推薦図書 by教員

2017年度

2017年度 推薦図書

名著講義

藤原正彦【著】(文藝春秋・2009年)

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推薦者 辻本 暁正 先生(保存Ⅰ)

本書は、数学者の藤原正彦教授がお茶の水女子大学で十数年にわたり行っていた 「読書ゼミ」の内容である。編集者が録音して講義記録として一冊の本にまとめた。
この「読書ゼミ」の講義内容は、毎週藤原教授が指定した一冊の文庫を学生が読み、翌週にレポートを提出、そして授業に臨んでディスカッションを行うというものである。
学生が読書をしてディスカッションを行うというだけでも本についての理解が深まるが、そこに藤原教授が質問をすることで、学生の考えがより深まる。

藤原教授と学生とのやり取りを中心に、それぞれの授業で取り上げられた本について様々な考え方が述べられており,自分の学生の時にこのような授業はあればと、とてもうらやましくも感じた。

以下の11冊がこのゼミで取り上げられた作品で、明治から昭和前期までに書かれた「名著」である。
・新渡戸稲造 「武士道」 (歯学部所蔵あり)
・内村鑑三 「余は如何にして基督教徒となりし乎」
・福沢諭吉 「学問のすゝめ」(青空文庫http://www.aozora.gr.jp/cards/000296/card47061.html
・日本戦没学生記念会編 「きけ わだつみのこえ」
・渡辺京二 「逝きし世の面影」
・山川菊英 「武家の女性」
・内村鑑三 「代表的日本人」
・無着成恭 「山びこ学校」
・宮本常一 「忘れられた日本人」 (電子ブックで読めます)
・キャサリンサンソム 「東京に暮らす」
・福沢諭吉 「福翁自伝」 (歯学部所蔵あり/青空文庫http://www.aozora.gr.jp/cards/000296/card1864.html

本書の中で藤原正彦という人物を通して,11冊の「名著」と出会い,これらの書かれた背景を理解した読書のすゝめとなればと思う。

2017年度 推薦図書

君たちはどう生きるか

吉野源三郎【著】(マガジンハウス・2017)

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推薦者 横瀬 勝美 先生(化学)

日々是好日
毎日、楽しいことがないかなぁ?
いいことがないかなぁ?なんて思って日々を送っていませんか?
悩んだりイライラしたりしている自分にほんの少しだけ心が安らぐ瞬間が訪れるかもしれません。

君たちはどう生きるか
1930年代に書かれた本です。漫画ではみなさんが知っていますが、、、、。
主人公である中学生の「コペル君」が様々なエピソードから感じた事と、彼の「叔父さん」が発する、思春期の少年に刺激を与える問いかけが、とても清々しさに溢れている。

広い年代で感じ方は違うと思いますが、いたわる心、過ちを悔やむ心、時代が変わっても、不変のメッセージがちりばめられている。
日々の勉強がどう世の中の役に立っているのか、自分で考え抜くことの大切さといった、学問に対する姿勢についても、気づきを起こさせてくれることでしょう。

2017年度 推薦図書

動物翻訳家 : 心の声をキャッチする、飼育員のリアルストーリー

片野ゆか【著】(集英社・2015)

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推薦者 佐藤 恵 先生(生物学)

映画のメイキングやドラマのNG集など,物事の出来上がる様子や舞台裏を知りたい人は少なくないと思います。この「動物翻訳家」は,動物の声をヒト語として翻訳する(?)動物園飼育員の話であるとともに,動物の飼育展示の作り方でもあります。

展示の構想,意見の調整,予算折衝など内部での働きかけのほかに,種の保存,希少動物の保護保全,動物の福祉などクリアしなければならない条件は山ほどあります。もちろん,来園者や市民の要望も満たさねばなりません。
その過程が,登場する飼育者だけでなく動物園内外の専門家にもきちんと取材されたうえで書かれています。情景の描写も生き生きとしていて,とても映像的でドキュメンタリーフィルムを見ている錯覚にとらわれます。

