し、研究の進歩につれて新たな知見がこの第2版に加わっています。

病因論、最近発表されたIgG4関連疾患の包括診断基準やシェーグレン症候群の米国リウマチ学会分類基準等です。

また、治療戦略等もアップデートされ、最新のシェーグレン症候群を理解するには持って来いの本です。

 

2014年度推薦図書
基礎からわかる情報リテラシー:
コンピュータ・インターネットと付き合う基礎知識

奥村晴彦【著】(技術評論社・2014(改訂第2版)<改訂第4版:2020>)

推薦者 宮崎 洋一(数理情報)

今年は、パーソナルコンピュータ(パソコン)が誕生してから40年の節目だそうです。
その間にはハードウェアとソフトウェアは高機能・高性能になり、ネットワーク環境もどんどん進化しています。
特定のアプリケーションの操作方法は、新しいものに置き換われば不要になってしまうことがありますが、コンピュータの基礎知識は長い年月を経ても通用します。
本書は、そのような立場に重点をおいて執筆されており、パワーユーザーにとっても有益な知識が随所に盛り込まれています。
2014年度推薦図書
いかにして問題をとくか・実践活用編

芳沢光雄【著】(丸善出版・2012)

推薦者 宮崎 洋一(数理情報)

虫歯の予防には歯垢削除(しこうさくじょ)が大切なように、数学の問題を解くには、自分の頭でいろいろと考えて試行錯誤(しこうさくご)することが重要です。
考えられる限りのアイディアが出尽くしても問題解決に至らないときは、本書にある13個のアプローチの仕方が役立つかもしれません。
本書は、世界的なロングセラーであるポリヤ著『いかにして問題をとくか』のエッセンスを日常やビジネスでの具体例も織り交ぜながら、わかりやすく解説しています。
2014年度推薦図書
大人のための数学勉強法:どんな問題も解ける10のアプローチ
永野裕之【著】(ダイヤモンド社・2012)

推薦者 宮崎 洋一(数理情報)

本書は、「数学は暗記しようとしては駄目」という立場で、数学が苦手な人が陥りやすい勉強法のどこが悪いかを指摘し、数学の正しい勉強法を説いている。
実際、この方法で著者は自身の経営する社会人対象の数学塾で成果を挙げているので説得力がある。ノートの作り方に関しても、他の教科にも通じるノウハウが語られている。数学を苦手とする人には、勉強法の改善の手がかりになるし、数学を得意とする人には、共感する部分があると思う。
総仕上げとして少し手強い3題の問題が待ち受けている。腕試しに是非挑戦を!
2014年度推薦図書
医学の歴史
梶田昭【著】(講談社・2003)

推薦者 三澤 麻衣子(医療人間科学)

この本を読んでいると、医学の歴史という事実を伝えているにも関わらず、医学の発展に挑んできた人たちの熱意が伝わってくると思います。そして、その理由がこの著者もまた、歴史上の人物と同じ熱意を持って医療の場で仕事をされてきたからだということもわかると思います。医学の道に入ったばかりの1年生や、これから医学の発展を担っていく大学院生にぜひ読んでもらいたいと思います。
2014年度推薦図書
Temperomandibular Disorder (Tmd) and Orthodontics
Amit Prakash 他 【著】(Lambert Academic Publishing・2013

The orthodontic mini-implant clinical handbook
Richard R.J. Cousley 【著】(Wiley Blackwell・2013
Infection Control in Orthodontics
Jose Nidhin Philip 他 著(LAMBERT Academic Publishing・2013

推薦者 清水 典佳(矯正)

推薦する書籍は、現在の歯科矯正臨床に深く関わりを持つ内容を含んでいる。
①顎関節症と矯正治療については、咀嚼筋の病理学的、機能的プロセスから発生する疼痛および機能障害に至るまでを詳細に記載している。
②ミニインプラントのハンドブックは、矯正治療を画期的にした最新の治療として、詳細を理論的に解説し、臨床的情報を幅広く提供している。
③感染管理については、矯正治療に関連した感染症管理として、滅菌と消毒の概念および方法について詳細に記載されている。

2014年度推薦図書
Stem Cells and Bone Tissue

Rajkumar Rajendram 他【編】(Boca Raton : Taylor & Francis・2013)

推薦者 高橋富久(解剖Ⅰ)

ここ数年間で幹細胞を利用した組織・器官再生の技術改革は目を見張るものがあり,特に幹細胞を利用した治療法は骨疾患や骨欠損における新たなプラットフォームとして世界的にも注目されている。本書は幹細胞の性質と骨組織への分化メカニズムに関して,細胞内のシグナル伝達系を中心とした詳しい解説に加えて,幹細胞から骨芽細胞への分化過程において最近注目されているmyostatin(GDF-8),c-Jun,Lnk,cell-devided factor 1/CXCR4のシグナル伝達機構と骨粗鬆症,低フォスファオターゼ症,変形性関節症,大理石骨病など難治性骨疾患に対する幹細胞治療の現状についても紹介されている。

