推薦図書 by教員

2020年度

2020年度 推薦図書

心に響くコミュニケーション ペップトーク

岩崎由純【著】日本ラーニングシステム【監修】(中央経済社・2010)

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推薦者 篠塚 啓二 助教(口腔外科学第Ⅰ講座)

スポーツの試合前に力を引き出すツールとして生まれたスピーチ「ペップトーク(pep 励ます talk 訓話)」は、アメリカでは誰かを励ます・元気づけるために日常的に使われています。そして今、ビジネスにおいての最先端のコミュニケーション術として活用されています。

この本は,コミュニケーションの阻害要因をわかりやすく解説し,ペップトークがビジネスでどのように活用できるかを具体的に述べています。また,自分を元気づける「セルフペップトーク」についても書かれており,モチベーションを高め,目標を達成するのに有効な方法のひとつです。ビジネス分野に留まらず,ネガティブな自分を打開したい方,周りの人とのコミュニケーションに困っている方にも読んでみてほしい一冊です。また,このペップトークは組織の活性化・モチベーションアップにきっと役立ちます。

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この世にたやすい仕事はない

津村記久子【著】(日本経済新聞出版・2015)

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推薦者 角田 由美 技手(1級)(歯科衛生室)

数年前に書店でタイトルにひかれて,この本を手に取りました。仕事に悩んでいる人へ「仕事の意義を感じ取る事」を考えることをアドバイスすることが多いかもしれません。

この本は,いわゆるお仕事小説ですが,そのような堅苦しい内容ではなく,不思議な世界観に誘われ,読み終わった時には爽快な気分になる事をお約束します。

『どんな選択の先にも,はたからは分からない難しさがあり,楽しさがある』作者のメッセージです。

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はははのはなし

加古里子【著】(福音館書店・1972)

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推薦者 市川 裕美 専任教員(歯科技工専門学校)

子供の時に通っていた歯科医院に置いてあった絵本です。
歯科について難しく考えてしまいますが、この絵本を読むと純粋に楽しく読むことが出来ます。
短時間で気分転換になる一冊です。

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人工知能は人間を超えるか : ディープラーニングの先にあるもの

松尾豊【著】(KADOKAWA・2015)

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推薦者 上原 任 専任講師(医療人間学講座)

昨今,AIということばをしばしば耳にします。人工知能(artificialintelligence)の事だとは分かっていても「AIを使ったシステムが開発された」とか,「AI搭載の新製品が発売された」とか,「AIに仕事を奪われる」とか聞くと本当か?と思ってしまいます。

本書の著者は2017年~2019年にNHK(Eテレ)で放送された最新のAIを紹介する番組の解説者・司会者でありながら,第一線のAI研究者でもあり,番組では非常にわかりやすい説明をしていたのが印象的であったので手に取ってみました。
現在は第3次AIブームなのだそうで,第3章までは残念な結果に終わった過去2回のブームの話。第4章からが本領発揮の最新のAI解説が始まる。3回目のブームはコンピューターの性能向上だけで実現したものではなく,計算方法が進化したことによるものらしい。キーワードは、機械学習・ニューラルネットワーク・ディープラーニング・誤差逆伝播あたりだろう。

今のAIが近い将来,何ができるようになるのか(当分は人間にしかできない仕事は何か),もしかしたら「生き残り」がかかっているので,読んでみてはいかがでしょうか。

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異邦人

アルベール・カミュ(新潮文庫.1963)

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推薦者 鈴木 裕介 助教(歯科保存学第Ⅱ講座)

アルベール・カミュはフランスの小説家で,今回紹介する「異邦人」はその代表作です。この作者の特徴は,疫病や戦争,社会を描き,不条理を哲学したと言われます。複雑にも思えるテーマですが,カミュの前職が新聞記者であることの影響か事実を簡潔に述べるのは読みやすく意図されているように思います。

本作では,主人公ムルソーが不条理に対し乗り越えるのではなく留まることの危うさが淡々と描かれています。ムルソーに起こる様々な出来事を「人」の視点でとらえる書きぶりはカミュの他の著書にも共通する,不条理とは人が理性を保っているから対面するものであるといった表現であろうか。

もう何度も読んでいる至極の一冊です。興味ある方は是非手に取ってみてください。
冒頭1行目の有名なセリフから引き込まれる方も多いはず。

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黒い玉

トーマス・オーウェン著(東京創元社出版.2006)

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推薦者 角田 麻里子 助教(病理学講座)

7月に入りましたが、じめじめとした時に蒸し暑い日々が続いています。日本では昔からこの暑い日々を過ごす中,様々な方法を用いて “涼”を得ようとしていました。そのうちの1つが怖い話・怪談話ではないでしょうか。

