推薦図書 by教員

2018年度

2018年度 推薦図書

なぜ人と人は支え合うのか 「障害」から考える

渡辺一史【著】(筑摩書房・2018)

蔵書検索
推薦者 佐藤 紀子 准教授(健康科学分野)

「障害者は,スポーツなんてしなくていいんじゃないですか?」
本学部で授業を担当し始めた年,学生に言われた言葉だ。
障害者は日々の生活をするのでさえ大変なのに,スポーツをするなんて,もっと大変だ,と感じたのだろうか?
人の手を煩わせてまでスポーツをする必要はない,と考えたのだろうか?
私はまだ,その発言の背景にあるものを本人に聞けていない。

皆さんは,「障害」や「障害者」について考えたことがあるだろうか?
そもそも,障害者と健常者のラインはどこにあるのだろうか?
目に見える障害がなくても,社会に適応できない面を抱えている人はたくさんいるだろう。全ての人が適切な支援を受けながら,学業や仕事に従事でき,その人の能力を生かして活躍できる社会を作っていかなくてはならない。
誰もが必要な時に,手を差しのべ合って生きていけるような社会の実現には,何が必要なのだろうか?

なぜ人と人は支え合うのか?「障害」から考えてみませんか?
こんな夜更けにバナナかよ」も,ぜひ!

2018年度 推薦図書

ミッション: 元スターバックスCEOが教える働く理由

岩田松雄【著】(アスコム・2012年)

蔵書検索
推薦者 蓮池聡 助教(歯科保存学Ⅲ)

本書はその題名のとおり「働く理由」について、元スターバックスCEOの岩田松雄が書いた本です。
スターバックスとザ・ボディショップでの実例をあげながら、働くことにおけるミッションの重要性を説いてゆきます。
「ミッションは自分で見出し、考えてこそ価値がある。」
「経験を重ね、成長していく過程でミッションを進化させていけばいい。」
といったメッセージが読者に投げかけられます。

私たち歯科医療従事者は「働く」ということについて深く考えることがないまま、卒業と同時に臨床業務にあたります。働く意義を「最善の治療を患者に提供すること」などと一括りにまとめてしまえば単純です。
しかしながら、人生は長く、様々なことを経験するはずです。患者も自分も家族も同僚も幸せに暮らすには、もう少し「働く意義」を掘り下げてみる必要があるのではないでしょうか。
“自分の存在理由を問い直し、自分なりのミッション・ステートメントを具体化する。”
この本はそのような探求のヒントになると思います。

2018年度 推薦図書

今どきの若いモンは

吉谷光平著(講談社.2018年)

蔵書検索
推薦者 竹内義真 助教(総合歯科学)

この本は漫画ではありますが 社会で生き抜く為のヒントを教えてくれる作品です。
以下の項目のうち1つでも興味を持った人または悩んでいる人にお勧めです。一度ぜひ読んでみてください。

  1. 上司から同僚へのコミュニケーション法
  2. 上司が若者から学ぶ姿勢
  3. 言葉の使い方 (悪い例:「これだからゆとり世代ってやつぁ」)
  4. 上司からの声かけ(部下を育てるのも先輩上司の仕事)
  5. 部下の叱り方(場所や言葉の選び方)
  6. 体調管理とフォロー
  7. 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)
  8. 良い職場の条件は、仲間(人)によるもの
  9. 飲み会とパワハラ、セクハラ
  10. 飲みにケーションで得るもの
  11. 成功体験を得るために(失敗を糧にして前進すること)

2018年度 推薦図書

炭水化物が人類を滅ぼす【最終解答編】 植物vs.ヒトの全人類史

夏井睦【著】(光文社・2017年)

蔵書検索
推薦者 渡辺孝康 助教(基礎自然科学分野:化学)

米、パン、麺類、調味料、菓子、醸造酒など、日頃の食生活から切っても切れない炭水化物が実は人類の健康を害する存在ではないか、というテーマを科学的に説明した一冊。

化学を懸命に勉強している学生さんたちにはまだまだ無縁でも、健康に関する関心は年齢を重ねるにつれて高くなってきます。かく言う私には糖質制限などとてもできる気はしないのですが、本の序盤では化学、中盤では生物学に関する話題が出てきて、最後のほうでは歯科の話題も少し書かれており、多角的に考察されています。

ただ、歯周病原細菌の研究に携わる身からすると、糖質制限で歯周病が発症しなくなるとの主張には首肯しかねるところがあるように、一つ一つの記述がどんな根拠に基づいているのか、批判的に読み進めると理解がより深まると思います。この本の前編にあたる本や、昨年度既にコメント付きで推薦されている同著者の別テーマの本などと読み比べるのもいいかもしれません。

なお、炭水化物が人類を滅ぼすという絶望的な命題とは対象的に、同じ光文社新書の別著者の本によれば、ケトン体が人類を救ってくれるというのがせめてもの救いでしょうか。
◆『ケトン体が人類を救う : 糖質制限でなぜ健康になるのか』も所蔵があります

2018年度 推薦図書

おもしろい ! 進化のふしぎ 続ざんねんないきもの事典
おもしろい ! 進化のふしぎ 続々ざんねんないきもの事典

今泉忠明【監修】下間文恵, 徳永明子, かわむらふゆみ【絵】(高橋書店・2017,2018年)

蔵書検索
推薦者 尾崎愛美 助教(衛生学)

