推薦図書 by教員

2019年度

2019年度 推薦図書

天国でまた会おう 上・下

ピエール・ルメートル著(早川書房.2015)

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推薦者 藤原 恭子 准教授(解剖学第Ⅰ講座)

この小説は第一次大戦後のフランスを舞台にしたお話です。終戦直前の戦場で,兵士のアルベールは上官プラデルが自身の利益のために味方の兵士を殺したことに気付きます。口封じのため上官に生き埋めにされかけたアルベールは仲間の兵士エドゥアールに救出されますが,この時エドゥアールは下顎部が吹き飛ぶような大怪我を負ってしまいました。

プラデルの魔の手から逃れて復員し,パリで暮らし始めた二人ですが生活は困窮し,やがて二人はエドゥアールの画才を利用した大掛かりな詐欺を企てます。一方,戦中卑怯だったプラデルは戦後もやはり卑怯者で,戦没者埋葬事業を請け負う会社を設立したものの,不正の限りをつくして富を築いていきます。この二つの物語が絡み合い,手に汗握る展開を繰り広げますが,プラデルには因果応報な最期が待っていますので安心してください。

このお話の魅力は,これらの主人公達の物語に加え,脇役達の人物像や心情が生き生きと描かれていることです。登場人物一人一人に作者の深い愛情を感じ,クスリと笑いたくなる描写も沢山あります。特に,作者の思い入れを強く感じるのが,プラデルの不正を暴くのに大きな役割を果たす役人のメルランです。有能だけど無愛想で常に不機嫌な初老の男メルランは,あらゆる部署をたらい回しにされており,昇進とは無縁,いつも薄汚れた服を着ていて,それになんか臭い。

そんな全然魅力のない人物造形のメルランは,戦後の世の中の混乱には無関心で日々淡々と仕事をこなしていますが,埋葬事業の現場のあまりの惨状に衝撃を受け,急に芽生えた正義感からプラデルの悪事を冷徹に追求しはじめるのでした。でも変人なだけあって,その追求の様子も個性的で,プラデルに大金で買収されたかと思ったら妙に分厚い報告書を政府に提出していて,なんとその報告書には買収で受け取った紙幣が一枚一枚全て貼られていたり。

このメルランの姿には,作者が根底に持つ人間の良心というものへの信頼が感じられて,それが読後感の良さの源となっているように思います。比較的馴染みの少ない時代背景のお話ではありますが,これらの個性豊かな登場人物達に牽引されて進んでいく本作品は一気読み確実ですので,興味がありましたら是非手に取ってみてください。

2019年度 推薦図書

どこでも誰とでも働ける
―12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール

尾原 和啓著(ダイヤモンド社.2018)

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推薦者 瀧本正行 助教(歯科保存学第Ⅰ講座)

12回の転職をした著者が、自分の人材価値を上げるポイントを解説したものです。どこでも誰とでも働けるようになるためには、馴染めないことを言い訳にしてはならない!!相手に直接的な見返りを求めず、ギブ&テイクではなくどんどん自分の知識や経験をギブする!!それがコツだと著者は述べています。

多種多様な人と上手に接していくことが求められるこの世界では重要なことではないでしょうか?仕事に対して前向きな姿勢になれる1冊だと思います。

2019年度 推薦図書

炭素はすごい なぜ炭素は「元素の王様」といわれるのか

斎藤勝裕著(サイエンス・アイ新書.2019)

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推薦者 平場 晴斗 助教(歯科補綴学第Ⅲ講座)

この本は,様々な分野における炭素について,その歴史などを踏まえて化学的な内容をわかりやすく紹介しています。
炭素(C)を含むものと聞いて何が思い浮かぶでしょうか。
ダイヤモンドや鉛筆の芯だけではありません。
様々な元素との組み合わせでその種類は多岐にわたります。
ノーベル賞の賞金の原資となったダイナマイトや,解熱鎮痛剤のアスピリン,
覚せい剤や毒物などもそうです。
日常的に摂取するカフェインやアルコール,調味料,家具や小物などに使われるプラスチック,衣類に使われるナイロンは人類が作るまでこの世に無かったものです。
もちろん私たちが使う歯科材料のほとんどがそうです。
私たちは,思っている以上に炭素に囲まれた生活をしています。
雑学を知る感覚で,化学に触れる機会になる1冊だと思います。

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路傍の石

山本 有三 著(偕成社. 2002)

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推薦者 岡田 明子 准教授(口腔診断学)

「路傍の石」は私の大好きな本の一つで,小学生の時に何回も何回も読んだ覚えがあります。主人公の吾一は,学年で首位の成績で皆が憧れるリーダー的存在でしたが,家計が貧しいために街一番の呉服商に奉公に出されます。

その呉服商は,劣等生で一番臆病者であった吾一の友人の親が営んでおり,その友人に見下される,辛い奉公生活が始まります。吾一は勉強がしたくても学校に行けず,友人はお金の力だけで学校に行きますが,勉強が嫌いなので全く勉強しません。その頃の私は「学校に行けるだけでも恵まれているんだ」と思った覚えがあります。吾一はその状況にもめげず自力で勉強を続けますが,頼りの母がなくなり上京します。