2014年度推薦図書
幹細胞研究と再生医療

中内啓光【著】(南山堂・2013)

推薦者 高橋富久 ​(解剖Ⅰ)

現在のES細胞やiPS細胞を使用した再生医学の研究は,凄まじい早さで進歩している。しかしながら,実際の臨床応用に際しては幹細胞研究で培われてきた多くの研究成果が基礎となっている。本書は幹細胞の性質と分化制御メカニズムに加えて,造血系,免疫系,神経系,網膜,軟骨などの器官形成および再生に向けての取り組みと癌幹細胞と臓器再生など最近注目を浴びているトピックスについてそれらの研究の第一線で活躍されている研究者が紹介している。

2014年度推薦図書
図解 スポーツトレーニングの基礎理論

横浜市スポーツ医科学センター【編】(西東社・2013)

推薦者 佐藤紀子 (健康科学)

大学に入ってスポーツを始める新入生!新学期からチームのトレーニング計画を立てる先輩!選手を支えるマネージャー!クラブには所属しないけれど、健康維持のために運動を始めてみようと思っているあなた!そのトレーニングで大丈夫ですか?!本書は全ページカラー、写真や図がふんだんに使われ、トレーニングについて大変分かりやすく説明しています。トレーニングを正しく理解し、健康の維持・増進やデンタル優勝を目指しましょう!

2014年度推薦図書
障害児者の理解と教育・支援: 特別支援教育/障害者支援のガイド
橋本創一 他
【著】(金子書房・2012)

推薦者 佐藤紀子(健康科学)

街中で障害のある人が困っている様子を見かけ、「どうしよう…声をかけようかな」と迷っているうちに別の人が手助けをした…そんな経験をした人は多いと思います。まずは、障害について知ることが大事です。本書では、障害の概要や支援の方法等が分かりやすく説明されています。図表もたくさん用いられているので、一度手に取ってみてください。

※生きていくうえで社会的な障壁がある人という考え方で、私は漢字の「障害者」を使っています。

2013年度推薦図書
世にも奇妙な人体実験の歴史
トレバーノートン 
【著】(文藝春秋・2012)

推薦者 吉沼直人(保存Ⅲ)

2012年度のノーベル化学賞は「Gタンパク質共役受容体」という薬の作用に関わる細胞膜にあるアンテナの構造を解明したロバート・レコウィッツ教授とブライアン・コビルカ教授らに与えられることが決まりました。アレルギー、高血圧症、心不全など多くの病気がこの受容体とかかわっており、世の中の薬の3割が標的にしているといわれるほど創薬の分野では画期的な発見で、これにより以前は勘をたよりにクスリを作っていたのが、より狙いをつけた新薬開発ができるようになりました。

さて、今回紹介します図書はこのような偉大な業績とは真逆の、歴史の表舞台には登場せず、しかしながら様々な分野で自己を犠牲にして科学の発展に寄与した勇敢な自己実験者(例えばコレラ患者の嘔吐物を飲んだり、カテーテルを史上初めて自らの心臓に通すなど)達の記録です。本書が取り上げている自己実験は多種多様です。様々な感染症や寄生虫症、ビタミン欠乏症など医療関係の実験だけでなく、深海や成層圏、超音速への挑戦など冒険的試みまで網羅されています。

研究レベルで細胞や動物には成功した治療法や薬剤を臨床応用するには最後にはヒトに応用し、その効果を調べなければなりません。現在では臨床治験といい、倫理的にも管理されていますが、これも人体実験の一つであると言えます。

本書はヘルシンキ宣言(1947年6月、ナチスの人体実験の反省より生じたニュルンベルグ綱領を受けて、1964年、フィンランドの首都ヘルシンキにおいて開かれた世界医師会第18回総会で採択された、医学研究者が自らを規制する為に採択された人体実験に対する倫理規範。正式名称は、「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」)が採択される以前の科学者達のアッと驚くような人体実験があふれていますが、このような一見常軌を逸した人たちの自己犠牲の精神が今日の科学の進歩に寄与していることがわかり、とても興味深い内容になっています。

(全部で17章より成っていますが、個人的には第3章の「インチキ薬から夢の新薬」がオススメです。)

 

2013年度推薦図書
理系のための基礎生物学
菊山 宗弘  坂泉 満
【編著】(化学同人・2010)

推薦者 佐藤恵(生物)

正式な用語ではないが、生体から抽出した生理活性物質の作用の研究などは「すりつぶし生物学」と言われる。分子生物学に限らず、現在の生物学はどんどん微視的になっていく。本書の著者はゲノム解析などの業績で学会賞を受賞した研究者であるが、本来はナチュラリストである。個体や個体群、さらには生態系といった大きな空間の中で生物学を理解しようとする姿勢が垣間見える。同じトピックであっても、違う視点から見ると新たな示唆が得られるかも知れない。

