推薦図書 by教員

2013年度

2013年度 推薦図書

世にも奇妙な人体実験の歴史

トレバーノートン 【著】(文藝春秋・2012)

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推薦者 吉沼直人(保存Ⅲ)

2012年度のノーベル化学賞は「Gタンパク質共役受容体」という薬の作用に関わる細胞膜にあるアンテナの構造を解明したロバート・レコウィッツ教授とブライアン・コビルカ教授らに与えられることが決まりました。アレルギー、高血圧症、心不全など多くの病気がこの受容体とかかわっており、世の中の薬の3割が標的にしているといわれるほど創薬の分野では画期的な発見で、これにより以前は勘をたよりにクスリを作っていたのが、より狙いをつけた新薬開発ができるようになりました。

さて、今回紹介します図書はこのような偉大な業績とは真逆の、歴史の表舞台には登場せず、しかしながら様々な分野で自己を犠牲にして科学の発展に寄与した勇敢な自己実験者(例えばコレラ患者の嘔吐物を飲んだり、カテーテルを史上初めて自らの心臓に通すなど)達の記録です。本書が取り上げている自己実験は多種多様です。様々な感染症や寄生虫症、ビタミン欠乏症など医療関係の実験だけでなく、深海や成層圏、超音速への挑戦など冒険的試みまで網羅されています。

研究レベルで細胞や動物には成功した治療法や薬剤を臨床応用するには最後にはヒトに応用し、その効果を調べなければなりません。現在では臨床治験といい、倫理的にも管理されていますが、これも人体実験の一つであると言えます。

本書はヘルシンキ宣言(1947年6月、ナチスの人体実験の反省より生じたニュルンベルグ綱領を受けて、1964年、フィンランドの首都ヘルシンキにおいて開かれた世界医師会第18回総会で採択された、医学研究者が自らを規制する為に採択された人体実験に対する倫理規範。正式名称は、「ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則」)が採択される以前の科学者達のアッと驚くような人体実験があふれていますが、このような一見常軌を逸した人たちの自己犠牲の精神が今日の科学の進歩に寄与していることがわかり、とても興味深い内容になっています。

(全部で17章より成っていますが、個人的には第3章の「インチキ薬から夢の新薬」がオススメです。)

2013年度 推薦図書

理系のための基礎生物学

菊山 宗弘  坂泉 満【編著】(化学同人・2010)

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推薦者 佐藤恵(生物)

正式な用語ではないが、生体から抽出した生理活性物質の作用の研究などは「すりつぶし生物学」と言われる。分子生物学に限らず、現在の生物学はどんどん微視的になっていく。本書の著者はゲノム解析などの業績で学会賞を受賞した研究者であるが、本来はナチュラリストである。個体や個体群、さらには生態系といった大きな空間の中で生物学を理解しようとする姿勢が垣間見える。同じトピックであっても、違う視点から見ると新たな示唆が得られるかも知れない。

2013年度 推薦図書

基礎から学ぶ生物学・細胞生物学 第2版

和田 勝【著】(羊土社・2011<第4版:2020>)

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推薦者 佐藤恵(生物)

本書は生物学および細胞生物学の教科書を想定して執筆されたものであるが、基礎的な内容から述べられていること、詳細な図がふんだんに用いられていることから独習にも十分にたえられる。また、学術的知識の羅列にとどまらず、現象の解明に至る歴史的経緯や思想的な背景にも言及されていて、読める教科書といった側面も備えている。関連項目の参照箇所が丁寧に指示されているので事象を総合的に捉えることができ、復習用の2冊目の教科書とするのもよいだろう。

2013年度 推薦図書

標準外科学 第13版

畠山勝義 他【編】(医学書院・2013<第16版:2022>)

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推薦者 米原啓之(口腔外科Ⅱ)