そこでも様々な苦労をしながらも周囲の大人に支えられ,夢を捨てずに前向きに人生を歩んでいき,自ら出版事業をおこすたくましい青年に成長します。東京での生活が行き詰ったときに「人間はな,人生というトイシで,ごしごしこすられなくちゃ,光るようにはならないんだ」と励まされます。

このお話には,疲れた生活を励ましてくれるような金言が多く含まれています。
もしまだ読んだことのない方がおられましたら,是非是非,お時間のある時に読んでいただきたい小説です。

実はこの「路傍の石」は昭和12年に新聞小説として連載を開始されましたが,検閲により内容の変更を迫られ,作者の山本有三は信念を曲げることを断固として拒み,連載の中止を選んだので未完のままです。その信念が伝わるのか,多くの人に愛され,戦後,何度も映画化された名作とされています。

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マンガで分かる心療内科シリーズ

ゆうきゆう【著】(少年画報社・2010)

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推薦者 佐藤 光保 助教(摂食機能療法学)

①マンガで分かる心療内科 1
②マンガで分かる心療内科 アドラー心理学編
③マンガで分かる心療内科 依存症編

①マンガで分かる心療内科 1
心療内科ってどんな科?うつってどんな病気?などがゆるーく学べるギャグ多めの漫画です。アニメ化もされています。

②マンガで分かる心療内科 アドラー心理学編
アドラー先生いわく「トラウマなんて存在しない!」。
トラウマの原因(過去の嫌な出来事など)を考えても大して意味はありません。
それよりも大切なのは「これからどうするか」、すなわち進む方向であり「目的」なのです。
「どうして上手くいかないのか」ではなく「どうしたら上手くいくのか」と考え方を変えてみましょう。大切なのは本当にやりたい「目的」を見つめ直すことなのです。
嫌なことがあった人はぜひ読んでみてください。

③マンガで分かる心療内科 依存症編
知っていますか?同じ勉強時間の学生でも、それ以外に通信アプリを使う時間が増えると成績が下がるという研究があることを。
ネットやゲームなどをしている時は前頭前野への血流が下がり1時間は麻痺したような状態になるそうです。
その繰り返しにより脳が疲労してしまいます。
じゃあ、どうすればいいの!?この漫画を読んで解決策を勉強しましょう。

2019年度 推薦図書

仕事が早く終わる人、いつまでも終わらない人の習慣

吉田幸弘【著】(あさ出版・2019)

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推薦者 西尾 健介 助教(補綴 Ⅰ)

普段、無駄なことをしていませんか?
やりたいことがあっても時間がないと思うことはありませんか?

この本を読むことは、自分の取り組みについて見直せるいい機会になります。
是非ご一読ください。

2019年度 推薦図書

高校生のための批評入門

梅田卓夫ほか【編】(筑摩書房・2012)

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推薦者 村山 良介 助教(法医学)

僕はこの本の帯が好きで、グッとくる。
どんな人間にも批評の精神はある。批評を「する」のではなく、それは確かに「在る」。孤高を保ち、低い声で内面を語る51編のアンソロジー。
これだけでももうお腹いっぱいなのだが、さらに、内容はとんでもない。
大名著51編の一節が、心に突き刺さる。
涙で脱水症になってしまうから、高校生くらい体力のある年代に勧めないと危ないのだろう。
冒頭に「この本をつかう人みなさんへ」とあり、つまりこれは読み物ではないのだ。
この衝撃を、ぜひ大学生の感受性を以って。

2019年度 推薦図書

学びを結果に変えるアウトプット大全

樺沢紫苑【著】(サンクチュアリ出版・2018年)

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推薦者 雨宮俊彦 助教(歯科麻酔学)

勉強しているのに成績が伸び悩んでいる学生へ贈る
「学びを結果に変える アウトプット大全」
やり方が変わればあなたは変わる
考え方が変わればあなたは変わる
一度、読んでみてください。

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苦しかったときの話をしようか
ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」

森岡毅【著】(ダイヤモンド社・2019)

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推薦者 中谷 有香 助教(薬理学)

この本はUSJを再建した森岡毅氏が就活に悩む娘に向けて書いたメッセージだそうです。
伝えたいことが山ほどあるのに、つい熱くなってしまいケンカのようになってしまう…、そんなループをなんとかする為に書き貯めた娘への手紙が編集者の目に留まり出版されました。
前半のキャリア構築の戦略的なノウハウから一転、後半にある本のタイトルとなっている「苦しかったときの話をしようか」という章では,筆者が今までのキャリアで苦しかった時期のエピソードが包み隠さず描かれています。
一見華やかなキャリアを選んでいる筆者にも、その裏には人間味溢れる職場での苦労があり、時に心が折れそうになりながらも自分を信じて奮闘する姿が描かれています。
読み終わった後には、自分のキャリアについて考えると同時に失敗を恐れずに「挑戦」することに感化される一冊です。