2013年度推薦図書
基礎から学ぶ生物学・細胞生物学 第2版
和田 勝
【著】(羊土社・2011<第4版:2020>)

推薦者 佐藤恵(生物)

本書は生物学および細胞生物学の教科書を想定して執筆されたものであるが、基礎的な内容から述べられていること、詳細な図がふんだんに用いられていることから独習にも十分にたえられる。また、学術的知識の羅列にとどまらず、現象の解明に至る歴史的経緯や思想的な背景にも言及されていて、読める教科書といった側面も備えている。関連項目の参照箇所が丁寧に指示されているので事象を総合的に捉えることができ、復習用の2冊目の教科書とするのもよいだろう。

2013年度推薦図書
標準外科学 第13版

畠山勝義 他【編】(医学書院・2013<第16版:2022>)

推薦者 米原啓之(口腔外科Ⅱ)

歯科医療において全身的な状態を把握することが近年非常に重要になってきている。このために本学においても隣接医学の講義において,全身疾患についての理解が深まるように授業を行っている。本書は隣接医学外科学分野についての標準的な教科書であり,膨大な外科知識がコンパクトに解説されている。現在外科学分野において第一人者として活躍している外科医が執筆しており,現在の外科臨床についての内容も充実している。歯科に必要とされる全身疾患を学習する際には,是非本書を参考にしながら学習することをお薦めする。

2013年度推薦図書
イラストでみる口腔外科手術 [1] ~ [4]
日本口腔外科学会【編】(クインテッセンス出版・2010-2015)


推薦者 米原啓之(口腔外科Ⅱ)

手術手技の理解は,教科書の文章による解説では解剖学的な位置関係や手術器材の使用方法などについて具体的なイメージを描くことが難しいことが多い。本書は多数のイラストを用いて実際の手術手技を解説しており,口腔外科を専門とする歯科医師のみならず,関連領域の歯科領域歯科医師にとっても手術内容を理解するために有用な参考書である。また学部学生においても,教科書による記述だけでは理解が難しい場合に,百聞は一見にしかずで,具体的な手術イラストを見ることが内容理解において非常に有効である。手術に興味のある方には是非本書を一度手にとって見ることをお薦めする。

2013年度推薦図書
デンタルカリエス : その病態と臨床マネージメント

Ole Fejerskov・Edwina Kidd 【編】/ 高橋信博・恵比須繁之【監訳】
(医歯薬出版・2013)

推薦者 宮崎真至(保存Ⅰ)

世界的に定評のある「Dental Caries-The Disease and its Clinical Management Second Edition」(本館所有)の完訳版である。

齲蝕研究の歴史からこれにより蓄積されたエビデンスに基づいた齲蝕治療の臨床, さらには保健衛生や社会科学的知見までを網羅している。さらに,齲蝕リスク診断から予防と治療の実際について,臨床症例を提示しながら解説している。

齲蝕の基礎から臨床までを網羅した本書は,学生,教員さらには臨床家必読の書といえる。

 

2013年度推薦図書
進化、生命のたどる道

カール・ジンマー【著】(岩波書店・2012)

推薦者 磯川桂太郎(解剖Ⅱ)

手に取れば「面白そう」と感じること請け合いの本です。
カラフルな図や写真が満載。定評あるサイエンスライターCarl Zimmmerの著作An Introduction to Evolution “The Tangled Bank”の訳本です。
最新の視点でのヒトや脊椎動物の進化はもちろん、進化医学、性、行動や情動、微生物、薬剤などにも言及。
図とその解説を追うとか、どこか1つのトピックスだけという読み方でも有意義かと。私も読みました。

 

2013年度推薦図書
ビブリア古書堂の事件手帖  [1] ~ [4]

三上延 [著](アスキー・メディアワークス・2011-2013)

推薦者 堀米 拓哉(図書館事務課 )

「休日の夕方に読むべき本」

休みの日には、あれをしようこれをしなくちゃならないそしてあそこへ行こう、と計画を立てているにも関わらず、結局心身の疲れを取るのに精一杯で、何もできずに終わってしまいそうな休日になりかけるときがありますよね。

そんなときに、終わってしまいそうな休日の夕方に、諦念の面持で読むのにピッタリの本です。

ベストセラー本で表紙がこんな感じなので、漫画か、あるいは薄ーい感じの娯楽系かと思っていましたが、とても中身の充実した良い本です。文章がいいし、話の流れや情景が心地よいので、物語に身を任せることができます。「本」が人へ作用して、物語を作っていくさまが美しいと思いました。1、2時間で1冊読めます。充実した時を過ごせます。難しく考えることなく物語そのものを楽しむにはうってつけの本です。

図書館事務課の前課長が寄贈してくれた本です(ありがたし)。今、ドラマ化されてテレビでもやっていますが断然文庫のほうがいいです。