今回ご紹介するのは,ベルギーの作家であるトーマス・オーウェンの『黒い玉』という幻想短編集です。ベルギーの作家はあまり馴染みがない方も多いかと思いますが,トーマス・オーウェンはベルギー幻想派四天王などと称されている作家です。

この『黒い玉』は,14編からなる短編集であり,どの物語をとっても不気味で陰鬱で不思議な話ばかりです。表題作の黒い玉は、主人公のネッテスハイムと黒い玉とのホテルの一室でやり取りが繰り広げられていきますが,やがて恐ろしい結末へと進んでいきます。

私がこの作家の魅力として感じるところは、物語の「非現実さ」と疑似体験をさせられているかのような表現力だと思います。夏目漱石の『夢十夜』に近いような印象も受けました。また、文庫版の装丁にはオディロン・ルドンの版画も使用されており,物語により一層モノクロで不気味な世界を添えています。 蒸し暑い夜に不思議で不気味な体験をされてみたい方は一読されてはいかがでしょうか。

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俺か、俺以外か。 ローランドという生き方

ROLAND著(KADOKAWA.2019)

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推薦者 古川明彦 助教(口腔外科学第Ⅱ講座)

どんな世界においても業績をあげ、有名になるにはそれなりの信念や行動力が必要です。

この本は考え方ひとつでこんなにストイックになるのかと思わせられるような一冊。
名言の中に深い意味が込められています。

自信がない時、落ち込んだ時、ポジティブにさせるようなヒントがあるはずです。気分転換に読んでモチベーションをあげてみては?!

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華岡青洲の妻

有吉佐和子著(新潮社.1967)

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推薦者 山崎洋介准教授(解剖学第Ⅱ講座)

ひとさまに薦められた本を読むというのが好きでないので、自分から誰かに本を薦めるというのも気がのらない。実のところは、駄文悪文しか書けず、オォこれは面白そうだ、読んでみたい、と思わせるような気の利いた作文が到底出来ないという引け目もあるわけです。しかし、私は人が好いので、お引き受けして、なんとか書いてみたいと思います。

とはいえ、ここ最近読んだ本は、専門学術書、蒐集した展覧会の図録、澁澤龍彦訳のマルキ・ド・サド、古典ギリシア語の入門書など、どうにも推薦しがたいものばかりです。そこで、しばらく前にどこかの古本市でみつけた「華岡青洲の妻」(有吉佐和子著、新潮社)について書こうと思います。当時のベストセラーですから、先輩諸兄は何を今更というかもしれませんが、ヤングな私は、今般初めて読みました。函にかかった帯もきれいに残っていて、状態がよさそうです。手にとって函の中身をみてみると、茶の控えめな光沢あるクロス装、小ぶりで綺麗な本です。表紙には、つい見逃してしまいそうなごく浅いエンボスの題がある、品のある装丁です。奥付をみてみると、昭和42年刊の初版第2刷とある。2百円というベリーナイスなプライスタグをみるや、脊髄反射的に手中に収め、その他見繕った紙魚が湧きそうな本とともにレジへ運びます。当然、しばらくは積読だけだったのですが、あるとき、バス移動のおでかけのお供として白羽の矢がたち、金属活字でシャープに刷られた本文に、ひさびさに新鮮な空気が接触しました。

乳癌の手術を通仙散による全身麻酔下で行うという偉業を成し遂げた青州の医術の話、ではなく、題名からも分かる通り、それに献身した妻と母のストーリーです。美談や清純な話は虫が好かないけれども、冒頭のピュアな感覚をもった展開は、紀州弁のセリフと相まって、情景を掻き立てられ、意に反して惹き込まれてしまいます。途中から、嫁姑の争いだと気づいて、たびたび映画や舞台の題材となるわけに納得しました。我が家の嫁姑関係は、平穏無事に見えますが、やはり内心はどうであるかは知りえません。くわばらくわばら。この両者の関係は、時代に関わらず、難しいものであるのでしょう。淋病患者の膿を自らに接種して実験したジョン・ハンターや、ピロリ菌を自ら飲み込んだバリー・マーシャルのような気迫の医学発見譚に通じるところあり、エンターテイメントとしてもおすすめできる1冊です。歯学部図書館のOPAC検索結果によれば、文庫版第69刷(新潮文庫、2010)というのが所蔵されているようです。なんだか気に入って、市川雷蔵主演の映画のDVDまで手に入れましたが、幼子をまじえた家族団欒での視聴に最適な映画に非ず、まだ観れずに居るところです。