この本を読んだ後で動物園を訪れてください。きっと今まで見えていなかったものが見えてこれまでより楽しめると思います。

2017年度 推薦図書

ジョコビッチの生まれ変わる食事 : あなたの人生を激変させる14日間プログラム

ノバク・ジョコビッチ【著】 タカ大丸【訳】( 三五館・2015)

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推薦者 髙山忠裕(保存Ⅲ)

現在の男子テニス界を牽引しているプレーヤー「ノバク・ジョコビッチ」。

彼は,情勢不安定なセルビア出身である。実家はピザ屋であり,幼少期から母親の作るピザが好物であった。そんな彼が「グルテン不耐症」と診断され,自身の食事を見直すこととなる。
それ以降,今までテニスの戦績がいまひとつであり,試合中も集中力が持続しない状態から一変し,グランドスラムを幾度と制覇する世界のトッププレーヤーに上り詰め活躍するに至っている。

また,「オープンマインド」すなわち,外部からの情報や他人の意見に耳を傾けることができる心のゆとりが大切であると語っている。
私たちの食生活を見つめ直すきっかけになるだけでなく,もしかするとあなたの人生を大きく好転させる一冊になるかもしれません。

2017年度 推薦図書

傷はぜったい消毒するな : 生態系としての皮膚の科学

夏井睦【著】 (光文社・2009)

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推薦者 大橋晶子(解剖Ⅰ)

傷は先ずは消毒する。というこれまでの常識を覆す内容です。

なぜ消毒してはいけないのか?なぜ「湿潤療法」がよいのか?が,皮膚の構造とその働きから論理的に説明されています。また,著者が形成外科医であることから,「湿潤療法」が実臨床においてなかなか普及しない原因なども検証しています。

かさぶたを作らせない絆創膏を使うと「傷跡が残らず早く治る」という実感が皆さんにもあると思いますが,この本を読むとその理由がよく分かります。

私も本書を読んで以降は,生活の中での創傷・熱傷は湿潤療法としています。本書は実生活で役に立つだけでなく,皮膚という最も身近な臓器の驚くべき能力について改めて考えさせる一冊です。

2017年度 推薦図書

人体失敗の進化史

遠藤秀紀【著】 (2006・光文社)

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推薦者 大橋昌子(解剖Ⅰ)

本書は,動物解剖学者が様々な動物の遺体を解剖し,それらを形態学的に比較しながらヒトの進化の過程を捉えたものです。ナメクジウオからヒトへの進化の歴史,形態学的な変遷が私たちの身体に刻まれていることが興味深く語られています。

これまでと違った角度から解剖学に触れられるので,解剖学が苦手な人にも得意な人にも是非読んでいただきたい一冊です。

2017年度 推薦図書

Life Shift (ライフシフト) : 100年時代の人生戦略

リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット【著】 池村千秋【訳】(2016・東京経済新報社)

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推薦者 関啓介(総合診療科)

人生100年!教育→勤労→引退の時代は終わりゆく

長寿社会のトップランナーである日本では、近い将来100歳以上の人口は6万1千人を越すと言われている。私が子供の頃と比べ、現在は100歳以上のお年寄りの存在は珍しくない。
2007年生まれ、すなわち現在10歳の約半数は107歳まで生きるであろうという衝撃的なデータがある。これも高齢化のメカニズムが検証されるにつれ、納得のいく分析であることに気づく。

われわれは今まさに100年の人生を意識した社会に生きている。本書は従来のライフパターンからの脱却がテーマとなっている。

教育→勤労→引退という人生の3ステージを考えると、100年人生時代においては、引退以降の時間が長くなる。この時期を幸せに過ごすためには様々な意識の変革が必要である。
必ずしも学生=20代ではない。50代や60代でも学生として新しいことを学ぶチャンスはある。

