歯学研究科の構成

口腔構造機能学分野

解剖学、生理学、薬理学、口腔外科学、歯科麻酔学、歯科矯正学をもって構成される。

解剖学においては骨、軟骨、歯の初期発生および細胞分化の機構、成長因子の遺伝子発現、組織工学、細胞生物学に関する研究を行う。生理学は、三叉神経に関連する痛覚受容、加齢現象と痛覚の関係等について考究する。薬理学ではオーラルディスキネジア、顎運動に関係する大脳基底核および味覚・痛覚に関与する大脳皮質の神経科学、薬理学的研究を担当する。口腔外科学は腫瘍、嚢胞、硬組織の石灰化、自己免疫疾患の病態および治療法、再建外科、骨補填材料、遺伝子工学などを研究する。歯科麻酔学は麻酔薬の体内動態、周術期における循環、代謝管理などを研究対象とする。歯科矯正学は外力に対する歯周組織の応答、レーザーが骨組織に与える影響、インプラントを固定源とする矯正処置などについて研究する。

顎顔面口腔領域を中心に、当該分野の構造、機能、外科的侵襲、全身管理、歯列、咬合の矯正などについて、専門分野のみならず、境界領域の研究をも推進することが可能になる。

応用口腔科学分野

病理学、生化学、歯科理工学、歯科保存学、歯科補綴学で構成される。
病理学は免疫グロブリンの構造と機能の解析を中心に分子生物学的研究を行い、各種病変の診断と治療への応用を試みる。

生化学は硬組織および歯周組織の再生を目的とした分子生物学的研究を行う。
歯科理工学は生体に使用される材料およびその製作過程で用いられる器材の開発、評価、生体と材料の界面の解析と親和性などに関する研究を担当する。

歯科保存学は歯を可及的に保存する立場から、修復についての材料、器械、技法を、歯内療法では歯髄組織の恒常性や超音波診断を、歯周治療に関しては歯周病の発症機構、組織再生誘導法などを研究する。歯科補綴学は歯が失われた症例での欠損補綴が対象であり、高齢者を主体とした無歯顎患者の補綴処置に関連する基礎的研究、顎機能障害、唾液関連、磁性材料を応用した顎顔面補綴、スポーツ歯学、歯科インプラント、接着歯学、歯冠色修復などを研究する。

この分野は病態の分子レベルでの解析を基盤として、これを歯科疾患の治療に展開することを目指している。基礎、臨床の融合により、先端的歯科治療に寄与できる研究体制の構築を図る。

口腔健康科学分野

衛生学、細菌学、法医学、歯科放射線学、口腔診断学、小児歯科学、摂食機能療法学から成る。

衛生学は生化学的手法を駆使して、歯科疾患の予防に寄与できる研究を行う。加えて疫学を基礎とする社会歯科学的研究をも推進する。細菌学は歯科の二大疾患である齲蝕と歯周病に対する細菌学的アプローチをもとに、両疾患の予防と治療につながる基礎的研究を担当する。法医学は歯学の分野における個人識別、法律問題などを研究するが、遺伝子工学的手法を中心に当該分野における研究を展開する。歯科放射線学は頭頚部における画像診断および顎口腔領域の放射線治療に関する研究を行う。口腔診断学は歯科疾患を的確に診断し、迅速な処置を行うための方法論などについて、歯科放射線学とも連携して研究を展開する。小児歯科学は発達成長期の患者に対する歯科診療の基礎となる、顎口腔機能解析、摂食能力等について研究する。摂食機能療法学は障害・有病者への歯科診療の中で、摂食・嘸下障害の診断、評価、リハビリテーション手技および健康医学の構築に関する研究を行う。

本分野は社会医学の一分野である社会歯科学を含み、研究成果を国民の健康の保持増進に適切に反映させることを目標としている。従来の基礎、臨床と異なる領域、あるいは境界領域の分野を多く含む。このことにより今回の改組において、従来の枠組みにはない研究体制の構築が可能となる。