歯科医療において全身的な状態を把握することが近年非常に重要になってきている。このために本学においても隣接医学の講義において,全身疾患についての理解が深まるように授業を行っている。本書は隣接医学外科学分野についての標準的な教科書であり,膨大な外科知識がコンパクトに解説されている。現在外科学分野において第一人者として活躍している外科医が執筆しており,現在の外科臨床についての内容も充実している。歯科に必要とされる全身疾患を学習する際には,是非本書を参考にしながら学習することをお薦めする。

2013年度 推薦図書

イラストでみる口腔外科手術 [1] ~ [4]

日本口腔外科学会【編】(クインテッセンス出版・2010-2015)

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推薦者 米原啓之(口腔外科Ⅱ)

手術手技の理解は,教科書の文章による解説では解剖学的な位置関係や手術器材の使用方法などについて具体的なイメージを描くことが難しいことが多い。本書は多数のイラストを用いて実際の手術手技を解説しており,口腔外科を専門とする歯科医師のみならず,関連領域の歯科領域歯科医師にとっても手術内容を理解するために有用な参考書である。また学部学生においても,教科書による記述だけでは理解が難しい場合に,百聞は一見にしかずで,具体的な手術イラストを見ることが内容理解において非常に有効である。手術に興味のある方には是非本書を一度手にとって見ることをお薦めする。

2013年度 推薦図書

デンタルカリエス : その病態と臨床マネージメント

Ole Fejerskov・Edwina Kidd 【編】/ 高橋信博・恵比須繁之【監訳】 (医歯薬出版・2013)

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推薦者 宮崎真至(保存Ⅰ)

世界的に定評のある「Dental Caries-The Disease and its Clinical Management Second Edition」(本館所有)の完訳版である。

齲蝕研究の歴史からこれにより蓄積されたエビデンスに基づいた齲蝕治療の臨床, さらには保健衛生や社会科学的知見までを網羅している。さらに,齲蝕リスク診断から予防と治療の実際について,臨床症例を提示しながら解説している。

齲蝕の基礎から臨床までを網羅した本書は,学生,教員さらには臨床家必読の書といえる。

2013年度 推薦図書

進化、生命のたどる道

カール・ジンマー【著】(岩波書店・2012)

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推薦者 磯川桂太郎(解剖Ⅱ)

手に取れば「面白そう」と感じること請け合いの本です。
カラフルな図や写真が満載。定評あるサイエンスライターCarl Zimmmerの著作An Introduction to Evolution “The Tangled Bank”の訳本です。
最新の視点でのヒトや脊椎動物の進化はもちろん、進化医学、性、行動や情動、微生物、薬剤などにも言及。
図とその解説を追うとか、どこか1つのトピックスだけという読み方でも有意義かと。私も読みました。

2013年度 推薦図書

ビブリア古書堂の事件手帖
[1] ~ [4]

三上延 [著](アスキー・メディアワークス・2011-2013)

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推薦者 堀米 拓哉(図書館事務課 )

「休日の夕方に読むべき本」

休みの日には、あれをしようこれをしなくちゃならないそしてあそこへ行こう、と計画を立てているにも関わらず、結局心身の疲れを取るのに精一杯で、何もできずに終わってしまいそうな休日になりかけるときがありますよね。

そんなときに、終わってしまいそうな休日の夕方に、諦念の面持で読むのにピッタリの本です。

ベストセラー本で表紙がこんな感じなので、漫画か、あるいは薄ーい感じの娯楽系かと思っていましたが、とても中身の充実した良い本です。文章がいいし、話の流れや情景が心地よいので、物語に身を任せることができます。「本」が人へ作用して、物語を作っていくさまが美しいと思いました。1、2時間で1冊読めます。充実した時を過ごせます。難しく考えることなく物語そのものを楽しむにはうってつけの本です。

図書館事務課の前課長が寄贈してくれた本です(ありがたし)。今、ドラマ化されてテレビでもやっていますが断然文庫のほうがいいです。