本書の「エクスプローラー(探検者)」、「インディペンデント・プロデューサー(独立生産者)」、「ポートフォリオ・ワーカー」という様々なステージを経験するマルチステージの人生というとらえ方も興味深い。
長く生産的な人生を送るには、経済的な資産に加え、家族や友人、健康といった無形資産の形成も重要視されている。終身雇用制度がまだ根強い日本社会では、このようなライフ・シフトという考え方を実践に移すにはハードルが高いかもしれない。しかし今私たち歯科医師なりのライフ・シフトを模索して、今後の人生を点検してみよう。

2017年度 推薦図書

みんな大好きな食品添加物

安部司【著】(2005・東洋経済新報社)

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推薦者 宮嵜洋一(数理情報学)

ふだん何気なく口にする食品  その製造過程の真実(!)

書店に行っても、自分の狭い読書傾向では立ち寄るコーナーが限られている。その点、図書館は本来の目的で探しに行った分野以外の本でも、目にとまることがある。そこが、図書館のいいところでもある。この本は、山奥にある田舎の図書館でふと目にとまった本だ。

著者は元々、食品業者へ食品添加物を勧めていたセールスマンであった。ダメになった食材も著者の手にかかれば、あっという間に見た目もおいしそうな食品へと変身してしまう。しかも、安上がりとくれば、食品業者が食の安全よりも著者の手法になびくのも仕方がない。利益優先で食品添加物のセールスに邁進していた著者に、転機となる大事件が起こる。題して、ミートボール事件。本書の最大の山場でもあり、大いに笑える。この事件の後、著者は全く反対の立場の活動家となり、食品添加物の有害性について世の中に訴えるようになった。

推薦者は本書を読んだ後、食品の添加物表示を注意深く読むようになったし、出されたお弁当でも、食べ残すようになったおかずがいくつかある。本書を推薦するに当たって、amazonで調べたところレビューが300件を超えており、大反響の本であることがわかる。本書を所蔵していた田舎の図書館の選定眼に驚くばかりである。

2017年度 推薦図書

科学的に元気になる方法集めました

堀田秀吾【著】(2017・文響社)

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推薦者 小泉寛恭(歯科補綴学Ⅲ)

「元気ですか?」の問いかけに,

元気ですと返せる人は何人いるでしょうか?
そんなにはいないと,私見ですが思います。 

我々歯学部の教職員および学生は,さまざまなストレス過多の状態にあります。今回,歯学部の皆様の生産性,幸福度を向上するために,この本を推薦いたします。
この本は,科学的根拠(エビデンス)に基づいた元気になる方法,全38項目を挙げております。全部読まなくても,いまの自分にあった項目を読んで参考にすればよろしいかと思います。わたくしの好きな項目は,「やけ酒をしてはいけない」,「威張ってはいけない!」,「香りでストレスを減少させる」の3つです。

読後,ストレスが減少し,パフォーマンスが向上していることを祈ります。

2017年度 推薦図書

自閉症の僕が跳びはねる理由

東田直樹【著】(エスコアール出版部・2007)

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推薦者 佐藤紀子(健康科学)

他者を知ろう  /  多様性について考えよう 

社会にはいろいろな人がいます。赤ちゃん、子どもから高齢者。男性、女性、そのどちらでもない人。障害のある人、ない人…。

普段の学生生活だけでは、多様性を認識する機会が少ないかもしれません。

しかしながら、本学部を卒業し歯科医師となった時に、皆さんは多様な人々の個々のニーズに配慮していくことが必要となります。

そのようなことを踏まえると、学生の皆さんには専門分野の学修にとどまらず、幅広い知識を学び、他者について考えてみてほしいと思います。

歯学部図書館には、障害や障害のある人への配慮について学べる書籍が揃っています。ぜひ一度手に取ってみてください。様々な立場や価値観があることに気付くことで、皆さんの人生もきっと豊かになるはずです。

まずは、東田直樹さんの「自閉症の僕が跳びはねる理由~会話のできない中学生がつづる内なる心~」を読んでみてはいかがでしょうか。