推薦図書 by教員

2021年度

2021年度 推薦図書

認知症世界の歩き方 : 認知症のある人の頭の中をのぞいてみたら?

筧祐介【著】(ライツ社・2021)

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推薦者 本田 順一 助教(歯科補綴学第Ⅲ講座)

認知症は,脳の病気や障害など様々な原因により,認知機能が低下し,日常生活全般に支障が出てくる状態をいいます。高齢社会の日本においては,2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予想され,自分自身や身近な人が発症するかもしれない病です。この本は,「病」を見て,「症状」に対処する医学的知識を得るのではなく,「人」を見て認知症を知ることに着目して作られています。新しいアプローチで作られた本を,ぜひ,手に取って読んでみてください。

2021年度 推薦図書

「第二の不可能」を追え! :理論物理学者,ありえない物質を求めてカムチャツカへ

ポール・J・スタインハート 【著】 斉藤隆央【訳】(みすず書房・2020)

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推薦者 鈴木 秀則 助教(基礎自然科学分野(物理学))

理論物理学者である著者ポール・スタインハートが主人公の,準結晶という200年来の結晶学の常識を破る「ありえない」物質をめぐるノンフィクション。難しそうに感じるかもしれないが,物理学が苦手な方でもきっと楽しめるだろう。なぜならメインは物理学の話ではないから。《はじめに》から引用すれば,“ほぼ30年に及ぶ「探偵物語」”である。

タイトルとなっている「第二の不可能(the second kind of impossible)」は,著者の師であるリチャード・ファインマンが発する言葉「ありえない!(impossible!)」に相当する。この「ありえない」は1+1=3や永久機関を作るというような全く論外で不可能という意味ではなく、“おお! ふつうは正しいとは思えない意外なことだ。よく知る価値があるぞ!”という意味で,最大級の賛辞なのだ。

物語は「ありえない」物質に導かれ,ひとつの鉱物サンプルの正体を探る推理小説のような展開を経て,カムチャツカの原野を舞台とする冒険譚へと至る。歴史的な発見がなされるまでの紆余曲折を,カムチャツカでカラシニコフを撃って命中させた理論物理学者が綴った,本当に「ありえない」一冊。

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少女地獄

夢野久作 【著】 (角川文庫・1976 発表は1936年)

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推薦者 小林 理美 助手(基礎自然科学分野(生物学))

“読んだら気が狂う”。その文言に惹かれて手に取った本『ドグラ・マグラ』。何度チャレンジしても読み終えられためしがなく(なんなら下巻にすらいかない),私はいまだに正気のままだ。

『ドグラ・マグラ』の作者,夢野久作はクセの強い作家らしいということだけは分かったので,まずは作者に慣れようと,夢野久作の中でも読みやすそうな作品を探した。そこで選んだのが同書『少女地獄』だ。

『少女地獄』は 3 つの短編小説「何んでも無い」「殺人リレー」「火星の女」からなる短編集。それぞれの物語は独立していて,短いのでスピード感を持って読むことができる。どの物語でも共通して女性が死ぬことがテーマになっており,それぞれの女性が何を想って死んだのか、そこを中心に物語が展開されていく。
女性の美醜が詰め込まれた不思議な魅力のある本である。読み終わったら, 時間を置いて,是非また読んで頂きたい。一度目は気が付かなかったことが見えてくるかもしれない。

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鷲は舞い降りた

ジャック・ヒギンズ【著】 菊池光【訳】( 早川書房・1997 )

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推薦者 石井 亮 助教(歯科保存学第I講座)

第二次世界大戦終戦間際。1943 年頃。ヒトラーの密命をおびて、ドイツ軍落下傘部隊による英国本土でのチャーチル誘拐,という暴挙とも言える作戦が計画される。歴戦の勇士シュタイナ中佐率いるドイツ落下傘部隊の精鋭はイギリス兵になりすまし着々と計画を進行させていくが…

作者ジャック・ヒギンズが,関係者の口述・資料を元に書き起こした作品です。しかし、皆さんご存知のように史実にチャーチル誘拐の事実はありません。実際にこのような計画があったのか否か。どこまでが史実で、どこからがフィクションなのか。この作品を通して、そんな思いを巡らせてみてください。

抗いきれない立場であろうとも、自分の意思に信念を持って行動することこそが
人間の最も優れた価値であることを教えてくれる1冊です。