この本は, 動物学者の今泉忠明さんによる動物のちょっと残念な生態を面白可笑しく取り上げています。

皆さん, 一角の角が実は前歯なのはご存知ですか。
私は角だと思っていたのですが, 角ではなく左側前歯が 3m くらい長くのびてしまったものだそうです。しかも, 口を閉じるために, 上唇を突き破っており, なんとも痛そうです。この歯はオス特有のもので, オスは繁殖期になると, 歯を振り上げてメスに求愛します。そしてメスは, どっちの歯が長いかで相手を選ぶそうです。つまり, 一角の世界では, 巨大歯であること, なおかつ出っ歯なほどモテまくるそうです。

この他にも, 「ワニが口を開く力は, おじいちゃんの握力に負ける」, 「カメムシは自分のニオイがキツ過ぎて気絶する」など思わずクスッと笑ってしまう動物の残念な雑学が満載です。

勉強や研究の合間に読むと良い気分転換になると思います。また, 動物園や水族館に行く前に読むとより動物が愛らしく感じられると思います。ぜひ一度手にとってみて下さい。

◆シリーズ第1弾『おもしろい ! 進化のふしぎ ざんねんないきもの事典』も蔵書があります。

2018年度 推薦図書

終戦のローレライ

福井晴敏【著】(講談社・2002)

蔵書検索
推薦者 篠田 雅路 准教授(生理学)

太平洋戦争末期の1945年夏。日本軍は劣勢を極めるも降伏という選択肢を持てず、日本は滅亡の淵に瀕していた。
特殊兵装PsMB-1、通称[ローレライ・システム]を持つ特殊潜水艦「伊507」は、ひとりの男の壮大な陰謀に巻き込まれていくとも知らず、呉軍港を極秘に出港する。
『日本民族の滅亡を回避し、この国にあるべき終戦の形をもたらす』ために。
文章からは凄まじい臨場感や緊迫感が伝わり、あたかも自分も乗組員ではないかと錯覚を覚える。大本営や帝国海軍の主義・主張に対する不条理や矛盾を理解しつつも、諦観の念を持って戦い抜いた男達の姿は敬服せずにはいられない。太平洋戦争で亡くなった英霊たちは、同じ思いをしながらも命を賭して国、家族を守ってくれたんだろう。

架空ミニタリー小説の域を超えて、この時代に亡くなった人々の価値観、そして期せずして生き残った人々の苦悩が見事に描写されています。戦争という題材を通して今後の日本の、世界の在り方について考えさせられる一冊です。

2018年度 推薦図書

わたしを離さないで

カズオ・イシグロ【著】土屋政雄【訳】 (早川書房・2008)

蔵書検索
推薦者 田邉 奈津子 先生(生化学)

このお話は、主人公たちが幼少期に育てられる施設での話と、その後青年になりその施設を出て自立したあとの話の2部で構成されています。

話の中盤でようやくこの小説がSFである事を知るくらい、事実を語っているかのように抑制的かつ客観的な文章です。一方で主人公たちの感情がわかりやすいのは筆者の圧倒的な文章の表現力と構成力によるものだと思われます。

科学の進歩と生命倫理を問う作品で、読んだ後、近い未来に同じことが起こるかもしれないと思って,すこし怖い気持ちになるかもしれません。

科学や医学を学ぶ学生に是非読んでもらいたい名著です。

2018年度 推薦図書

嫌われる勇気 : 自己啓発の源流「アドラー」の教え

岸見一郎, 古賀史健【著】(ダイアモンド社・2013)

蔵書検索
推薦者 石山 美紗 先生(小児歯科学)

この本はアルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を「青年と哲人の対話篇」という物語形式を用いてまとめた1冊です。アドラー心理学は「どうすれば人は幸せに生きることができるか」という哲学的な問いに、きわめてシンプルかつ具体的な「答え」を提示します。

対人関係に悩むことはありませんか?劣等感を感じることはないですか?
この本にはあらゆる悩みを一気に解消する方法が書いてあります。
自らの生について、出来ることは「自分の信じる最善の道を選ぶこと」それだけです。と記しています。

自分の生き方を貫くとは?自分の人生とは?
1冊の本が、ときに心の支えとなり、励みになり人生を大きく変えることもあります。この本を読んで人生を少しシンプルに考えてみてはいかがでしょうか。

2018年度 推薦図書

チーム

堂場瞬一【著】(実業之日本社・2010)

蔵書検索
推薦者 福井 怜 先生(病理)

いろんなドラマが生まれる年始恒例の箱根駅伝。
箱根駅伝出場を逃した大学の中から、予選会を好タイムで走った選手で結成される「学連選抜」。あの“公務員ランナー”川内優輝さんも、かつて、この学連選抜のメンバーとして、箱根駅伝を走りきりました。
学連選抜は本戦校以外から精鋭を集めた最高のチームなのか、それとも本戦校が持つような連帯感のない寄せ集めチームなのか。究極のチームスポーツといわれる駅伝で、学連選抜メンバーは何のために襷を繋ぐのか。

4連覇した青山学院大学など本戦校が注目される昨今、学連選抜チームの選手たちの苦悩や葛藤と激走を描いたスポーツ小説です。
箱根駅伝好きの人に限らず、爽快に読んでもらえるストーリーになっています。クラブや大学、会社など組織の中で生きていく私たちにとって、チームのまとめ方など社会で生き抜くにあたって役立つことが見つかる一冊です。